鬼ヶ牙 長坂の頭 御所平
離れて眺めると鬼ヶ牙は岩だらけの南画のような山だ。松の木が似合う山である。仙人風の白ひげをのばした老人が似合う山である。掛け軸にしたいような山である。
その鬼ヶ牙から県境へ続く尾根を今まで何度も見ていた。あるときは石谷川から見上げ、ある時は仙ヶ岳方向から見下ろし、ある時は臼杵方向から、ある時は御所平から、、、
前からこの尾根を歩きたいと思っていた。何となく惹かれるものがあった。ネット上での記録は一度見たことがあるが、そのサイトからREDLOFAに感染してしまった。ノートン先生の警告にもかかわらず、強引にページを開けた自分が悪いのだが、、それ以来、そのサイトから過去の山行記録が削除されてしまって悲しい。
さて、この尾根、遠くから見ているとなかなか手強そうで、私のような中年ハイカーには危険かな?と思っていた。西尾本にも「一部に困難なキレット」「ザイルはあったほうが安全である。」と言うような記述があり、躊躇していた。
ところが、最近出版された「鈴鹿の山を歩く (草川氏著)」と「地図で歩く鈴鹿の山 (西内氏著)」にしっかり記載されているではないか。それならば行かねばならぬと、ついでに秋の御所平も堪能してこようと欲張りなプランを立てた。
山行日 2003年10月17日(晴れ) パーティー 単独 コース 鬼ヶ牙登山口8:45---鬼ヶ牙488P9:30---長坂の頭10:10---県境尾根11:15---小太郎谷源頭11:30---ミズナシ11:50---御所平12:15---ヨコネ12:50---御所谷分岐13:00---営林小屋跡14:10---大堰堤広場14:40---鬼ヶ牙登山口15:10
鬼ヶ牙488Pまで
船石林道最初の橋の手前から尾根に取り付く。適度な傾斜でぐんぐん高度を上げていく。一面の羊歯、そして松の木、風化した花崗岩。
所々展望がきく。空気が澄んで良く見える。臼杵岩が見えている。あの杵の角度は元気だなあ。ありゃ20才代だなと不埒なことを考えている。第二名神の工事も良く見える。高架橋建設は大分進んでいる。この強引な道の付け方は一体なんなのだろうか?何があっても一直線。山をぶち抜き、斜面は削り、谷には高い高い橋。建設費も莫大でしょう。税金もバンバンぶち込んでいるのであろう。ザレた展望の良いピークで一休み。そこから一息で488Pである。素晴らしい展望だ。十分堪能したので鬼ヶ牙の本峰はパスして長坂の頭方面へ向かう。
強引に第二名神
長坂の頭まで
踏み跡は薄くなるが、尾根筋ははっきりしているし、テープ目印の類も多い。かなりの人が入っていると見た。松混じりの尾根道はなかなか日本庭園風でいい感じである。きっと松茸がいっぱい出るのだろう。そういえば、林道には胡散臭い車が何台か停めてあった。途中、間違いやすい尾根の分岐がある。直進すると石谷川へ落ちていくのだろうか?そこを左にとって、いったん下って鞍部に衝立状の岩が行く手を阻むところがあった。テープは左側を巻くように付いている。テープが付いてなかったら迷いに迷うところだ。うまく岩を迂回して、ルンゼ状の急傾斜を強引に登って尾根に戻った。ここからは歩きやすい道。ピークに着いたので長坂の頭だと思って高度計を見ると100m程低い。地形図で見ると、長坂の頭手前のca520mピークのようだ。なかなか良い雰囲気の所である。ここから高度差約100mの登りで長坂の頭に着いた。ピーク直下から西側は大ガレである。大崩壊である。高度感があってなかなかよろしい。
県境稜線まで
| 県境縦走路から長坂の頭を見る。 |
あれ、間違えたのかな?と思った。まさかこのガレを降りるとは思わなかった。大ガレの右に県境へ続く尾根が見える。降りてみると見かけより簡単に尾根に出られた。ほっとして歩き出す。
あとは楽しい尾根歩き。この辺りは風化しやすい花崗岩でできている。花崗岩を松は好むのだろうか?相変わらず松の木が多い。風や雨や日光に晒される所はザレた地面が露出している。どんどん風化が進んでいるのだろう。樹間から見える仙ヶ岳や御所平がいい感じである。御所平のササと木が手に取るように見えている。鞍部まで下りて県境尾根まで急登。最後は岩の上に出て気がつけば県境縦走路に飛び出していた。
御所平
何度も通った道。なじみの道。暗い植林帯を抜けると明るい小太郎谷源頭カール。獣道が草原に幾何学的な模様を描いている。この草原の優しく湾曲した曲線は心和ませる。癒しの草原だ。背の低いササの中にアザミやリンドウがひっそりと咲いている。もうすぐ花の季節も終わり。あとひと月もしないうちに雪が降る。ただ今日は日ざしがとても暖かい。虫達がせっせと花にやってくる。急げよ急げ、もうすぐ花はお終いだぞ。
虫の視点でリンドウ
暗い植林帯を登っていく。疲れた足をいたわりいたわり登っていく。明るくなったらもうそこはミズナシと呼ばれる所。これまた大展望が広がる。琵琶湖の向こう側までくっきり見える。手前には能登ヶ峰やサクラグチ、そして仙ヶ岳。その背後に宮指路、鎌、御在所、雨乞、綿向。
みかんをザックから引っぱり出して本日始めての大休止。だんだん眠くなる。だあれもいない山上草原。贅沢な時間と景色をひとり占め。所々の灌木はもう色づき始めている。ナギナタコウジュの大群落が広がっている。
ササ原を通り過ぎると今度はススキの原。自分より背の高いススキの中を、四方八方に広がる獣道を頼りに歩いていく。メインの縦走路をいつの間にか外していた。獣道を歩くと、それだけで自然との距離が近い。でも人間は動物になれない。いつの間にか道は収束して、そして、気がつけば明瞭な縦走路をたどっているのだ。動物のふりして獣道を歩いても結局、何人もの人が通ったあたりまえの道に戻ってしまう。人は人であり、けっして獣でない。だが、世の中には、獣のように力だけで他の国を打ち負かしてしまう困った大統領と、それに追随するソーリ大臣もいる。
御所谷白谷下降
御所谷は暗い谷。ほとんど日光が入らないような狭い谷底を、石を選び、道を探して下りていく。突然、太陽の光が谷底までさし込んだ。谷がたちまち明るくなった。谷川の流れの音が歌いだしたような気がした。
御所谷のダイモンジソウ
林道から見える石谷川右岸の険しい山肌。あの上を歩いてきたんだな、と満ち足りた気分である。