BCPの定義:本来の定義は、業務継続計画。ここでは新型インフルエンザ発生による、地域における社会機能の停止、停滞、または崩壊を防ぐことを目的に、地域内各組織、業界、個人等が、業務、市民サービス、個人的活動を継続するために策定する計画と考える。
基本的BCPの考え方(なぜ業務の継続が必要とされるか):各組織、各企業、各施設等は、社会から無報酬で委託契約されている、社会を構成するための要素の集合体と考えられる。社会はそれら各要素のネットワークで維持されていると考えられる。すなわち社会の存在はそれら構成要素の健全なる存在で成り立つといえる。一方、各構成要素のなす業務(ビジネス)は、社会があるが故に可能となっている行為であり、ネットワークの中では、その業務の継続がネットワーク維持のための義務として存在する。すなわち各構成要素は、自らネットワークに参加し、そこで存在し続けるするために、社会的危機に際しても、ネットワーク機能の低下を可能な限り阻止すべく努力する義務が課せられている。
社会構成要素:企業、行政機関、医療機関、教育機関、宗教施設、ボランティア組織、他。
新型インフルエンザ発生時に認められる社会機能崩壊につながる事象
・多数の発病者および死者が発生
医療機関が対応困難に陥る。
・多くの企業や行政機関のスタッフが発病、または家族の看護のために就業不能に陥る
企業の業務量低下。行政機関の窓口業務等の閉鎖。
・ライフライン関連業者の業務停滞、または停止。
電気事業者、水道事業者、ガス事業者、石油事業者、食糧販売関係者等。
・輸送関連業者の業務停滞、または停止。
鉄道業者、道路旅客・貨物運送事業者、航空運輸業者、水運業者等。
各構成要素のBCP作成のための準備段階
・新型インフルエンザに対する情報収集および学習
人的被害を主として危機は開始されるが、それに引き続き社会機能低下を招来することが特徴であることを理解する。他の一般的危機は物理的被害が主として危機の開始となる。
・感染症としての新型インフルエンザの学習
感染様式、発病のしかた、免疫機構の関係、重症化の原因、治療方法、予防方法等。
・国および自治体における予防対策
ワクチン接種、抗インフルエンザ備蓄とその使用方法他。
・新型インフルエンザによる社会機能の低下程度の推定
人的被害程度-->ネットワーク機能の障害程度-->経済的被害程度
・新型インフルエンザ発生による社会的混乱
パニックの発生:その原因と対策
ネットワーク機能の障害:その原因と対策
各構成要素のBCP作成における共通事項
・新型インフルエンザ発生時における被害想定(死者数)
パンデミック・インフルエンザによる国内の想定死者数
ウイルスの毒性と対策程度による想定死者数
| 程度*1 |
無策*2 |
現状 |
最善 |
最高 |
| 軽微 |
− |
− |
− |
− |
| 通常 |
3万人以下 |
7千5百人以下 |
3千人以下 |
3百人以下 |
| 香港 |
5万人 |
1万2千人 |
5千人 |
5百人 |
| スペイン |
96万人 |
24万人 |
10万人 |
1万人 |
| H5N1 |
2900万人 |
725万人 |
290万人 |
29万人 |
*1 程度とはインフルエンザウイルスの毒性程度であり、現在流行している季節性インフルエンザを”通常”としている。世界で毎年30万人程度死亡している。香港というのは、新型インフルエンザとして1968年に登場した香港風邪(H3N2)程度の毒性を意味し、これは世界で100万人死亡した。スペインとは1918年のスペイン風邪(H1N1)程度の毒性を意味し、これは世界で5000万人は死亡している。致死率2%、発病率40%。H5N1とは現在インドネシア周辺で流行しているH5N1鳥インフル程度の毒性を意味し、致死率60%、発病率40%とした。当分類は米国のパンデミック重度指数をも参考にしている。
http://www.pandemicflu.gov/plan/community/commitigation.html#I
*2 対策レベルを表したが、無策とは、スペイン風邪流行時の国内での対策レベルで、すなわち何ら対策がとられない場合である。現状の対策とは、現在国内で取り得る対策であり、死者数が四分の一に減少と仮想、最善の対策とは、国内で取り得る対策を全て動員した場合の対策で、死者数が十分の一に減少と仮想、そして、最高の対策とは、現在世界の研究者が開発し、実用化寸前の方法論を駆使した場合の対策で、死者数を百分の一に減少と仮想している。この仮想した数値は、対策によりこの程度は減少するであろうとのイメージを呼び起こすための数値と考えて欲しい。
・対策内容
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対策方法 |
| 無策 |
なし |
| 現状 |
プレパンデミック・ワクチンの限定的使用、抗インフルエンザ薬の予防的、および治療的使用、発病者の外出禁止、学校閉鎖、集会禁止、不要不急の外出禁止、個人における衛生管理、他。一部企業・病院のBCP実施。 |
| 最善 |
上記対策に以下が加わる。発病後の抗インフルエンザ薬の早期投与(国民全員)、重症化患者に対する抗インフルエンザ薬の多剤投与、パンデミックワクチンの早期投与(迅速製造後)、企業・病院BCP実行による社会機能低下阻止。 |
| 最高 |
上記対策に以下が加わる。プレパンデミック・ワクチンに万能型ワクチン、DNAワクチン、等のA型インフルエンザ全てに効果あるワクチンを定期的に国民全員に使用。ハイリスク者の感染予防には、長時間持続型抗インフルエンザ薬を併用使用。発病者に抗インフルエンザ薬の早期投与(場合によっては2剤投与)。企業・病院BCP完全実施。 |
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・企業のBCP策定における危機対象としての「新型インフルエンザ」による社会的被害想定
新型インフルエンザウイルスの毒性は、通常、スペインインフルエンザ(H1N1)と同程度とするのが一般的であるが、現在のH5N1鳥インフルエンザから発生するパンデミックの場合、それ以上の被害も想定しておく必要がある。
想定被害は現状対策下での被害量を当てはめる。しかし、現状の対策も短期間のうちに進むことから、年に数回は見直すr必要がある。
最善対策下、および最高対策下での被害量も、参考データとして付記すべきである。
下記はオーストラリアのシンクタンクであるロウイ研究所での推定被害状況である。同研究所ではパンデミックの程度を4段階に区分している。
| 程度 |
類似インフルエンザ |
世界での死者数と死亡率 |
| 軽度、mild |
香港 1968-69 |
140万人,
0.022%死亡率 |
| 中等度、moderate |
アジア 1957 |
1400万人、0.22%死亡率 |
| 重度、severe |
スペイン1918-19 |
7400万人、1.1%死亡率 |
| 超重度、ultra |
スペイン 1918-19
(高齢者死亡率が高いと仮定)* |
14200万人、.2.21%死亡率 |
*スペイン・インフルエンザでは若年者が多く発病し、死亡した。その理由はサイトカイン・ストームによると推定されているが、現在のH5N1鳥インフルザによる人での発病者も若年に多く、中高齢者での発病数と死亡者は少ない。
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