| このファイルは耐性導入法の協力医になっていただいた医師からの質問に答えて書き上げたものです。 1.自己血療法単独の湿疹に対する成績について
耐性導入法は自己血療法をかねているわけですから、これとの比較が必要で、まず、除去食療法単独と除去食療法と自己血療法の併用(以下自己血併用という)の比較について述べます。
a.両者の9ヶ月後の湿疹の改善の比較を統計を取ったことがあります。
乳児、小児、思春期、成人×重症、中等症、軽症の12群に分けて検討したところ、比較が可能な9群のうち7群で併用群の治療成績が上まわり、特に乳児の全群と重症の全群で併用群を上まわりました。
逆に小児では軽症、中等症で単独群の方が上まわりました。これはすべて有意ではありません。もっとも成績がよかった乳児・重症群はp=7%でわずかに有意水準におよびません。これは併用群の乳児・重症群の数が少なかったこともあり、もし、数が増えれば有意に出ることもあると思われます。また、これは両側検定であり、片側検定ではp=3.5%になり有意になります。
b.自己血が効く条件は
1.乳児>成人・思春期>小児の順によく効く。
2.重症ほどよく効く。
3.最近、発症ないし再燃したものはよく効く。経過が長いものは効きが悪い。
4.以前、効いたひとで再発したものは2回目、3回目もよく効く。 |
の傾向があります。
組み合わせでもこの原則は守られます。つまり、乳児の重症がもっともよく効きます。
例えば、小児の9ヶ月後では確かに成績が悪いのですが、最近、発症した、再燃したもので軽症のものはよく効きます。これはこの統計には現れていません。
c.次に除去食単独群と自己血併用群を比べると前述のように重症群で大きな差があり、自己血によって救われたと思う印象的な症例に事欠きません。中等症などで見ると治癒の程度が差がつくのはもう少し前の段階であり、治療長期化すれば自己血併用群との差がかえって詰まってきている印象があります。これはつまり、自然の治癒傾向が両群に働いていると思います。
ところで、思春期・成人期の治療をこの比較をしていた時期は除去食を幅広くやっていましたが、除去食の効果が現れるのは10%くらいで、多くとも15%に達しないと思います。それからすると思春期・成人期の重症群においては除去食という治療法が確立している乳児の重症群よりも有用ということも出来ます。
d.自己血の成績から考えて、アトピー性皮膚炎は必ず即時型傾向の強いものから遅発型傾向の強いものに移り変わる自然史があるように思います。乳児期は即時型傾向が非常に強い時期で、小児期は遅発型傾向が強い時期と思われます。思春期に至って遅発型傾向を残しながら再び即時型の勢いが増し、即時・遅発併存型になると思われます。
そして自己血療法は即時型優位のときに効くという印象を持っています。
2.耐性導入法の湿疹に対する成績
耐性導入法は自己血療法に加えて、閾値近傍の食物アレルゲンを与えて閾値を上昇させる治療法です。当初は食べられるようにすることが出来るのでは、と思って始めたのですが、閾値が上昇するときに除去食療法単独でも、自己血併用でも治らなかった難治性湿疹が消失します。このタイプの湿疹は遅発型と即時型に分けると遅発型の傾向が非常に強いもののように思います。
最初のうちこの現象はいつでも起こるのかと思っていましたが、はっきりしたものは何かのおりに急に閾値が上がるときにしか見られないと考えるようになりました。しかし、治療の経過を通じてやはり、自己血併用よりは全体として湿疹の改善において上まわっていることは疑う余地がないと思います。
さらに自己血群と耐性導入法の治療成績の比較ですが、これも重症・難治・慢性の湿疹が耐性導入のさいに消失するということを経験しています。これは自己血単独の効果の他に何か、湿疹をよくする効果が働いているということを示しています。この治療法の確立によって従来自己血でさえ治らなかった種類の湿疹が治るようになりました。中等症、軽症ではより早くから湿疹の軽減が見られ、全時期を通じて自己血併用より湿疹の度合いはよくなっています。ただし、中等症、軽症の湿疹の完全治癒に至る期間を劇的に改善したわけではありません。もしも、統計をとれば自己血併用群とわずかの数字しか違わないと思います。ただ、乳児においては除去食群と比べて有意差が出ることは確実であろうと思います。
3.耐性獲得率
a.自己血併用によってどのくらい耐性獲得が容易になったかについてはデータを作っていませんが、ほとんど変わらないはずです。
b.耐性導入法によってどのくらいの速度で耐性が得られるかというと、1週間で2倍の量を与えるのを原則としていますから、10週間で1024倍を食べられるようになることになります。実際には10回の治療摂取の間に人にもよりますが、0−3回くらい通らない(誘発症状が出てしまい、閾値が上がらない、最悪だと湿疹が一時悪化する)ということがあり、倍近くの回数を要することもあります。反対に好調な人は1回の自己血において4倍のチャレンジに成功することもあります。
c.ひとつの食品では初期の閾値にもよりますが、3ヶ月−6ヶ月ということになります。通常、数種類の食品のアレルギーがあり、なるべく多くの食品を並行して耐性導入するようにしていますが、初期には1−2種類しかできないので半年−1年(まれに1年半)の治療期間を要することになります。
d.それから可食限界量に達したとき、例えば1才3ヶ月児ではタマゴ2個食べるのがやっとですが、自己血の直後には2個食べられたとしても、自己血の3日後からは1週間に1/2個を2回食べるのが精一杯です。このことを歩留まり1/4と表現しています。1才3ヶ月の子がもっと食べれるようにするには自己血にはよらず、閾値近くの量を適当な間隔で食べるスケジュールを作っています。これを「自力の耐性導入法」と呼びます。自己血による耐性導入法に比べると時間は2−4倍かかるのですが、一応成功します。
ところで、米、小麦、肉類などについてはもっと楽に食べられるようになります。
e.除去食療法後にどのくらい食べられるようになるかについては、今までいくつか報告がありますが、だいたい3年で60%というのが共通です。この場合、タマゴ1個を連続3日食べるというのを基準値にしています。
耐性導入法では1才半から2才で90%食べられるようになっていると思います。ただし、基準値は少し少なくとっています。そのわけは年少なので実際に可食限界量が少ないことによります。また、3才までフォローすることは少ないので3才での比較は現在不能です。歩留まりが1/4であり、自力耐性導入法は時間がかかり、成績は余りよくないことからです。しかし、耐性導入法終了直後のタマゴ1/2個を1週間に2回くらいとかでも、保育園や外食で問題ない程度であると思います。
もうひとつ、従来の成績は3才で60%といってもその後の耐性獲得が大丈夫かという懸念があります。耐性獲得率のカーブは寝て来ており、3才以後の獲得率はそれほど伸びないのではないか、という懸念があります。
耐性導入法では食べられるようになったあと、後戻りすることは滅多にありません。
f.耐性導入法でも食べられるようにならないパターンがいくつかあります。そのひとつは加齢であって、同じくらいのアトピー性皮膚炎の素因がありそうなものでも、兄弟で始めた場合、兄は経過不良、弟は全治という例をしばしば経験しました。ただし、うまく行かない例は家系によって非常に違います。1才半−2才から始めた場合かなり悪くなる一方、小学3,4年でも6−9ヶ月できれいに治り、給食も完全に食べられるようになる例もあります。思春期以降は概して耐性導入法は不調で、自己血単独ですることもよくあります。
g.もうひとつ、食物アナフィラキシーのタイプは耐性導入法でもなかなかうまく行きません。ところで、一部の医師が言っている「食物アナフィラキシー」とはなんだろうか、という疑問があります。ひとつにはごく一般のアトピー性皮膚炎でも大量に食べたらかなり激しい症状を起こすことがありますが、それらをすべて「アナフィラキシー」と呼ぶひとがあること。
私の経験では食物負荷に際して消化器症状、呼吸器症状を起こすものの中には「食物アナフィラキシー」と呼ぶのがふさわしいと思います。また、初期の閾値が非常に低いものの中にそう呼ぶべきものがあります。
また、上記を満足するものも、そうでないものもありますが、耐性導入法の途中でどうしても閾値の上昇がなく、ある閾値で天井にぶつかったように上がらないものがあります。こういう症例は2−5%くらいあります。
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