臼杵岩から県境稜線 御所平散歩

小太郎谷源頭の優しいカールを秋風が吹き抜けていく。誰も来ない。贅沢な時間が過ぎていく。

山行日 2002年 10月15日(火) 晴
コース 臼杵登山口8:45--臼杵岩9:30--臼杵山9:40--(尾根間違)--県境尾根分岐10:50--船石11:35--小太郎谷源頭11:50--水無12:15--御所平12:45--ヨコネ13:10--御所谷分岐13:25--御所滝14:00-営林小屋跡14:30--大堰堤15:00--キャンプ場15:15--駐車地15:30

臼杵登山口

 石水渓のこのあたり、夏は賑やかだが秋風とともに人の気配が無くなる。路上やガードレールの落書きさえ寂寥感を誘う。車をつけたところが即、登山口。歩き出すとしばらくは樹林のプロムナードであるがすぐに急登だ。こんな坂道はぐいぐい登って行けたらいいのだが、体の調子も今ひとつでゆっくりボチボチと行こう。急登の後は二次林の散歩道、そしてまた急登。この繰り返し。がさっと音がした方を見るとリスが枝の上にいる。登りだして30分で初めて展望が開ける。もう鬼が牙と同じくらいの高度にいる。しばらく休憩。

臼杵岩

臼杵岩
臼杵岩 
 また尾根伝いの急登道。なかなか高度感がある。臼杵岩直下のやせ尾根はまるで空を飛んでいるようだ。おまけに足元は花崗岩のざらざら石。足を滑らそうものなら止まらないだろう。眼下を猛禽類が飛んでいる。トビか鷹かよく分からない。
 臼杵岩を過ぎてすぐが臼杵山。そしてそのまま通り過ぎると道を間違う。右に折れて下っていくと雰囲気の良い鞍部。西尾本のK峠。よく見ると古い道形が残っている。昔人の往来を思い起こさせる気配が漂っている。
 鞍部を過ぎて再び急登。そしてなだらかになったと思っていたら黄色いテープにマジックで「御所平(難路)-->」と小さく書いてある。そして、右手に向かって踏み跡が続いている。迷わずに右折。道はどんどん下っていくが、黄色や赤のテープ目印ははっきり付いている。ガレの上縁を越え樹林の間をくぐりしているうちにどんどん下降する。見通しがきかないが道ははっきりしている。気が付けば臼杵が遙か上方に見える。変だぞ。しまった間違えた。あたりが見えるところまでいって地図を出してみたら船石林道に降りる尾根にいるようだ。なんたることだ、と思って登り返す。またまた急登。へとへとになって登り返した。やっとの思いで元に戻りそこからほんのひと歩きで県境稜線への分岐に出た。

県境稜線 船石 小太郎谷源頭カール

船石から 
中央に第2名神の橋脚が見えるだろうか
小太郎谷源頭
 樹林の中を道は穏やか。三重県側はスパッと切れ落ちているが、滋賀県側は優しくなだらかである。登ったり降りたりしているうちに船石についた。
 ここからは大展望が広がっている。船石とは舟形のこの石のことだろう。この石の上は良い休憩ポイントだ。西尾本には「筆者たちは船石の上で弁当を食べて広大な展望を楽しんだ」とある。その当時は眼下に無粋な橋脚なんか見えなかったのだろう。数年もすると橋脚だけでなく、高速道路上を走る車が見えてその騒音がするのだろうか。そうなったら、この静かで満ち足りた時間が過ごせるだろうか。稜線上でも下界の騒音に縛られるのだろうか。幸い今は物音一つしない。
 黄色のテープにマジックで「フナムシイシ」と書いてある。黄色のテープは信用しない事にした。
 しばらくいくとロープがかけてある。ロープを降りて植林帯を過ぎれば小太郎谷源頭カールだ。優しい穏やかな草原が広がっている。昨年ここに来たとき、ここで弁当を食べている人がいた。今年は私もここで弁当を食べることにした。ここに降った雨は琵琶湖に流れ込む。長い旅の始まりはこの穏やかな草原なのかと感心した。三重県側は急崖、ガレガレの葺谷源頭。急角度で落ち込んでいる。岩は崩壊の真っ最中という感じで耳をすますと小さな石が転がる音が聞こえてくるようだ。
 おにぎりを食べているうちに、上高地のテン場を思い出した。20年ほど前、初めての上高地、初めて見上げたの穂高、夜になるとカラーンと岳沢の岩が転がっていく音がテントの中まで響いてきた。規模は違うが葺谷の源頭は大崩壊している。昨年、葺谷を下降したときずいぶん怖い思いをした。ここを後にして御所平へと登っていく。暗い暗い杉林。まったく枝打ちしていないので頭をぶつけた。痛い思いをしながらよろよろと登っていく。

水無 家老平 御所平 ヨコネ

茫々たる草原が広がる
色づきかけた木々。
暗い林を抜けたら明るい草原が広がる。そう、そこはもう水無。うってかわって光があふれている。「若狭 那智縦走 紀峰山の会」という看板があった。 すごい事やっているんだな。ここまで登れば後は高原の遊歩道。左手に能登ヶ峰、正面に仙ヶ岳、そして左前方から鎌、御在所、雨乞、綿向、ただ今日は霞んでいる。
 もう、茫々たる草原の中を漂っていく小舟になって風まかせ、波まかせ。灯台は正面に堂々とそびえる仙ヶ岳だ。
 どこからが家老平でどこからが御所平なのか私には分からない。そんなことはどうでもいい。ただただ草原と灌木とササとススキと色づきかけた広葉樹。その中を散歩。そう、まさに散歩だ。
ススキもこのくらいだと風情があるが 行く手を阻むススキの壁


こんなに優しい風なのに誰もいない、誰も来ない。それならば、薄になってしまって風に吹かれていようか。笹になって潜んでいようか。そんなことを考えながら御所平の穏やかな稜線を漂って行くのだった。

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