アートエマルジョンによる桜文様小袖制作
 夏のある日、染色と織物をしている友人から、小袖を作ってみないかと連絡がきました。以前に一度その友人の展覧会の為に制作した事がありました。今回もう一度作ってみてはどうかと。展覧会に出展する事を条件に材料を提供して頂けるという事で、制作をする事になりました。

 技法としては、富士フィルムから販売されている、感光乳剤を着物に塗りつけ、それに桜の写真を焼付けするというものです。簡単に説明すると、印画紙の替わりに繊維の着物に桜の写真をプリントする、という事です。

 この小袖が展覧会場での完成品です。会場は有楽町のジャパンシルクセンターです。(2007.10/25~10/27)

左の写真:矢村氏に提供して頂きました。

1.絹生地到着。これで着物1枚分(1反)だそうです。製品名は、丹後ちりめんでした。1反がどれだけの量の桑の葉や蚕で作られたのか、想像すら出来ない私ですが貴重なもののようです。
2.生地のアップ写真。手触り感、表面の光沢など手直に見るのは初めての経験。一発勝負の作業なので、失敗して無駄に出来ないぞ!
3.順序としては、反物の下染め、裁断、仮縫いと続きますが、ここでは省略。型の寸法通りに小袖の部分が短くて丸い。写真は背面から立体的に見た所です。アートエマルジョンの乳剤を塗布した後、このような状態で露光する。フィルムを通した露光の直進性と、着物を纏った時の立体感をいかに上手く出すかが、ポイントの様な気がします。絹の柔らかくほのかな甘い香は、不思議な感覚を覚えます。
4.いよいよ暗室の準備。黄色の塩ビ板の上は、着物に乳剤を刷毛で塗布をして乾燥する為の台として使用。作業はすべて暗室の中なので気が抜けず、最も出来上がりを左右するポイントです。収納ボックスの左側が現像液、右は定着液が入っている。床にはホームセンターで購入のビニールシートを二重に敷く。
5.ラッキーD45Mという引伸機です。ヘッド部分を横にして壁に投影しピントは壁面との距離を調整、露光する。少しだがアオリも出来る。自宅居間は完全暗室とは出来ないので、夜間中で作業を終えなければならない。乳剤塗布、乾燥、露光、現像、定着、水洗、乾燥と工程は続く。プリント元フィルムは、4×5インチのモノクロフィルムで撮影したシダレザクラのネガです。
6.1回目の焼付けをして陰干し、乾燥したものです。着物は立体的なので、平面的にプリントしただけでは、どこか途切れた部分などが出来てしまいます。それを補う為に、二度の焼き込みをする。私は着物の事はよく知らないのですが、着物の柄のポイントは背中、袖、裾の部分ではないでしょうか。なかでも最も中心となる背面から裾の部分、ここは特に絵柄のながれに気を配ったところです。
7.背面の模様を屋外で撮影する。水墨画の様でもあるし、シルクスクリーンの印刷のようでもありますが、れっきと写真のプリント像です。乳剤の塗りむらがなんとも好い感じだとおもいます。

8.背面の左側のアップです。逆光で透かし気味に撮影しています。モノクロなので錦糸などの艶やかさに欠けますが、シダレザクラの文様と不思議とマッチすると思います。
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