| 松原秀樹先生連載99 |
|---|
対処行動と認知や情動との関係
ある情動が持続している時にどのような行動をしているか、また逆に、どのような行動や態度によってどのような情動が生起してきたり、変化してくるのかという臨床的分析から、次のようなことが明らかになってきています。たとえば、タバコの吸い方にも1つの特徴が見られます。ゆったりとしている時の喫煙行動と、イライラや緊張、不安などの陰性情動状態にある時のその行動上の違いは、タバコのもち方や吸ったりはいたりするテンポに著しい差が見られます。タバコの吸い方を強くさせ、煙をはくのも早目にという教示を与えて喫煙させると、焦っているような何かじっとしていられない感じやイライラ感や追いつめられているような緊張感などの情動反応があらわれます。こうした行動のテンポと情動の関係は、次々とすべきことを早期に準備することでも同様に見られます。たとえば、外出するときにドアの鍵を締め、その鍵をしまうときに次に必要となる会社のロッカーや机の鍵を取り出すようにしておくことや、タクシーやバスなどに乗車したときから、切符やお金の準備をするようにしたり、時計を必要以上に頻回に見ることや、歩き方など動作のテンポを速くしたり、口調の強い話し方にしてみても同様な情動との関係が出てきます。
心身医学領域で用いられる性格分類のタイプA性格(猛烈タイプ)と呼ばれるものはまさにこうした行動が多いものです。A型性格の行動パターンは、直情径行とでもいうべきものであり、常に競争心が強く、自分に鞭を打つように仕事をし、周囲から高く評価されることを望み、帰属している集団や社会のトップの座を狙うという野望と功名心が強い。困難なことがあっても意に介さず行動を起こし、自分で自分を窮地に追い込む傾向もあるが、これは外的刺激に対して精神的にも身体的にも敏感で、他人に対して敵愾心が強く、協調性が低いからでもある。このA型性格の典型ともいうべき、「とことんやらないと気がすまない」傾向、同時にいくつかのことをやれると考えたりする傾向、人との会話を楽しむというよりも話の結論を出そう、早く聞きたいという傾向、TVを見ていてもコマーシャルになるとチャンネルをあちらこちらに変えて見る傾向、食事も早いといった傾向があるように、物事のプロセスを味わったり楽しんだりするよりも、とにかく早く遂行して結果を見ようという性急な行動パターンが特徴的に見られるものです。心身症に多く見られるタイプA性格は、ストレスに対して、まさに迎え撃つ姿勢で生きていくタイプですね。こうしたタイプA性格は社会的に学習してきたものであると考えられており、管理者に多い性格傾向ですから、マネージャー性格とも言われます。
このように、性格に対する社会的役割のもつ影響も見逃せない大きな因子なのです。ちなみに、9年半の広島大学での私の講義、心理学と適応理論を受講した毎年数百人の学生たちのA型性格テスト結果では、10%前後の学生のみがそうでした。いつからそうなっているかは分かりませんが、社会人のライン管理者に同じものをすると、約80から90%がA型性格になっていることから、そう思った次第です。
このように行動パターンや役割など、情動との関係の深いことが理解できるであろう。これらの行動は選択されて表出しているものであり、本人の自己認知、自己評価とも密接に関係しています。
up 2007/