松原秀樹先生連載96

 

 

身体と情動の関係



   たとえば、恐い話を聞いた時は、背筋がぞくぞくするし、怒った時には全身の筋緊張が高まるものです。徹夜や疲労した時には、不快感や怒りなどの陰性感情は抱きやすいのですが、喜びなどの陽性の情動反応は鈍くなります。蓄積疲労や過剰緊張は、思考能力を低下させることは周知の事実です。このように、身体条件と情動は強く密接に関係しています。特に、陰性の(負の)情動が持続している場合には、自律神経系の失調をきたしやすいですし、その失調反応が古典的条件づけ(レスポンデント反応)となりやすいので、情動をコントロールすること、また逆に身体をコントロールしていくことは大切になることが分かります。人間は身体を介してその意志を遂行しているのですから、その身体の使い方や休め方を始めとした生活習慣、さらに運動面についての検討も必要になってきます。

 運動面についてみると、ラジオ体操やストレッチングなど、身体の可動範囲の使用比率、つまり日常どのくらいの範囲の身体を動かし、どのくらいの時間、同じような姿勢を続けているかなどを聴取していく必要もあります。なぜならば、身体を可動範囲いっぱいに日常使っている人ほど、同一情動にしばられる度合が少なくなるし、筋力が低下すると、抑うつ、無気力、根気のなさなどの問題傾向につながりますし、感情のコントロールが困難になってくるからです。

 また、社会場面での振る舞い方、気の配り方も大切なチェックポイントでしょう。性格的にせっかちな人は、すべての行動を速いテンポで行い、のんびりした人はゆったりと体を使うことになります。このように身体の使い方は非常に大切な観察すべき側面です。

 食欲一つとってみても、疲労、緊張、焦りなどの条件下では、食物への興味や味覚も変化し、摂取量も違ってくることを考えてみても明らかなように、いろいろな事柄に対する好奇心や感動、感謝、忍耐なども身体条件によって異なってきます。このように、情動と身体は切り離して考えることも無視することもできないものです。

 そこで陰性の情動によって自律神経系の反応が起って筋緊張も上ってくることから、情動のコントロールのために自律訓練法や筋弛緩法などのリラクセーション技法が必要になるのであるし、場合によっては運動をすすめていくことも必要になってきます。ある程度の年代になると、特に問題がなくても運動は必要になってきます。可動範囲いっぱいに使っていない事による五十肩はその典型例でしょう。


連載97

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