| 松原秀樹先生連載69 |
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桃太郎さんをしていないかな!
奇妙な題目で恐縮です。
この言葉は、私は臨床でよく使っています。あなた間違っているなどということばと違って、きつい表現にはならないので、好んで使っています。
クライエントの認知的な問題なのですが、本人の経験事象について、独特のこだわった認識を持ってしまい、なかなか修正できない方がいます。針小棒大というわけではないのですが、その経験、その周囲の人々の反応のある特定の部分にのみ注目しこだわりや誤った認識を大きく持ってしまう問題です。こういうクライエントに、この言葉を使って問いかけています。
桃太郎さんのお話は、みなさんご存知の通りですが、鬼が島に着いて、鬼の住まいに討ち入って、鬼を懲らしめ、金銀瑠璃珊瑚を得て、エンヤラヤと持ち帰るところだけを見たら、これは完全な押し込み強盗です。確かに、部分を見たらそう見えるしそう考えられますが、流れの全体、コンテクストからみたら、強盗事件と考えるのは誤った考えです。ですから、全体や流れをみずに、ある部分だけ見たり取り上げて、こだわった解釈や考えで凝り固まる傾向のあるクライエントに、「ねえ、桃太郎さんしてないかな?」と問いかけて、抱えている認知的問題の傾向を考えてもらっています。クライエントに対して、温かな態度で接しつつも、行動分析をしっかり行っていくうえで、こうしたことばの工夫は大切です。
どうしても否定しなければならないときには、私は、「どうしても言いたいので言います。…あん…ぽん…たん」と区切って言っています。このことばの使い方も、クライエントの人格を否定しないで、その問題の部分だけに留めた指摘ができるようで、言われたクライエントも「あん・ぽん・たんですか」と、ふと立ち止まって自らを改めて考えてくれます。
up 2006/09/13