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耐性導入法はスギ花粉症の
標準治療法たりえるか?
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2000.12.14 upload
2002.3.20 全面書き換え
Q:スギ花粉症に耐性導入法は効くのですか。
A:非常によく効きます。耐性導入法はアトピー性皮膚炎のために開発したのですが、アトピー性皮膚炎を治療するときよりも段違いによく効きます。
Q:治療の手順はどのようにするのですか。
A:耐性導入法は現在2段階で行っています。限界値を鼻粘膜で測り、スギ花粉のエキスを飲むのが第一段階、限界値を皮内で測り、スギ花粉エキスを皮内に投与するのが第2段階です。まず第一段階ですが、鼻の粘膜で限界値というものを測ります。医者の言葉では「閾値」といいますが。
Q:えーっと、限界値っていうのはアトピー性皮膚炎のページに書いてありましたね。でもよく覚えていない。
A:スギの花粉が鼻の粘膜にくっつくと鼻水やくしゃみなどの症状が起こりますよね、ところが、ごく少量の花粉だと症状が起こらない。そこで、絶対に症状が起こらないだろう、というほど薄い薄い花粉のエキスを作って鼻に綿棒でなすりつけてやります。すると、症状が起こらない。じゃあ、それの3倍濃いエキスを塗る、症状が出ない、もう3倍濃いのを塗る、と続けていくとどこかで症状が出ます。そこが限界値です。つまり、それ以上の濃いさのエキスはすべて症状を起こす、それ以下のエキスは起こさない、そういうギリギリの濃度、境目の濃度をつかむのです。
Q:はいはい。
A:限界値が分かったら、自己血注射をします。自己血注射は早期反応といって過剰な免疫を抑制し、限界値を引き上げる作用があります。グラフを見て下さい。この患者さんは私の外来で最初に#10(スギ花粉原液の10万倍希釈)の濃度が限界値でした。それから6時間後には#5(同じく300倍希釈)に上がりました。
Q:ということは?
A:つまり、この患者さんがもしスギ花粉が10個鼻粘膜につくと症状が出る人だとすると、わずか6時間後には3000個のスギ花粉がついてようやく症状が出るということなのです。
Q:えーッ。それってすごいじゃないですか。
A:ところが自己血の効果というのは一時的なのです。ご覧なさい。翌日にはもう下がってきていますね。いろいろな症例からこの効果は6時間から48時間続くことがわかっています。スギ花粉症の患者さんが自己血を打つと1−2日鼻の調子がいいと言っていたことからこの治療法の研究が始まったのです。この6時間から48時間というのを覚えていてください。これはアレルギーの患者さんのためのシンデレラ・タイムなのです。この時間の中だけ楽になるのです。
Q:48時間過ぎるとどうなるのですか。
A:限界値はどんどん下がって1週間後に測ると元に戻っていました。
Q:あー、残念。
A:そこで2週間目です。外来で限界値を測って、6時間後に測ると#6に上がっていました。このとき#6のスギ花粉エキスを1ml飲んでもらうと、24時間後、48時間後も限界値は#6のままでした。そして1週間後には#7になりましたが、それでも100倍ほど上がりました。
Q:ほうほう。
A:そしてまた自己血をしては6時間後に測ると#4に上がっていますね。ここでまた#4のエキスを飲んでもらう。すると翌週は#5になった。とこういうようにどんどん鼻粘膜閾値を上げていきます。2001年の成績では大半のひとが#0すなわち原液の濃度に2ヶ月くらいで達しました。
A:ばんざい。じゃあ、治おったと。
Q:いいえ、ここまでが第一段階です。私も2001年の花粉シーズン後半には#0まで行けば治るものだと思っていました。ところが、外来で#0まで症状が出なかった患者さんが医院の外に一歩出るとクシャンとくしゃみをするのです。そこで、エキスの量を多くすることを考えましたが、30ml以上飲んでもらうのは困難だし、エキスの量も到底足りません。そこで、第2段階として体の中に多く取り込ませる手段として皮内注射を考えました。そのために、鼻粘膜の限界値が#0まで上がったひとに皮内注射で限界値を調べてみました。そうすると多くの人は皮内の限界値は1000万倍でした。皮内注射はこの濃度から始めます。
A:第2段階はどのようにして進めますか。
Q:第1段階と同じく、自己血注射の後6時間ないし翌日に限界値に近い濃度のエキスを皮内注射します。これを1週間毎に繰り返します。大体2回の注射で10倍程度濃度を上げていくことが出来ます。
Q:では、皮内の限界値をどこまで上げれば症状が出なくなり、治ったといえるのでしょう。
A:現在のところでは原液の10倍ないし原液(1倍)まで上げれば症状も出なくなり、完全に直ったというところまで行くのではないかと期待しています。現在のところは10倍に上がった人が出はじめている状況です。実際1万倍から、症状が軽くなったという人が多く、それが1000倍、100倍と高くなると症状がより軽くなっています。
Q:第2段階はどのくらい時間がかかりますか。
A:1000万倍から始めて2週で10倍上げていくと14週ということになります。しかし、1000倍、100倍と濃くなってくると10倍上げるのに3回、4回かかる人も出てきました。それでも長くとも半年ですむでしょう。
Q:ところで第1段階はどのくらいかかっていましたか。
A:これは初診時の限界値の高さにもよります。限界値が低ければそれだけ時間がかかるわけですけど、昨年のデータでは平均2ヶ月でした。
A:この治療法は毎年いつから始めるといいのですか。
Q:これは一年のいつから初めてもいいのですが、花粉が多く飛ぶときは治療が停滞します。花粉のシーズン・オフがベストなのですが、たいがい患者さんは症状が出てから来院されます。その年の症状が終わってからも来年のために続けるのが大切です。
A:半年くらい通って第2段階も終わったら来年はいつ来ればいいですか。
Q:12月か1月のうちに来院して皮内で閾値を調べて閾値が下がっていれば元のレベルまで上がるように追加して治療します。しかし、下がることはないはずだというのが私の元々の考えなんですよ。もし、下がっていなくてしかも来年症状が出なければそれから先ずっと症状が出ない、そういう治療法を目指しているんですよ。
Q:ずっと直るのですか。
A:この治療法の目的である完全な免疫寛容というのはそういう性質のものです。
Q:でもやってみなければわかりませんよね。
A:確かにそうです。しかし、まるで出たとこ勝負、当たるも八卦あたらぬも八卦というような見通しのないことでは新しい治療法の確立は出来ません。それまでの経験を総括して理論的にやっていくのも必要です。理論的な見通しがなければ私はここまで来れませんでした。スギ花粉症は1年立たないと治療の結果が出ません。1年、1年と失敗と反省、教訓を生かしながら去年よりは今年、今年よりは来年と治療法は進んできています。治療の確立までもう一歩のところです。
Q:いままでの治療法と比べてどう違うのですか。
A:アレルギーの治療には上流でやるものと下流でやるものがあります。その意味は例えば工場による河川の汚染対策を考えますとね、ずっと下流でやるものと上流でやるものがありますよね。下流で例えば河口付近で中和剤を撒いても効果は少ないわけです。上流の例えば工場の排水口の当たりで汚染対策をすると効果的なわけです。そして工場の中で排水処理をしたり、そもそも工程を考えて汚染が出ないような工程や材料を使うともっといいわけです。
Q:いろんな治療方法がありますが、上流−下流に分けてみて下さい。
A:もっとも上流にあるのは花粉を吸い込まないこと。しかし、これは無理なことです。マスクやゴーグルでは精々50%減らすことしか出来ません。スギの木を切ってしまえという議論もあります。シーズンの間はホンコンに逃げるというひともありますが、これもごく一部のひとしかできません。これらは工場の操業を停止しろというに等しい。
今、大多数の医療機関で行われている治療法は抗アレルギー剤による治療です。飲み薬、点鼻液、点眼液を使うわけですね。これらは排水口のところでの処理くらいでしょうか。かなり効くのですが、花粉症のひどいひとにとっては焼け石に水なのはご存じの通り。
Q:工場の中で処理するような治療法はないのですか。
A:現在ある治療法では減感作療法がもっとも近いですね。これは免疫の中枢に効いているのです。抗アレルギー剤などは好塩基球や肥満細胞のレベルで効いているのです。これは免疫系統の下っ端なのです。そして耐性導入法と減感作療法は工場の生産方法や原材料をかえるような対策なのです。耐性導入法と減感作療法の違いについては別のページに書きます。
花粉採集行 2002.2.6
耐性導入法と減感作療法の違い2002.3.20