カメラ分解修理ほんのじょのくち

研究員がカメラを分解修理するコツをここにまとめます。 参考になれば幸いです。

注意:このガイドによる分解修理であなたの大切なカメラが故障しても当研究所は責任を一切負いません。自己責任で行って下さい。メーカー保証期間の製品に関してはメーカーに修理依頼しましょう。

道具

・精密ドライバー

 道具は良い物を使うのが鉄則です。あまり安物の精密ドライバーは欠けたり曲がったりしてカメラやビスを破壊する恐れがあります。あまりケチらずそこそこの物を買いましょう。また、通常のドライバーセットには、超小型プラスドライバーがセットされていません。カメラやレンズでは小型プラスネジは良く使われています。0番、00番くらいのプラスドライバーは別途揃えましょう。ネジは必ずサイズの合ったドライバーを使って下さい。サイズが合っていないとネジ山をなめたり、破壊する恐れがあります。また、複数のネジを締める時は対角線に締めていきます。増す締めは程々に。無理をするとネジ頭がねじ切れてしまいます。昔のカメラのネジは特に弱いものが多いので注意。あと、ワンポイントとして、精密ドライバーを帯磁させておくと何かと便利です。指が入らない細かな隙間のネジ締めや、ボディ奥の隙間に落ちたネジ救出に活躍します。帯磁したドライバー(金属ドライバー全般)は、ビデオデッキ、テープデッキの分解に使ってはいけません。(特にヘッドまわり)ヘッドが帯磁してしまいます。

・レンズ回し、カニ目レンチ

 特殊工具ですが、分解には必要不可欠です。ラジオペンチ等で代用もできますが、レンズやボディーを傷つける恐れがあり、ネジ山を潰す危険もあります。素人が分解したカメラ、レンズは先ずこれで判別できます。

・ピンセット、テレビペンチ、ラジオペンチ

 ピンセットは先の尖った鋭い物と先の曲がったもの2種類くらいあれば便利です。ピンセットで小さな物を摘む時は力加減にも注意しましょう。力を掛けすぎると“ピ〜ン”と部品が飛んでいき、泣く事になります。

・テスター

 カメラの露出計やシンクロ線の修理に使います。最近の電子カメラでは無闇に導通を計るのは避けましょう。ICやLSIを破壊する恐れがあります。安いテスターなら千数百円から売ってます。蛇足ですが研究員は今でもアナログテスターです。デジタルの目まぐるしい動きにはどうも馴染めません。あと、アナログテスターを使い終わったら、計測レンジを交流、最大レンジにしておくと安心です。  

・爪楊枝

 グリス塗りや細部の清掃に便利。特にレンズの距離、絞り数字の刻印内部清掃などに有効。細部清掃では精密ドライバーにウエスを巻き付けて拭きたくなりますが、これは傷のもと。

・綿棒

 レンズ清掃や余分な油とりに便利。あまりケチって使うと綿糸くずが残ります。

・懐中電灯    

 カメラ内部のメカは、込み入っていて光が届きません。小型のマグライトがあれば大変重宝します。レンズの曇り、カビのチェックにも有効。

・シリコングリス、シリコンオイル、ベンジン、アルコール

 研究員が小学生の頃はおもちゃの修理でグリスが欲しい時は父のポマードを使ってましたが、精密機械部品ではそうもいきません。ちゃんと買い揃えましょう。グリスは耐熱性が高いものを。ベンジンはメカ部分の洗浄にアルコールはレンズクリーニングに使います。エーテルを混ぜるとより効果的らしいです。(研究員は市販レンズクリーナーを使用)

・ミンクオイル、アーマーオール、マジックリン

 ミンクオイルは皮のお手入れ、アーマーオール(半艶)はプラスチック、ゴムの劣化防止。アーマオールはつけ過ぎない事がコツ。ベタベタ、ツヤツヤになってしまいます。マジックリンは汚れのひどい中古品のボディーや鏡胴を洗う時に使います。レンズのゴムターレット(距離、絞りのゴムリング)も簡単にレンズから剥けますので、ゴム単体をゴシゴシと歯ブラシでマジックリンすると新品のようになります。後は同じくアーマオールで仕上げます。

・デジカメ、白い大きな画用紙、筆記用具

 複雑なメカの分解にデジカメは非常に便利です。分解前にギアの組み合わせやカム位置を漏らさず記録しておきます。できればデジカメは接写できるものがいいです。研究所のデジカメは1pまで接写できます。画像はエコノミーモードで充分事足ります。白い大きな画用紙は分解テーブルのテーブルクロスとして使います。分解したパーツはユニット毎に分け、取り外した部品を奥から手前に順番に並べていきます。組み上げる時は手前から順に取っていけばいいわけです。複雑な部品やネジは忘れないよう画用紙に直接書き込みできます。分解するカメラを置く作業台にはカッティングマット等が便利ですが、研究員は読み古したアサカメなんかを使っています。適度な堅さと弾力が合っています。

レンズ回し、カニ目や精密ドライバー、モルトプレーンは修理に必要

シールはがし、グリース他

分解7つの誓い

@ 先ずは練習から  

分解の手始めは捨てる事を覚悟でジャンク品を分解し練習する事をお勧めします。高価なカメラやレンズはプロにまかせましょう。下手をすると修理のつもりが故障を悪化させたり再起不能、傷だらけとなる事がままあります。ジャンクや廃品で部品構成やネジ、Eリングの外し方、ユニット構成をよく勉強して下さい。メーカーごとに組み付け構成や設計に特徴はありますがそれ程違いがあるものではありません。

A 分解途中でも諦める勇気も必要  

分解を進めていくとネジやパーツがどんどん増え、元の姿に戻せるか不安になってきます。そういう時は、一度手を休め分解したところまでの組み上げをシミュレートして、おさらいしてみましょう。これ以上分解を進める自信がなくなった時は潔く諦める勇気も必要です。だれも怒りません。

B 必要最低限の分解にとどめる  

修理、メンテの目的を明確にし必要最低の分解にとどめましょう。アレもコレもと寄り道する程リスクは高まります。

C 力じゃなく頭を使え

分解中にどうしても外れないパーツやネジにぶち当たる事もよくあります。経験から言って無理な力で解決してもロクな事はありません。案外答えは簡単なところにあるものです。ペンチやハンマー、プライヤーといった力まかせの道具は精密機械の分解には必要ありません。冷静に考え直しましょう。

D 寝るな  

人間の海馬に蓄えられた記憶力は睡眠をとる事で約6割消滅すると言われています。分解中は寝ない事が原則です。どうしても眠たい時は分解(組立)のポイントをメモ書きして残しましょう。

E 探せ  

分解中に小さなパーツが“ピヨ〜ン”と飛んで行く事が良くあります。取りあえず見つかるまで探しましょう。どんな小さな部品でもそれぞれ大きな役割があるものです。“部品が飛んだ”と思った瞬間!落下音サーチモードに入ります。音から大体の落下位置がわかる場合もあります。音がない場合、そっと立ち上がり、服を静かにはたきます。ポケット、ズボンの折り返しも見てみましょう。後は四つん這いで検索するしかありません。最後の手段として掃除機を使う手もあります。紙パックを新品に交換して部屋を隈無く掃除します。案外これで見つかるものです。慣れてくると飛ぶパーツがありそうな部品が解ってきます。よく飛ぶパーツとしてレンズやダイヤルのノッチ部分に極小スプリングとベアリングボールの組み合わせ。極小Eリング、芋ネジが  あります。どうしても不安な時は分解ユニットをビニール袋に入れその中で分解します。どんなに飛んでも袋の鼠です。

F 分解するな  

ちょっと矛盾していますが、精密機械は必要もないのに分解しない事です。いくら経験と若干の道具があるとはいえプロの仕事とはレベルが違います。レンズを分解すれば光軸調整。カメラを分解すればフランジバック調整、シャッター速度調整、露出調整等色々本格的な調整が必要となってきます。研究員は基本的にメインカメラやレンズは全てメーカーに修理、OHに出します。分解して修理するのは遊びのジャンクカメラ、レンズだけに留めています。ジャンクカメラ、レンズが修理で直ったとしても“何とか使えるレベル”でしかありません。この事を肝に命じて納得のうえで分解、修理を楽しんでいるのです。

最後に

 複雑なカメラの分解修理はある意味、非常につらいものです。何度も途中で挫折しそうになります。では何故するのか。それは分解、修理中にそのカメラの設計者の思想や背景、工夫など大いなる驚きと感動があるからです。そして何より、故障してうち捨てられかけていた物に再び魂を宿す作業だからです。そういう意味では現在の電子カメラ、電気製品にはそういった意味合いは薄れてきているように思います。いままでバルナック機からニコンF4やキヤノンEOS1まで種々雑多なカメラを200台以上、シャッターユニットをフレームから降ろすところまで完全分解してきましたが修理していて面白く遣り甲斐を感じるのはやはり70年代のカメラまでと言えるでしょう。メカが主役で電子回路が補助的に組み込まれている構成、各部の部材は工作精度も高くこだわりと誇りがひしひしと伝わってきます。ですからその年代のカメラの修理からはじめられることをお勧めいたします。