常色山記
野呂山 839.4m
豊田郡
2002.5.3

  5月の連休は遠出して山に登るのが恒例だった。しかし、このところ疲れがたまって遠くには行ける体力がない。近場の山で済ますしかないが、行く先は前日まで考えがまとまらず、当日開けたガイドブックを見てとっさに決めた。ついでに30年前の彼女に行きませんかとくどく。不意打ちが奏功して「呉方面はイヤ」という元カノジョも同意。JR川尻駅から林道を通ってさざなみスカイラインに入る手前で右手に入ると「どんどんコース」の入り口にさしかかる。登山道に沿って渓流が走り、ところどころで堰堤や瀬を見る。渓流と分かれたところで振り返るとはや、川尻の街並と海が一望であった。  

         登山口から間もない渓流          川尻の街と蒲刈の島と海

  スギ木立に入る手前の裸地に大振りのワラビがところ狭しと生えていた。家内が早速摘み始める。ワラビに時間をとられるのは面白くないので、早く終わるよう私も加勢するが、そのうち私も夢中になる。スギ木立を過ぎ、登山道の土が次第に石に置き換わった。行く手には大岩がゴロゴロと転がっている。気がつくと谷の向こう側の崖にもにも同じ白っぽい色をした岩場が散在する。ここが野呂山の岩海であるらしい。登山道の石は少しだけだが、歩きやすく積み直してある。岩の隙間からフジの枝が突き出ており花が咲き誇る。野呂山にこんな岩海があるというのも、自然生えた藤の花がこんなにきれいだということも知らなかった。野呂山に登るなら絶対に今の季節だ。岩海の上方には展望台と駐車場がある。車で来て上からこの光景を眺めて帰る人の方が多いわけだ。歩いて登れば全然別の光景があるのに。展望台の東屋のあたりからまた家内の足が遅くなる。またワラビ取りが始まったのだ。車から降りた人も盛大に取りまくっている。ここからはひたすらワラビを取りながら頂上まで行く。家内が余計に時間を費やすことがないよう、私もやむなく取りまくる。帰ってみると私たちがとったワラビは鍋一杯になった。

        舗道のように整備された岩海       右手の岩陰からつきだしたフジの花

  ところで野呂山がいいのはここまでである。このコースはスカイラインにぶち当たって忽然と消える。あとはアスファルトの舗装道路を車に脅されながら十文字ロータリーまで歩かなければならない。そこは頂上尾根に当たるが、頂上はそもそも電波塔の群に占拠され、近づくことも出来ない。コンクリートやアスファルトに囲まれて頂上で飯を食う登山ほど惨めなものはない。そこで昨年、「膳棚山」で書いたひとけのない野呂神社に行って飯を食った。昨年来たときには荒れ果てていたが、一年の間に人手が入ってすごく整備されていて驚いた。神社の床に座り込んで食べる。登山して木の床に座れるというのはひどく贅沢な感じがするものだ。
  帰りもどんどんコースを取る。帰ってガイドブックを読み返して驚いた。このコースは野呂山頂上の開拓農家の子弟が中学に通うための通学路だったという。標高差にして約750m、疲れが残っていたとはいえ私はフウフウいいながら登った。この道を昔の中学生は毎日往復していた。昔のこどもに負けている。

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