| 松原秀樹先生連載103 |
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親子関係 ― 過去の考え方の再整理 1 ―
親の養育態度と子どもの性格形成の因果関係について、サイモンズの養育態度と子どもの性格に代表されるものを、学生時代には必死に暗記したものです。犯罪やノイローゼ、浮気の原因が、実は子ども時代にあるという考え方は、90年前にはほとんどなかった考え方です。その後、ちょうど精神分析が世の中に広く知られてくるようになって増えてきているように思えます。ここ10数年前から、すっかりマスコミにその概念が浸透してきたようで、盛んにコメントなどに利用されるようになり、この観点での論議が爆発的に増えたと思います。親の愛情が足りない、あるいは恵まれない不幸な幼少期があったり、トラウマ経験などがあると、人格的な安定さが生じ、健康な人格形成、健全な精神をつくることができないとされてきました。今でも、こう信じている人々が多いです。
しかしここ20年ほどの最近の細密な方法による発達心理学的な研究結果からみると、「子どもがどのように育ち、どのような性格になっても、親はどうしようもない」というように言わざるを得ないのです。先に書いたような、過去に言われていた親子関係論は、まさに否定されてしまいました。子どもの人格的な成長の上で、親は脇役的な存在であって、親がどう教育しようと試みても、子どもは生まれもった遺伝的な条件にしたがって、なるようにしかならないということのようです。
驚くべきことに、ヘミンガーの調査研究によると、何らの問題もみられない恵まれた家庭環境で育った才能豊かな子ども達が、成長して後、神経症やフラストレーションを抱えていることが多かったと報告しています。また、大人になって、明らかに豊かな才能や好ましい感情傾向を持つ人々の中に、子ども時代にトラウマ的な家庭で育った人が驚くほどの高率で見つけられたということです。
ですから、幼少期を含めた子ども時代、あるいは青年期、そして大人になったあとでも、獲得された行動上の特徴というものは、新たな発達段階において、いつでも消失あるいは変化する可能性があるのだから、残りの人生を決定づける特別な役割を幼児期が担っているわけではないとアーゼンドルプフは述べています。私のこれまでの臨床の印象からも、トラウマの存在そのものより、それを今どう認識しているかが問題のように思えます。
何がどうであったからこうなったのか、ということにエネルギーを注ぐ以上に、このクライエントの明日に向けて、何が必要かを考え、どんな生活を送ってもらうかを具体的に検討していくこと、速やかにこうした方向にセラピストが考えていくことの重要性は、最新の性格や発達研究の領域からも支持されているといえるでしょう。
up 2007/11/27