| 松原秀樹先生連載79 |
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困難さ
「生きる」ということについて、真剣に考える時は、困難に直面したとき、容易に解決できない問題を抱えたときなどでしょう。精神の高高度の次元での活動のときです。多くのものを得るのも、こうした時間に身をおいてこそなのです。自分について考えるということは、ひいては人について考えることになります。質の高い時間を過ごしているといえるでしょう。困難さがなく、順風満帆な生活でいますと、確かに満足は得られるのですが、そこで得るものの質は違ってきます。精神の高次元から遠ざかるというものでしょう。端的に言えば、苦しまないということは、多くのものを得ることができないということです。
頭脳が並外れて鋭い人によく見られる特徴として、人間的に欠陥が多く、傲慢で、非常に心が狭いと言われる傾向があります。こうした非常に優れた方々は、他人のすることなすこと、だめに見えて仕方がないのでしょう。確かに、おおかたの人々は、試行錯誤することによって、つまり己の心身に痛い手傷を負うことによって、一つまた一つと克服してゆくものです。あるとするならば、そこにこそ人間の尊厳といわれるものが存在するのですが、生まれつき優れた資質に恵まれたごく少数の人々には、こうした試行錯誤の段階をいっきに飛び越して、無傷のままである高みにまで達してしまうのです。ですから傲慢になるのはむしろ当然なのかもしれませんが、味わいの深い人生は送りにくいものです。
up 2006/11/30