仙ヶ岳とD−18

南鈴鹿と呼ばれる山々。休日でも登山者は少ない。藤原や御池や御在所が人であふれていても静かな山旅ができる。

山行日 2003年5月17日(土) 霧、曇
コース 大堰堤駐車地--営林小屋跡--御所谷峠--仙ヶ岳--東峰--南尾根--営林小屋跡--駐車地

御所谷から登る

 ナメを越えて御所谷の最後の連瀑帯をすぎるとカマあとが点在する開けた森に入る。登るに連れて水量が少なくなってきた。右に左に支流が別れていく。最後に左に流れを見送ると御所谷の水音は無くなった。何の物音もしない。鳥の声もない。聞こえるのは自分の足音。詰めはジグザグを切ってようやく県境稜線にたどり着いた。汗がしたたり落ちた。一息ついて高度計を780mに合わせる。
そこかしこでギンリョウソウ
 御所平か仙ヶ岳か?どちらに行こうか。シロヤシオはどうだろうか。花見なら仙ヶ岳方面だろう、とすっかり疲れた足をさすりながら県境尾根の急登にとりついたのが午後1時30分。登るにつれてガスは深くなってくる。三重県側は杉の植林。滋賀県側は二次林。色彩の鮮やかさ、華やかさは二次林の方が勝る。新緑の緑色は木によって微妙に違いがある。でも、この深い霧の中では暗い杉林のほうが風情がある。それに林床にはギンリョウソウ。そこかしこにギンリョウソウ。いつもは評判が悪い植林帯に今日は軍配を揚げよう。
 しばらく行くと、以前迷った所だった。そのときは逆コース、山頂から御所平に向かっていた。コースを外れて杉の植林帯の中に入り込んでいったのである。

霧の中

シロヤシオの道
やがて右側の植林帯も終わる。シロヤシオは少し遅かったようだ。木に付いている花は一つ二つ。その代わりに縦走路が白い花で飾られている。白い花は地面に落ちても色が褪せないのだろう。まるでわざと花を撒いたみたいだ。そして、お決まりのようにササが深くなってくると山頂だ。全く展望が利かない。何しろ深い霧で視界が10mあるかないかである。足もと以外何にも見えないのだ。
 腹ごしらえを済ましたらさっさと帰ろうと思っていると、一人の若者がやって来た。彼は大学で植物のサークルに入っているという。足もとのチゴユリを指さしながら山はいろんな花があって良い、と言う。そして、南尾根から登ってきたがイワカガミが見事だったと言うのである。
 ということで仙の石にむけて腰を上げたのが2時半頃。のんびりと出発。しばらくして後ろから足音、青年だった。道を譲ると飛び跳ねるように下山していった。20年前は私もあんな風に
ガスが水滴を呼ぶ
いつも駆けていた。湯ノ山から御在所に登るついでに国見峠を下りて愛知川でアマゴを釣ったり、中道下降30分とか藤原のジグザグ道を突っ切ってまっすぐ登ったり下りたりしたものだった。もし、今あんな体力と時間があれば鈴鹿最奥を駆け回るのにと、ちょっとした落ち葉や砂利にスリップしながらストック突きまくってへっぴり腰で歩いているのである。登山道の崩壊や植生を守るためにもストックはないほうがよいのは分かっている。メインルートがほとんど谷状にえぐれているのはストックで突いた穴が崩れたのだ。でもストックを使わないとへばってしまうのだ。
 仙ヶ岳などの南鈴鹿の山々は御池、藤原、御在所などにくらべて圧倒的に人が少なく、マイナーな存在だ。藤原を知っていても仙ヶ岳を知らない人は結構たくさんいる。知られていないが味わいが深い山だと思う。まず、山に突き上げる谷が美しい。渓谷美は鈴鹿でも屈指のものである。南尾根が一般コースになっているが相当の険路である。その代わりまるで空を飛んでいるような高度感は他の山では味わえない。急峻な斜面なので道を外すとすぐに行き詰まってしまう。
 南鈴鹿には知られていないマニアックな薮山がたくさんある。鈴鹿にあって手つかずの山域がある。一つ一つ登っていこう。
 藤原がD−28 御在所がD−45なら仙ヶ岳はD−18だ。きらびやかさは無いが、暖かいマホガニーのサウンドが持ち味だ。D−28にするか18にするか迷いに迷ってD−18に決めた。手付け金を払ってきた。現在リペア中。もうすぐ手に入る。

南尾根下降

イワカガミ あたり一面
仙の石でからは展望の南尾根コース。しかし、ガスは晴れずに展望は全くない。イワカガミが可憐。 この道は下りより登りに使う方がいいだろう。いくつかのピークを越えて、ザラザラと急降下、不動明分岐そして、ごろごろの谷を下る。遠くで犬の鳴き声がした。野犬に遭ったらイヤだな。子どもの頃、学校の帰りに野犬に追いかけられたこと、走っても走っての逃げ切れなかったこと、そんな記憶が蘇ってくる。下るにつれて犬の声は大きくなってくる。2頭いるみたいだぞ。びくびくしながら歩く。
 そして、岩の壁を滴が落ちているところまできて笑ってしまった。犬の鳴き声はカエルの鳴き声だった。おかしくておかしくて、カエルの鳴き声に警戒していた自分がおかしくて、いつまでも笑っているのだった。
 営林小屋跡に着いたときには足はガクガクだ。駐車地までの林道ではタニウツギが美しく咲いている。前を行く二人組の登山者からは強烈な三河弁。仙ヶ岳もメジャーになりつつあるなと思いながら、春の遅い午後が過ぎていった。

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