| 松原秀樹先生連載50 |
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強化について
生検によると幸いG2という結果で、膀胱鏡手術を受け、退院しました。ゆるゆると社会活動を再開しています。ご心配、お見舞いいただきありがとうございました。あまりに皆様のお心づくしが嬉しかったので、入院行動がしっかり強化されてしまいました。また入りたいというと叱られますが、実際そんな気分です。そこで強化についてです。
現代心理学の大きな発展は、強化の概念の確立からといっても言い過ぎではないでしょう。研究していく便宜上、心理学では、行動を反応という単位でみていこうとし、環境を刺激という単位であつかい、みていこうとしています。直接の経験や見る、聞く、読むなどの間接的経験も、人の行動に影響をもたらします。こうした比較的永続的な行動の変容を学習といいます。つまり学習とは、訓練や経験にもとづく行動の変容過程をいうわけです。ただ1回の反応は遂行反応ではあつても学習とはいえません。たとえばドーピングによってよい成績を出し記録をあげたとします、たしかに行動は変わりましたがこれを学習とは呼べません。
学習には動機づけ(やる気)が必要であり、動機づけなしには、学習の成立はかなり困難になります。勉強させるのも、ピアノを習わせるのも同じです。勉強のために自室に向かわせることや、ピアノの前に座らせるまでは容易に操作することができますが、その気になって勉強やピアノの練習をさせることは難しいものです。勉強の意味での学習意欲が高い子の動機づけを確かめてみると、「もっとできるようになりたい、成績が下がったら、誰だれに負けたら悔しい」などと話してくれます。この2つの動機が入り混じってこそ意欲が高まるのですね。つまり接近動機と回避動機が矛盾せずに存在していることです。しかし、一般的に、すすんで勉強する子は多くありません。それはその勉強するという行動の結果から来ています。食事制限が必要なクライエントがなかなか実践、継続が伴わないのは、結果が思うように出ていなかったからと言えます。
治療資源の発現とその利用において、治療的に利用できるクライエントの素質、趣味、習慣などの情報は必要なものですが、強化史も重要なセラピーのための資料です。つまり、どのような行動に、どのような正や負の強化が与えられてきたか、ということです。マタニティ・ブルー、引越しうつ病などはよく知られていますが、これは日常手に入れていた強化子が少なくなった状態と心理学では考えます。
強化には正の強化(望ましいものを得る)と負の強化(それまであった嫌悪刺激を低減させたり消去することができた場合、つまり回避行動)事態があります。望ましいものがその結果手に入ると、その行動は以後採用率が上がって使われるようになります(オペラント水準が上がる)。こうした効果の働きをしたものを正の強化子といいますが、それらの種類は、
1次的強化:飲み物や食べ物、スキンシップなど生理的満足をもたらすものや物質的なもの
2次的強化:お金、トークン(スーパーなどのポイントやスタンプ。これをつかったセラピーをトークン・エコノミーといいます)
社会的強化:他者からの賞賛、認められることなど
自己強化 :自分で強化を実施すること。これができたらすごいぞ。一段落したらビールを飲むぞ(1次強化と自己強化の2重の強化子ですね)などもそうです。
代理強化 :他者がなにかしてその結果、正の強化を受けているのを見聞きして学習していく事態がこれにあたります。誰かの話がみなに受けて大爆笑になった。そこにいた人は、この話をパクって他で話題として積極的に使うようになるなどがこれにあたります。
やった結果がすぐ出たら(即時強化といいます)動機づけはさらに高まっていきます。しかし逆に期待はずれの場合(強化の剥奪、罰になります)には、その行動の動機づけは低下していき、同じ行動をとる頻度は激減していくでしょう。したがって、治療操作的に前向きな何かをクライエントにしてもらいたい場合には、クライエントがその新しい行動(試み)をした結果、すぐにはっきりとした望ましい強化子が得られるように、セラピストは前もってよく考えて提案する行動などのアドバイスを工夫していかなければなりません。クライエントから十分に情報を得ておいて、よい結果の得られる行動デザインをしっかり確立しておく必要があるわけです。この提案の結果が予想通りになるならば、クライエントはその新しい行動の使用水準が自然に上がっていきますし、またそうしたよい結果を生んだ行動を提案したセラピストへの信頼感はより高まっていきます。
up 2005/03/10