オーディオ・エッセイ集

2000.11.08 first upload

 

 

1.制振合金はもう使わない
2.電源対策 
3.電磁気レベルの高いところでトライガードが効く
4.気の流れる方向について
5.レゾナンスチップをスピーカー・ユニットにはる
6.何が正しい音か
7.生録はオーディオの必須科目か
8.第4回江川工房in広島の感想 2000.12.04

2000.12.08 last upload

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1.制振合金はもう使わない
   熱研の制振合金、ツァウバーシートを使ってみた。ツァウバーシートを使ったのは
ネジでなくともワッシャーで同じ効果は期待できるとふんだからであり、出来合いの
ワッシャーを買うより、シートから切り出せば安くつくと思ったからである。目的はDA
コンバーターの改良である。私のDAコンバーターは分厚い鉄のフレーム上にごつい
真鍮製の支柱で基板を持ち上げてあり、天板、側板など分厚いアルミ板である。この鉄と
真鍮とアルミが金属性の共振を引き起こしており、すべての音階の音叉を押しつけた
ようにツーンという音がついて廻る。今回の改造はこの共振を殺すためである。
 
  とりあえず入力部の基板を支柱にとめるネジをはずし、基板と支柱の間に制振
ワッシャーを挟んだ。音は確かに激変する。何というか、ニュアンスがブワーっと出てきた
感じで5分か10分くらいはとても気持ちよく聴いた。しかし、音の立ち上がりの最初、何分
の1秒のところが出ていないようなのだ。ガン、ガツンの「ガ」の字の頭1/4くらいが
かすれている。往々にして最初のガツンを殺すとニュアンスがよく出るが、音楽の感動は
薄れていく。
  そこで思案した後に2種類のワッシャーを自作した。ひとつは0.1mm厚の銅板から
切り出したもの、もう一つはウォルナットを1−2mm厚に輪切りにしたものから切り出した
もの。制振ワッシャーをはずして、銅板ワッシャーは支柱と基板の間、ウォルナット・
ワッシャーはネジ頭と基板の間に挟む。これは非常によかった。入力基板だけでなく、
出力基板、電力基板もこれにした。リアルでナチュラルな音になった。ハイファイ調が
なくなり、妙なギンギン、キラキラ、過剰な音場感が失せた。今までもそこで歌っていると
いう感じまでは行っていたのだが、マイクを通していたのが、素で歌っているという感じに
なってきた。ただし、ネジを締めすぎると、エッジがピチと立ちすぎてゆとりのない音に
なるので加減が必要。
  次にもっとも制振ネジが効くといわれている、パワートランジスターの留めネジをはずし
ネジ頭の下に制振ワッシャーを挟んだ。音はボリュームを上げたような感じでワーっと
迫ってくる。ちょっと聴きにはいいようだが、音像はぶよぶよとふくれ上がり失望した。
ここも銅板ワッシャーとウォルナット・ワッシャーを併用したいところだが、留めネジが
プラスチックのスリーブを着ているし、スペース的にも無理。
 
  最後に筐体を組み合わせているネジをはずし、パネルとパネルの間に制振ワッ
シャーを挟んだ。最初のふたつと違って、信号電流から少し遠いから、めぐり巡って
いる振動から本来の信号電流を隔離することになるだろうと思って期待して聴いた。
出てきた音は真綿か、ゴムでくるんだような音。ガツンの後半がにじむ、濁る。響き、
余韻がきたない。数が多くて大変だった分落ち込んだ。
 結論。制振金属は人工甘味料、人工調味料のようなものである。これで一流の料理が
できると思うのが間違いである。これには適量というものがない。使ったら、使っただけ
嫌な甘みが増す。ただし、現代ではこういうのがいっぱい入ったのを好む人も多い。
真にいい味を出そうとすればとことん自然のものにこだわること。私の場合でいえば
銅、ウォルナットといった自然素材をうまく使いこなせば制振合金よりいい味が出た。
それに巡り会った、自然素材の音を再評価するの役だったという意味では制振合金に
感謝しているが、二度と制振金属をオーディオに使おうとは思わない。
 
 ※ この文章はAVvillage誌11月号に投稿したものです。制振合金を推進している 
かのごとき、同誌に多少は遠慮して書いてはいるのですが、見事ボツになりました。
11月号を読むと制振合金でCDプレーヤーを改造して『よくなった』という記事があり
ました。これでは私の投書を載せるわけにはいかないだろうと一定の理解はしました。
 しかし、特定企業の製品を持ち上げっぱなしでいいのかという疑問は残ります。
 
 
2.電源対策 
  また電源を総点検しました。テーブルタップはオヤイデの6N−OCB1、プラグと電
源ボックスの付け根の部分には鉄のベルトが巻いてある。これをはずしてプラスチックの
結束ベルトに変える。電源コードを見ると何と向きが逆さなので付け直す。ついでにプラ
グの刃を見ると片方の向きが逆さ。ゴムカバー付のこのプラグは安いので買ってきて刃を
部品どりする。ウーム、音は見違えるようになる。
 ならば、もっとよくなるところはないか、と物陰に置かれたオヤイデの200V電源に目を
付ける。この電源はどでかいトランスの塊であり、粗末な合板ベニアに取りつけられ、
クッションフロアにべた置きのジベタリアン状態。嫌な感じがして、茂曽路式スペーサー
で3点支持。オット、音の生気がまるで違う。エネルギーがいくらでも供給される感じ。
コードの類さえオーディオ機器といってはばからぬ人もいるのに、他ならぬ200V電源に
対し粗末な扱いをしてすいませんでした、ということでスペーサーと床の間に厚手のむく
板を敷いて差上げる。思えば長い間200V電源の実力を知らずに聴いてきた。茂曽路
氏に報告すると「トランスは振動しているからねえ(当然だよ)」ということだった。
AVvillage誌40号より
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3.電磁気レベルの高いところでトライガードが効く
 ピン・ケーブルにトライガードテープを巻いても音質はほとんど変らないが、CDプレーヤ
ーのトレイに貼るとかなり音がよくなる。これは回転するディスクから発する電磁波を抑制
したからと説明されている。いわば発生源対策、で、その受信先はどこなのか。
 光ピックアップから出ている出力ケーブルに違いない。そこで出力ケーブルである、
フラットケーブルにトライガードテープを貼ってみた。そうするとディスクからの電磁波のみ
ならず、ピックアップを駆動するサーボ電流によるノイズをも抑制したため大幅な音質
アップになった。
 従来、評価の定まらないトライガードテープの効果だったが、これで「磁束レベルが高く、
かつ磁束変動の激しい部分に用いると効果が高い」という仮説をたてた。オーディオ・
システムの中で他に磁気レベルの変動の激しいところはないだろうか。あった、あった
スピーカーに応用したところ、かって聴いたことのない音質を経験した。スピーカー中の
導体すべてをトライガード処理したが、特に効果が高かったのはユニットの端子とコーン
紙をつなぐ錦糸線の部分とネットワークコイルの直近10cmの内部配線の部分だった。
錦糸線は強力な磁気回路に近く、激しく振動する。コイルもまた磁束レベルは大きく、
変動も大きいからであろう。
 どのような音質向上効果があったか。第一に箱鳴り・ボンつきが減少し、低音のピッチ
が非常によく分る。第二に全域で音の立上がりが向上し、スピード感のある音に。第三に
位相が正確になり、解像力、音像、音場が向上。中高域もかってない純粋な音になった。
強力な磁気回路を有するスピーカー、複雑なネットワーク回路を有するスピーカーに対策
すると特に効果大だと思う。
 
※AVvillage誌第32号の読者便りで熊本県八代市の早川真一さんはピックアップからの
出力ケーブルに木炭粉末を天然のりでといたものを塗って同じ効果をあげています。
※江川先生はポータブルのCDプレーヤーの改造でメカ部と基板を離すためにメカ部を
90度傾けて垂直に立てています。これもサーボ電流によるノイズを減らす工夫のひとつ
です。
※私はトライガードとカーボン塗料についてはAVvillage誌第37号の読者便りでもう
ひとつテレビ画像をよくする提案をしています。
 テレビの裏蓋をはずすと、R、G、B、Yの線がブラウン管の根もとのコイルにつながって
いるのが見えます。まず、R、G、B、Yの線にトライガード・テープを巻いて下さい。明度、
コントラスト、精細度が10−20%向上します。次ぎにコイルにカーボン塗料を塗って下
さい。今度は前記の効果に加えて彩度のDレンジも上がり、全項目でさらに10%ァップ
します。コマーシャルやビデオ録画の番組と生中継の差、BSと地上波の違いがあまり
にも大きいのにびっくり、この対策をした日はテレビの番組を次から次ぎにはしごして
しまいました。電気屋さんの店頭に並ぶ新品のテレビを見るとすべてが、アンプの調子
が悪いテレビのように見えました。
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4.気の流れる方向について 
 茂曽呂さんが突然に私の家にやってきてから、私のオーディオがめざましく向上した。
ただ私は絶大な効果を認めつつも「気」という言葉には抵抗を感じていた。「気」のオー
ディオに接して感じる不思議さに二つある。ひとつはひとが気の流れを感じる不思議さで
あり、もうひとつは「気」がなぜ効果を発揮するかである。木片や金属塊を持って重さを
みるだけで方向性がわかる。自分なりに考えて「ひとは、重さではなくまずモーメントを
感じる。重さは同じでも重心が違えば手の感覚が違う」と仮説を立てた。すると「気」の
オーディオに抵抗が少なくなった。
 さてスピーカーユニットを手で持って一番軽い向きを探し、手先の方を上に取り付ける
と「気」の流れがよく、ストレスの少ない音になる。茂曽呂さんは磁気回路が強い方を手
先にすると、地磁気との相互作用で軽くなると予想していた。たまたま私がフレームの帯
磁をイレイザーで消磁しようとしたとき、はたしてフレームの上方向でウナリ音が高くな
った。取りつけかたを逆にするとコーンの軌道は下にずれるから、ストレスのかかった音
になるわけだ。「気」が効果を発揮する理由づけが私にとってはじめて出来た。彼が未証
明の仮説をこの連載中に書いたことはなかった。実は「気」という言葉を使うのはむしろ
彼の慎重さと科学性のあらわれだと私は考えている。
 気のオーディオを実践するにはまず素材の「気」の流れ、向きを知ることが必要になる。
彼の最初のレッスンは木の円柱によるものであった。彼は木の円柱を私の掌にのせ、
「この重さを覚えて下さい」、円柱の前後の向きを変えることなく上下を逆さにして、「さっき
とどちらが重いですか?」、不思議なことに同じ重さなのに極くわずかではあるが、重い、
軽いの差を感じる。次に円柱の一カ所に目印をつけて私の掌にのせ、「この重さを覚えて
下さい」、次に円柱を前後に180度回転させ「さっきとどちらが重いですか」、さらに90度
回転させて同じことを繰り返し、より軽い方を求めていく。一番軽い向きに掌に置いたとき
には下が根っこ側、上が葉先となり、前は木の表面側、後は中心側となる。このとき
「気が流れやすい」ということになる。根っこ側、中心はそれぞれ葉先、表面側よりも
密度が高い。音波は密なところから粗な方向に流れる性質がある。この知識はまっ先に
スピーカーを自作するときエンクロージュアの木どりにまず応用される。気の流れに
したがえば、スピーカーの音は上へ、前へ少しのストレスもなく出てくる。木だけではない、
金属を含めあらゆる物質の方向性がオーディオに関係する。
 茂曽呂さんを知る以前に私は方向性を重視するオーディオ・ショップ、カイザーサウンド
の貝崎氏からこのことを教えられた。氏は私のアナログプレーヤーの上に置かれた鉛の
インゴットを見るなり、「ああ、これは逆ですね」。彼がインゴットを逆さまに置き換えると
あっという間に音が上にグンと伸びた。私は椅子から跳び上がりそうになった。彼の
ショップでインシュレーターを引っ繰り返す実験は体験ずみだったが、あれはプロが精魂
こめて作り上げた精巧なインシュレーターゆえのことだ、まさか鉛のインゴットごときで。
続けて彼は「前後方向もあるんですよ」とインゴットの向きを探っては向きを変えていく。
すると今度はドッと音が前にせりだした。なぜか。私を含めほとんどの人がインゴットの
印字面を上にする。インゴットの印字面は型に流し込むときの下面である。先に固まる
部分の方が密度が高い方向性はスピーカーに限らず、すべてのオーディオ機器に関わり
がある。インシュレーター、ラックの棚板、上に載せるインゴットすべては上へ、前へという
向きにするとストレスのない音になる。
 この方向性を見極めるのがむつかしい。木は初心者でもすぐ分る。鉛インゴットも分り
やすいほうだ。しかし、真鍮板、銅貨などは密度が比較的均質なので手の感覚ではかなり
まぎらわしい。1回でエイ、ヤッと決めた方が案外正しく、迷い出すと止まらない。気の
不思議さのひとつは気の流れをひとが知覚できる不思議さである。木にしても金属にして
も秤りにかけて重さの違いはまったくない。手で持つと分る。私はこの訳をこう考える。
ひとは木片ひとつ持つにもいくつかの屈筋群、伸筋群を使う。同じ重さ、同じ形をしてい
ても、重心の位置が違えばそれぞれの筋肉の力の入れようは微妙に違う、そこのところを
ひとは認識しているのではないか。が、正確にはこれは今のところ仮説である。ところで
重心は下にあるほど、手先にあるほど軽く感じるという経験則がある。
 
※AVvillage誌第36号の気のオーディオに併載された記事の原型です。茂曽路さんが
トライガードの記事と併せて1本の文章にしてくれました。
 
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5.レゾナンスチップをスピーカー・ユニットにはる
  39号にあったスピーカー・ユニットのダンパーにレゾナンスチップをはって音をよくする
というのをやってみた。微少ピーク性のノイズが消えて、音場感、定位向上し、細かい
ニュアンス倍増で驚いた。スピーカーユニットはテクニクス10F10で、チップは自作で、
4×4×1mmのアルミ板に、ダンパーの溝の大きさに合わせて切り出した発泡ポリ
エチレンを両面粘着テープで包んでくっつけている。ユニットのフレームは4本足なので
個数も4個とした。8個では音が固くなる。
 両面粘着テープでは落ちやすいので、最終的にはユニットと発泡ポリエチレンの間も、
発泡ポリエチレンとアルミ板の間とも木工ボンドでくっつけた。これで落下のおそれは
なく、効果も粘着テープと同じである。発泡ポリエチレンは厚手の両面テープの役割を
果たしている。発泡ポリエチレンには適度な弾性があり、振動を効果的に吸収する
だけでなく、返してくる振動のパターンが非常にきれいである。発泡ポリエチレンは1cm
径の紐の形で1m50円、東急ハンズで手にはいる。
 
 以上は投稿のままです。西野さんは他にも錦糸線を2枚のレゾナンス・チップでサンド
イッチにすると音がよくなると書いています。これは錦糸線の余計な振動を除いて高い
レベルの磁界の中での振動することによるノイズの混入を防いでいるということでしょう。
私のアイデイアである、錦糸線をトライガードで巻くというのは、導体近辺の微小電流を
コントロールして磁界の影響をなくすという方法を較べると興味深い。ケーブルにとっては
振動と磁気は等価である、振動は磁気に換算され、磁気は振動に換算されるということ
です。

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6.何が正しい音なのか
 機器を変えれば音が変わる。変えて音が良くなればそちらの機器がよかったと判断する
だろう。ところが、他のオーディオ・マニアのうちに行くとまったく別の音でしかも自分
のうちより遙かに良く鳴っている。ではどちらが正しい音なのか。
 こうした体験を積むと自分の目指す音はどこにあるのか、わからなくなってくることは
ないだろうか。このような問題意識から生の音がどんなものだったのかは分からないのだ
から、自分で自由に加工し自分の好きな音にして楽しむ、という主張がでてくる。もう一
つの主張は実際に生音が出ている現場にいって自分で録音をし、その音が正しく出るよう
に自分のオーディオを調整しようという主張である。
 しかし、私はこのふたつの考えを採らない。実はこのふたつの主張に共通するのは生の
音がリファランスであるという考えである。ところが、CDに入っているのは2重の意味
で生音そのものではない。まずマイクの特性によって録音される音は制限を受ける。f特
やダイナミック・レンジ、トランジェントというものはマイク入力の際に必ず生音より劣
化する。またマイクの指向特性によって音像、音場というものは制限される。
 録音そのままのテープをモニターで聴く録音技術者には生音と録音された音のギャップ
を感じずにはいられない。そこで、モニターで生音がそうであったように聞こえるように
録音の際に加工する。また、演奏者が本来作りたかった音楽のイメージを再現するように
演奏者と相談しつつ、加工する。ペアマイクだけでは録りきれない、楽器やパートのため
にマルチマイクを立てる。臨場感を捉えるために天井からつるしたマイクや後方のマイク
で残響を録音し、ミックス・ダウンする。その結果生音よりはひとつ一つの楽器やパート
の音は明瞭にとらえられ、演奏会場で聴く以上の明瞭性も得られる。しかし、加工した分
音の鮮度は落ちざるを得ない。
 オーディオ・ファンが聴くべき音はどこにあるのか。それはCDの中にしかないのであ
る。リスナーが聴くのは生音などではなく、録音技師と演奏家がこしらえた、CDの音を
聴くのである。オーディオというのは録音技師と演奏家がこしらえた音というものをあり
がたく拝聴するものなのだ。
 生の音は分からないから、自分で自由に加工して聴くという主張は何処が間違っている
のか。自由に加工しようとしても音源としてはいま持っているCDしかないのだ。CDの
音が気に入らないので、何とか自分の許せる音にしてやろうとトーンコントロールや他の
調節機構を効かす。そうすると、そのたびに音質は劣化する。もともとオーディオ・ファ
ンが持っている調節機構はプロの録音技師が駆使する調節機構より遙かにプアである。
 録音が悪いのではないか、下手なのではないかと思うCDは確かにあるし、しかもたく
さんある。だからといって、そこそこの音質のCDに入っている音の情報量たるや、生半
可なオーディオファンならその10%も聴いていないだろう。
 それよりは自分のオーディオ装置、使いこなしをよくしてよりよい音が出るようにする
べきだと考える。実際にオーディオのグレードが上がると今まで聴くに耐えないと感じて
いたようなソフトに結構いい音が入っていたことに気付く、ということはよくある。
 自分のCDだ。どう鳴らそうが自分の勝手だ。だからこそCDに入っている一番いい音
を聴いてやろう、と私は思うのだ。CDには膨大な情報量が入っている。また演奏家も一
般的には名手である。またあなたの好みの演奏家のを買っているはずだ。もし好みの演奏
でなければ他のCDを聴け、もし音がどうしても気に入らなければそのCDを売って別の
を買え。
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.生録はオーディオの必須科目か
 CDには生音がそのまま詰まっているのではないということはオーディオ・マニアなら
誰でもが知っている。楽器やパートのひとつひとつににマルチマイクを立てる。臨場感を
捉えるために天井からつるしたマイクや後方のマイクで残響を録音し、ミックス・ダウン
する。演奏では完全でなかった音のバランスをよくするためにエコライザーで持ち上げた
りする。その結果ひとつ一つの楽器やパートの音は明瞭にとらえられ、実演より分離がよ
くなる。しかし、加工した分音の鮮度はどうしても落ちてしまう。CDに入っているのは
加工しすぎの音であることが多い。そこから、実際に演奏会場で鳴っている音がどんな音
か確かめるために生録をしよう、自分だけのオリジナル・ソフトを持ち、自分の装置が生
音とどういうように違うか認識し、そのギャップを埋めていこう、とする主張が生まれ、
賛同する方も多い。
 だが、私は生録が必須科目だとは思ってない。確かに生音と装置が出す音の違いを知る
には便利なことだと思う。ただし、そのギャップが明瞭なのは生音の記憶が新鮮なうちだ
けであり、記憶はすぐに曖昧となる。私はその記憶を持続的に持ち続けるのは音楽的な教
養ではないかと思う。単に一瞬の音の記憶を保持し続けるよりは音楽の心地よさとして覚
えておく方が人間にとってたやすいからである。そのためには演奏会にまめに通い、出来
ることなら楽器の一つもたしなむ。それならいいかもしれない。
 しかし、オーディオ・マニアが最も困るのはそのギャップを知ることよりはギャップを
どうやって埋めていくかがわからないということである。もし、ギャップを知ることでオ
ーディオがことたりるのであれば、音楽家、演奏家の類は居ながらにしてオーディオの名
手になる。自分の装置をよりよく鳴らすために一番必要なのは生音の記憶ではなくオーデ
ィオ的素養、訓練というべきものなのである。
 オーディオ的素養はどうやったら身に付くか。それは数多く生演奏に接し、音楽的な教
養を高めること、オーディオ機器の試聴、選択、セッティング、アクセサリーの利用、機
器の自作、改造といった経験を積むことである。またいい音を出している先達の家に出入
りし、その音を聞き込むことに他ならない。生録や生演奏を聴いてもそれは遙かなギャッ
プを意識するだけであるが、そういう先達の音を聴くということはまた別の効用がある。
それはそのギャップをオーディオ的に埋めていくヒントが隠されているのだ。生録と装置の
音の違いを確かめるのももちろんオーディオ的素養の中にはいるが、その中の限られた
領域でしかない。生音の記憶と生録のギャップでさえ遙かな距離がある。加工されていな
い音だから比較しやすいと思うのは大きな錯覚であり、実は録音されたはずの音と自分
の装置から出る音の差というのは想像するより大きな距離がある。この距離はCDの音を
聴きこんで、演奏会の音と比較するのと大差ない。
 正しい音が解るのはいろんな努力をして音が変わった、よくなったというときに一番よ
く解るようになるのではなかろうか。つまりオーディオは遙かなゴールを設定してそれに
近づくレースではない。目の前一歩一歩のを確かめながら進むそういう足取りである。
 完全なるお手本を見れば最短距離でそこに近づけるだろうか。ピアノのお稽古で一流演
奏家のコンサートばかりを聴かす。それもいいだろうが、多分その子が一番刺激を受ける
のは同年代の上手な子の演奏を聴いたときだろう。そして練習の中で自分のスキルを磨
きながら美しい音、正しい音というのが解ってくるのではなかろうか。
 まあ、私だって生録に興味がないことはない。オーディオに関係あることなら何でも一度
は首を突っ込んでは見たい。ひとの持っていない、生録のCDの2枚や3枚くらい持って
もいたい。現にその計画もあるのだが、ただ、生録こそがオーディオの向上の切り札にな
るという主張には首を傾げざるを得ないのだ。
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8.第4回江川工房in広島の感想 2000.12.04
 この会への参加は3回目になる。主催側のスタッフのうち江川先生、藤本さん、山本紘
市さん、中川さん、サーロジックさんは昨年と共通で、今年はそれにタイムドメインの由
井さん、村井さんが加わるという豪華な顔ぶれである。
  てきぱきした話題展開、スタッフ同士で顔を立てながらの紹介とテレビ番組を見るよう
に上手な運営で、中央の方々ののりのよさに驚く。それでも共通しているのはみんなオー
ディオが好き好きで自分の理想の音を追求するために会社を興したというようなひとばか
りである。宣伝というよりは自分の音を聴いてくれるひとを求めてわざわざ広島くんだりま
でいらっしゃっているのだ。嬉しいことである。
  トップはデンの特製のパワーアンプ、アッテネーター、CDプレーヤーの三脚三階建て
セット、普通の筐体に入れたものと比較する。情報量は多くなるが、女性ポーカルがフル
ートみたいになる。
  次はCD、SACD、DVDフォーマットの聴きあわせ。CDプレーヤーはソニーのものを
デンが改造したもの、SACDは現在、最高価格のアキュフェーズのもの、DVDはパイオ
ニアのもの。DVDはオーディオ・オンリーのスイッチがあるのが特徴とか。
  村井さんがこの3種のフォーマットが揃った3枚しかないソフトのうちの一枚Exton
レーベルのチャイコフスキーの5番を用意してくれた。SACD、DVDになるとある種の
安定感、落ち着きがでる。例によってCDにはハーモネーターのオプションが付く。
ハーモネーターでは音は変わるが、SACD、DVDとはまた違った音の聞こえ方であり、
違った方向を目指しているのではないかと思える。CDのときに低域と中高域のつなが
りがよくないなと思ったので、そこに注目して聴くとDVDがよかった。ただし、これは
フォーマットの善し悪しの差ではない。機械が違うので音は違って当たり前、音づくりだ
ってCD、SACD、DVDに記録するのではやり方が違って当然なのでまったく同じソフト
を聴いているというわけでもない。
  前後してCDの低音処理というのを聴いたが、これはハーモネーターよりよく変わった。
また、SACDにも三点支持のインシュレーターを載せるとこれも随分よくなった。とにかく、
CDを見限る前にやることは多い。
 話変わってサーロジックのDSP利用のスーパーウーファー、相変わらずよく効いてい
る。こいつを付ける演奏の熱気が全然違ってくる。コバケンが指揮台を踏みしめている太
ももの緊張感が伝わってくる。
 タイムドメイン社のYoshii9、アンプとスピーカーのシステム。無指向性でフワリと漂う音
はよく出している。7.5cm口径だから、レンジは知れたものだが、とてもきれいな音だ。
ただシンフォニーではエコー、残響音が主体で前方からぶっつかってくる音の固まりなど
は苦手だ。特殊なシステムにしては売れゆき好調で広島で既に30セット売れたという。
オーディオにはいろんな方向性があるから楽しいと言える。
 
 
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