食物負荷試験と限界値検査 
           
2009.1.14 upload
                2009.1.28 reviced


 

最近、食物負荷試験がいろんな施設で行われるようになりました。負荷試験が広く行われるようになったのは歓迎すべきことですが、現行の食物負荷試験には問題点もあるように思います。また、私がしている限界値検査 は食物負荷試験の一種ですが、現行の食物負荷試験とは目的・方法が少し異なります。その あたりを解説します。


A.食物負荷試験の目的
 
(1)アレルゲンの存在診断として(除去食療法のはじめに)行われている。
 (2)除去食の解除のため(除去食の終わりに)行われている。


(1)アレルゲンの存在診断としての食物負荷試験
食物アレルギーが疑われるときは病歴、血液検査、アレルゲンテストを行って、アレルゲンを推定し、除去(試験)を行い ます。除去は試験として行うものですが、同時に治療でもあります。除去の結果、症状の改善の有無を確かめた上で、さらに食物負荷試験を行って誘発症状が陽性であれば、除去をさらに続けます。誘発症状が陰性であれば除去を解除します。

アレルゲンで あるかどうかの最終判断は食物負荷試験を行って決定します。というのも、検査値の読み方(2)で説明したように、血液検査、皮膚検査のどちらの検査も陽性に出たからといって、原因物質と断言はできず、陰性に出ても原因物質ではないと言えないからです。このための食物負荷試験は「アレルゲンの存在診断(本当にアレルゲンかどうか)」と位置づけられています。

この手順は「公式」と言っていいのですが、実は公式通りに行う施設は非常に少ないのが現状です。なぜなら、食物負荷試験には一定の危険があるからです。
この目的 で食物負荷試験を行っている他の先生方がどのようなやりかたでしているかは、よく知りませんが。私がしている「限界値検査」方式よりは、かなり大量の食物を1日で分割投与しているのが実状と思われます。

この目的の食物負荷試験として私は限界値検査を除去食をする患者の全例に行っています。方法はこれならば絶対に誘発症状が出ないと考えられる微量の食物から始めて、毎日倍増法で食べていく方法です。 限界値検査は強い誘発症状の危険がまったくない方法です。私が全例に行うようになったのも、危険がまったくない方法だからです。


 (2)除去食の解除のための食物負荷試験
もうひとつ、食物負荷試験は除去食療法で主要症状が改善したあとで除去食を解除するために行われています。多くは除去食療法を数年行ったあとで、食べてもいいかどうか、食べても危険はないかどうかというテストとして行われます。 最近、行われるようになったというのはほとんど、この目的です。この負荷試験のやり方も、通常の摂取量とほぼ同じ量、すなわちかなりの大量を数回に分割して1日の内に投与することが一般的です。昨年には負荷試験のやり方のガイドラインが決められました。

通常摂取量のアレルゲンを分割投与する方式の食物負荷試験(「通常の負荷試験」と称します)はアナフィラキシー・ショックなどの危険を伴います。実際にこれをしている施設の1/3はアナフィラキシー、またはその前状態を経験し、ボスミン注射などの緊急治療を経験しています。

通常の負荷試験の問題点
 1.負荷の開始量がすでに閾値をオーバーしていることが多いと思われる。
 2.一日のうちに倍々などの増加率で高用量に達するため、閾値をはるかに越える用量を負荷される。
牛乳を例にとると、
牛乳負荷
13:00
 0.1ml  (−)
13:20
 0.5ml  (−)
13:40 1ml   (−)
14:00 5ml   (−)
14:20 10ml   (−)
14:40
 20ml       (+)

15:00
 40ml
15:20 80ml
 

左の表のような結果であったとすると見かけ上の閾値は20mlである。しかし 、実は0.1mlの時点で水面下ではすでに誘発反応が始まっており、それが皮膚に出るまでに1時間40 分を要したということもありえる。その場合、20mlを飲んだ時点ではすでに36.6ml摂取しているのであり、閾値量の366倍 を摂取したことになり、時間をおって激し い反応に発展する恐れがある。
また、開始量の0.1mlは約1/64さじに当たり、私の経験で言えばすでに相当大量だと言える。
3.そのため危険が大きい。病院でなくては実施できない検査となる。

このような危険を伴う検査であるので、実施施設は限られています。



B.限界値検査(さかたに小児科で行う、食物負荷試験である)
 

(1)アレルゲンの存在診断(確定診断)として除去食療法のはじめに 行っている。
 
小児の食物アレルギー、アトピー性皮膚炎についてはほぼ全例に行っている。通常の負荷試験に較べて危険性がほとんどないからである。そのため家庭で行っている。


 (2)単にアレルゲンの存在診断だけでなく、どれだけ食べたら症状が出るかを調べている。
もともと、自己血による耐性導入法のために開発した食物負荷試験の一種である。耐性導入法の開始には限界値の決定が必須である。

一般に行われている食物負荷試験とは次の点でやり方が異なる。

1.負荷の方法
これなら絶対症状が出ないと思われる微量から始めて倍増していく。あらかじめ、食べて5−10分のうちに症状が出る即時型とわかっていれば、1日のうちで3,4回の倍増を行う方法も行う。大部分は即時型で出るか遅発型で出るか、わかっていないので毎日倍増法を行う。

2.実施場所と判定者
家庭で実施し、最初はお母さんが判定する。

3.微量から増やしていくし、負荷によってあらわれるどんな些細な症状も見逃さないようにしているので、強い症状が出る前に検査を終わっている。そのため危険性が少ない。

4.あらかじめ、皮膚症状以外の症状が出るとわかっている場合や、アナフィラキシーやその前段階の症状があった患者についてはある程度までを家庭で毎日倍増法で行い、量が多くなってきたところで、院内 での負荷に切り替える。

C.さかたに小児科では除去食の解除のための食物負荷試験は不要である。

通常のアレルギー診療医師は食物アレルギーと診断したら、除去食療法を開始し、ずっとそのままにしています。そして、最後にいきなりドカンと大量(普通摂取量)を食べさせて、もう食べられるようになっているか、どうかを検査しています。これが「除去食解除目的」の食物負荷試験 の意味である。

私は通常の負荷試験、すなわち大量を1日のうちに分割投与する負荷試験を行ってはいません。
その理由の第一 は上述の安全性の問題からです。第二には、私はアトピー性皮膚炎患児、食物アレルギー患児を耐性導入法で治療しています。この治療は、毎週、毎週、限界値の量の食物負荷をしています。この食物負荷は食べられないものを食べられるようにする治療であると同時にどこまで食べられるかを調べる検査でもあ ります。いわば毎週1回食物負荷試験をしているのに等しいのです。しかも、 負荷量は多くて先週の負荷量の2倍に止まっており、現在予想される限界値の量を大きく越えることは決してありません。また、それは1日に1度の負荷であり、分割投与 (連続投与)のような危険性はありません。

入園、就学や年度替わりのときに学校・園から除去食品の提出を求められることがあるが、この目的であれば、限界値検査を行います。 病歴、検査などにより、アナフィラキシーや、皮膚症状以外の症状が出たことがあれば、慎重を期して量が多くなってからは院内で限界値検査を続行します。
 

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