微量連続摂取による耐性導入法
 
                                                       2007.12.17 first upload
                                                            2009.3.26   reviced upload

これまで耐性導入法と言えば、自己血注射後の耐性導入法しかありませんでした。
ところが2007年から、微量連続摂取による耐性導入法という新しい方法を開発しました。
 

A.ヒントと原理


その原理をお話します。
ヒントになったのは、部分除去と完全除去の違いです。

牛乳の部分除去をしているひと(平均的には1ml/日摂取していると仮定する)
  200ml摂取 →  (++) 
  5ml 摂取  →  (−) 
  0.1ml摂取  →  (−)

ところが、同じひとに完全除去をさせると
  200ml摂取 →  (++)
  5ml摂取取 →  (++)
  0.1ml摂取  →  (+)

部分除去をして平均的には1ml/日摂取しているとき、大量の牛乳摂取、例えば200mlを摂取させると強い反応がでます。しかし、やや多量の牛乳摂取、例えば5mlにおいては症状が出ない、あるいはほとんど出ません。
ところが、その同じ人に完全除去をさせますと、200mlで強い反応が出るのは当然としても、5mlを摂取させても症状が出るわけです。完全除去をしている場合においては5mlの摂取であってlも体の方では(リンパ球の方では)大量とみなすわけです。

耐性導入においては、負荷と負荷の間はこれまで原則的には完全除去でした。これを連続摂取してもリンパ球がほとんど反応しない 、あるいは連続摂取してもリンパ球の蓄積刺激が十分小さい程度の微量を食べさせ続ければ、比較的大量のアレルゲンを食べても症状が出ないはずです。これを利用すれば耐性導入に使えるかもしれません。

この可能性は長く心の中で暖めてきました。しかし、食べたときに反応が出ないということだけで、耐性導入、すなわち限界値の、上昇リセットが起こるかどうか、疑問に思っていました。耐性導入の原理を長く考え続けているうちに、これでいけるかもしれない、いけるのではないか、という考えが自然に熟して最後に実験に踏み切ることができ、幸いに なんなく成功しました。

B.方法

微量連続摂取による耐性導入は

1.目的摂取量
2.
連続摂取量
3.
連続摂取する期間
の3つのファクターから出来ています。

目的摂取量というのは現時点での限界値になります。
たとえば牛乳の限界値検査を行った結果、1/32さじが限界値であった、
あるいは自己血による耐性導入を行った結果1/64まで増やたが、1/32さじはどうしても通らなかった、
そのとき、1/32さじが限界値であり、目的摂取量として設定されます。

この目的摂取量を誘発症状なく食べるために、
連続摂取量をいくらに設定するか、
連続摂取期間
を何日に設定するか、
が問題となります。

ここでは目的摂取量と連続摂取量の比が非常に重要になります。これを目的連続倍率、あるいは単に倍率と称します。この倍率は通すために非常に重要なファクターとなります。

当初、連続摂取期間は6日間としていました。このうち連続摂取期間は受診間隔がおおむね1週間であるためにそうなったのですが、5日、4日、極端には3日でよい場合もあったので、微妙な調整はあまり必要ないようです。

当初、倍率は256倍を中心に下は512倍、1024倍、2048倍まで試しました。上は128倍、64倍くらいを試しましたが、大きな変化はないようでした。ところが、微量連続摂取でも通りにくい症例を扱ううちに、通りにくい例でも倍率を低くする方がよく通ることがわかってきました。そこで現在では64倍くらいから始めることが多く、非常に下げた場合、8倍にまで下げた例もあります。

また連続摂取は朝飲んでも夜飲んでも構いません。数日間通して体の中でだいたい同じレベルで推移していればよいのです。

連続摂取の期間はかなり融通が利きます。たとえば、下の例でいうと、12/4で1日、忘れて食べなかったとしてもほぼつながっていると考えてよいでしょう。ただし、直前の1日を抜かすとあまりよくないでしょう。ときには負荷日の2日前でもよくないときがあるかも知れません。ただし、2週間くらい続けて負荷日の直前に忘れたときは多分大丈夫でしょう。

C.具体例

 

    牛乳
12/1    1/1024さじ ⇒(256倍、6日)   ( "⇒" は微量連続開始の印 です)
12/2   ・                  ( "・"  は1/1024さじの略です)
12/3   ・
12/4   ・
12/5   ・
12/6   ・
12/7   1/4さじ(-)     (目的摂取量が通りました)
12/8  1/512さじ ⇒   (次回目的摂取量は1/2さじになりますから、連続摂取量も
12/9   ・          それに合わせて1/512に増量します)
12/10  ・
12/11  ・
12/12  ・
12/13  ・
12/14 1/2さじ(-)


上記は典型例で、もっと多くの応用例があります。
A.牛乳1/4さじが通ったあともそのまま、1/1024さじを続ける。
  → デフォルトは予定量の1/256ですが、1/2048から1/64、1/32くらいと連続摂取量には幅がありますから、2、3週間は1/1024を続けても問題はありません。
B.前回、前々回において通らなかった、通りにくかったときなど、今回もようやく通ったのではないか、と想像される場合があります。そのようなときには

12/9 −       ("−"は連続摂取を休む印です)
12/10 ・
12/11 ・

と続けます。

通らなかった場合の進め方

12/6   ・
12/7   1/4さじ(+)     (予定負荷量が通らなかった)
12/8   ―        (前日通らなかった余波が12/8まで及んでいることが
                想定されるときは摂取を1日休みます。) 
12/9  
1/2048さじ ⇒  (次回予定負荷量を1/8さじに設定。連続摂取量も
12/10  ・           
 それに合わせて1/2048に減量します)
12/11  ・
12/12  ・
12/13  ・
12/14  ・
12/15 
1/8さじ(-)

応用例です。
A.牛乳1/4さじが通らなかったが、連続摂取量はそのまま、1/1024さじを続ける。
  → 連続摂取量にはある程度幅がありますから、1/1024のままでも2−3週間は構わない。
B.1/4さじで通らなかったので、次の日は微量であってもリンパ球の刺激に”火”をつける可能性がある。

12/9 ―       (""は連続摂取を休む印です 、−(マイナス)ではなく長い横棒です)
12/10 ・
12/11 ・


 

D.朝夕2回摂取法

連続摂取量を、目的摂取量の1万分の1とか10万分の1にしたら、おそらく、完全除去と同じになって、目的摂取量は通らないでしょう。逆に連続摂取量を目的摂取量の1/8とか1/4にしたら、 1−2日で、連続摂取自体で症状が出ることがあります。適切な連続摂取量は個人によって、アレルゲンによって、そのときの免疫状態によって違います。

目的連続倍率は256倍ではじめて、最近は64倍 くらいにしているのですが、あまり多くすると連続摂取で症状が出ることがあります。しかし、通りにくい例を克服するにはどうしても連続摂取量を増やすして手がありません。そこで、考えついたのは朝夕2回摂取法です。
 

12/9 牛乳1/4さじ ⇒ (16倍、6日)
12/10 ・ (+) 1/8さじでいきなり、誘発症状が出た!
−以後は中止−
12/11 ・  
12/12 ・
12/13 ・
12/14 ・
12/15 牛乳4さじ( )

しかし、この前には牛乳1/8さじ(16倍、6日)で症状が出ていた。これでははいかんともしがたい。そこで、牛乳1/8さじを朝夕飲ますことにした。
 

12/12 牛乳1/8さじ、朝夕 ⇒ (16倍、6日)
12/13 ・・             ( "・・"は朝夕2回摂取の印 )
12/11 ・・  
12/12 ・・
12/13 ・・
12/14 ・・
12/15 牛乳4さじ(−)

目的摂取も連続摂取もだいたい朝のうちにしています。とすると1日間の摂取量は同じでも、朝夕2回摂取では目的摂取直前の牛乳の血中濃度(体内濃度)が上がっています。それが目的摂取量を通すのに役立っていると思われます。

連続摂取期間についてももっといろいろな検討が必要となるでしょう。

 

E.用途

どのようなときに微量連続摂取による耐性導入法を実施するか。

1.自己血による耐性導入法がうまくいかなくなったとき

自己血による耐性導入法において最終的に次のような「壁」にぶちあたることはしばしばある。

 1.何回チャレンジしてもある用量を超えられない。 
 2.ある用量に何回かチャレンジを繰り返した後に用量を下げても下げても通らなくなる。 
 3.ひどい蕁麻疹、全身蕁麻疹/咽喉頭浮腫/アナフィラキシー反応が出る。
 4.消化器症状(口腔、舌、食道の違和感、腹痛)あるいは、呼吸器症状(鼻汁、耳の痛み、咳、気管支喘息)が出る。
5.特に皮膚症状が出なくなって、上述の症状だけになる。 

「自己血による耐性導入法」に習熟し、より高い用量にまでもって行けるようになる一方で、上述のような症状に遭遇する機会が多くなった。

実は、1.自己血援助下の耐性導入法 と 2.自力での耐性導入法 の考え方の基本には、負荷と負荷の間の期間は厳重な除去期間でなくてはならないという基本概念があった。それは、1.自己血援助下の耐性導入法 を確立する模索の段階で、何回か負荷と負荷の間において、少量の摂取を行っており、その少量の摂取が次の負荷のときに症状を誘発する原因になっているということに気が付いたからである。

2.自己血による耐性導入法の後の仕上げに
自己血による耐性導入を続けて、摂取量が最大になりました。このとき、シンデレラ・タイム(自己血の効果時間)の時間外での摂取可能量、すなわち限界値は多くて最大摂取量の1/2であり、安全を見込むと1/4にすぎません。
もう一度具体例で示します。
 

12/5 HV−C
12/6 (朝)卵1個(−)   この子は1回の食事で卵1個しか食べられません。
         (昼)卵1個(−)   そこで、朝、昼の2回に分けて1日で卵2個を食べました。
12/7 ―

12/8 にもし、卵2個を食べると症状が出てしまいます。
卵1個ではおおむね通りますが、ときに症状が出ます。
卵1/2個なら確実に通ります。
この状態のことを「歩留まりが1/4である」と表現します。

さて、卵1/2個なら1歳半から2歳半のこどもが食べる量としては上々だと思います。しかし、これは1日限りでどれだけ食べられるかを示しているにすぎません。もし、1/2個を2日続けて食べるとたちまち症状が出てしまいます。安全域としては卵1/2個を週2回、それも1日はあけて食べられるようになった、ということに過ぎません。苦労した割に、まだまだ制限は厳しいのです。

ところが、この後に微量連続摂取による耐性導入法を行うとこの制限が簡単にとれてしまいます。
 

12/8 卵1/512個 ⇒
12/9  ・
12/10 ・
12/11 ・
12/12 卵1/2個(−)
12/13 卵1/256個
 ⇒
12/14 ・
12/15 ・
12/16 ・
12/17 卵1個(−)
12/18 ・
  ・
  ・


3.軽症のアトピー性皮膚炎


乳児のアトピー性皮膚炎で、軽症かつアレルゲンの数も少ない、限界値も高い、などのときには痛みを伴う自己血による耐性導入法を避けて、微量連続摂取による耐性導入法を行います。結果は良好です。

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