松原秀樹先生連載71

 

 

職場以外の場所にメンタルな相談室を設置した会社



 メンタルヘルス対策として、ある企業では会社の外部に相談室を設置している例がありました。これは会社の外に相談施設を置くことによって、相談者のプライバシーを守り、また相談に行きやすい雰囲気作りを考えたからです。この相談室は、交通の便利なやや中心街近くのマンションの一室を借りて開設されていました。会社が契約している精神科医に依頼して、週2日、決められた時間帯に相談室で待機し面接してもらえるように依頼していました。会社内にこの相談施設の開設の案内、相談したいときの予約の仕方など、丁寧な案内が配られ、要所要所に保健師による手作りのポスターも貼られていました。この施設での面接は、予約時間帯を工夫し、相談に訪れる社員同士が顔を合わせることがないように配慮されていました。一回の面接時間は約50分でしたが、次の予約時間までの間を15分以上はあけるという気配りもされていました。

この気配りされた相談室システムは、5年を待たずして閉鎖されることになりました。このシステムが、何人かのケースには役に立っていたのですが、実際のところ、相談室でケアしていたケースよりも重大なメンタルな問題を引き起こしたケースが他に何人も出たこと、メンタルヘルス上の問題が十分に拾いきれていなかったからでした。まさに心理的な問題の発見と管理は、想像以上に困難なものだということが分かります。

多くの潜在的に問題を抱えていて、かつそれらの多くはなかなか外部からうかがい知れないものです。そして、会社の開設する心理的なケアの場と言うものは、実際、来談してみたとしても、ちょうど学校で懇談会に出席した保護者がとる態度のように、本音を隠し、弱みとおもわれることをなるべく隠し、叱られたり、非難されることを恐れ、表面的にのみ話しをし、あるレベルまでの話しにとどめて帰っていくような傾向がよくみられます。匿名性が守られる電話相談の場合には、ひきもきらずに多くの相談が寄せられており、その内容もかなり重く深刻な内容を含んでいるという事実は、実にこうした日本人の文化的性格をよく示していると思われます。


連載72

up 2006/10/02

 

 

便利リンク トップへ戻る

心療内科研修医参照頁 トップへ戻る

-