松原秀樹先生連載98

 

 


環境と認知や情動との関係



 偏屈な性格の人は、その性格から他者や他領域の人々との接触が少なくなるために、よりパーソナリティに歪みが出て、その思考や感情の表出が普通の人々と違ってきます。このように環境のもつ影響は、その他さまざまな面におよんでいます。環境条件には、気候の寒暖や日照時間といった風土的なもの、日常的に目にする風景や住居条件をはじめとして、物だけでなく人間関係や生活上の役割や責任など様々なものがあります。旅をすると気分が変えられ、自分の心を取り戻しやすくなるものですが、これは日常の慣れきりパターン化してしまっている生活から離れ、非日常の環境の影響から情動のパターンや思考のパターンが変えられていくからでしょう。逆の例では、引越しうつ病のように、それまでの生活環境がいかに心身のバランスのとって影響しており大切なものがあったかが分かるでしょう。つまり、得られていた人間関係や慣れていた役割、安息を得ていた部屋の模様や勝手知った街、楽しみになっていた場所などなど(強化因子ともいいます)、精神生活に深く浸透していた環境を離れることによって心の平衡を失う可能性も大きいということです。

 情動のコントロールのために、こうした環境の因子をよく分析し、何がどのように影響しているかを知り、上手に役立てることは意義深いものになります。臨床的に見て、環境因子の中でとくに問題となるのは人間関係であり、それらは家族、親、上司、同僚、部下、先輩、後輩、友人、教師などであり、そしてセラピスト自身も大きくクライエントに影響する環境因子です。これらの人々をクライエントがどのように認知しているかは、見逃してはいけないポイントでしょう。臨床経験から言うと、多くのクライエントは、相手の感情や考え、態度などを意識しすぎ、自分の感情や考えや行動を抑えてしまい、かえって対人関係を悪くしたり過剰緊張状態に陥ってしまっている場合も多く見られます。こうした状態では、自由で創造的な面が失われ、心的エネルギーのロスも大きくなってきます。したがって、客観的現実的な対応の工夫や適切な自己表現の学習や練習(アサーション:主張訓練)、緊張や不安をコントロールし低減していくこと(リラクセーション技法の習得や逆静止による治療など)が対応策として必要になってきます。

 

 

連載99

up 2007/05/31

 

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