遅かったコバの秋〜雨乞郡界尾根から七人山南尾根

約束していた時間に待ち人は来なかった。図らずも単独行になった。一人の山なら大好きなコースをとって二次林に埋没してみたくなった。

山行日 2004年11月3日(火)晴れ 雲多く風強い
コース 武平峠西側駐車場8:15---沢谷峠9:00---(郡界尾根)---1014P10:00---雨乞岳東峰10:40---七人山11:10---南尾根末端(クラ谷)10:40---郡界尾根12:00---沢谷峠12:20---駐車場12:50

茨谷取り付き

 茨谷から斜面に取り付くとはっきりとした道ができていた。ひと登りで尾根にでると冷たい風が吹き渡る。大きな木が根こそぎ倒れている。この前の台風のせいだろう。郡界尾根に乗るまでしばらく急登が続く。でもずいぶん歩きやすくなっている。来るたびに道らしくなっている。でも、あれほどあったテープの類はかなりはずされていた。このコース、ずいぶん一般的になってきたが、一般道じゃないから天気によっては道迷いの可能性もある。尾根をはずさぬように高度計とコンパスと地図を確認しながら歩くべきだろう。だが、例によって地形図を家に忘れてしまった。古いエリアマップしかない。等高線が読みにくい。

郡界尾根を行く

 郡界尾根に乗ると境界を示す杭が打ってあるのですぐにわかる。木の幹にマジックで「いっぷく峠」と書いてあるが、このネーミングは定着していないようだ。ここで右にとれば御在所南西尾根。玄人好みの渋いルート。左にとって、はっきりとした道を行く。右下から話し声が聞こえてくる。一般道はこの尾根に平行して100mほど右下にあるはずだ。郡界尾根に乗ったら左側に注意して歩く。沢谷峠への右折を見逃さないためだ。左側下方へのびているササ付きの斜面が郡界。主尾根は直進しているが直進すると一般道に出てしまう。間違いやすいところだ。
 下りきったところが沢谷峠。スカイライン側にはススキの原、そうして鎌が堂々とそびえている。反対側は緩やかな斜面に葉を落としかけた二次林が広がるコバだ。ここからははっきりとした尾根を登っていく。冷たい風が吹くたびに木から葉っぱが舞い落ちる。突然、ぴーっと鹿が横切った。和歌の世界である。足元に鹿の白骨が散らばっていた。
 967P手前は道迷いしやすそうな所だ。注意していないと南西の尾根に進んでしまう。登るときも降るときも迷いやすい。はっきりと右に曲がるつもりで高みへ歩く。このコースは鎌を後ろに背負っていれば間違いはない。このあたりも二次林がいい感じである。以前はふかふかの天然カーペットの尾根道だったのに、安物カーペットぐらいになっていた。歩く人が増えて押されてしまったのだろう。
郡界尾根1014P付近の秋
ちょっと遅かった
 登ったり下ったりしているうちに三人山のコバ(いいないいなのコバ)に着く。のびやかで静かな森。盛りを過ぎてしまった紅葉だが、ほとんど葉を落としてしまった梢が青空に清々しい。風が吹く度に散り遅れた葉が舞う。まるで降ってくるように舞う。晴れ時々ブナの葉である。紅葉がピークの時にまたここへ来よう。燃える秋を見せてくれるだろう。新緑の時もまた来よう。萌える命を見せてくれるだろう。ここで一休み。ゆっくりとお茶を飲み、みかんを食べる。静かだ。今日は誰も来ない。以前雪の日にここへ着た時に道迷いになった。ガスで雨乞岳が見えなかったのだ。視界が利けばすぐそこに見えている東雨乞へ向かって歩けばいいのだが、ガスや雪で山が見えない時は尾根づたいに東進してしまいクラ谷へ迷い込んでしまう。天気が悪い時、東雨乞へは「1014ソノ二」と書かれた木を探すのだ。その木の所から下って北進する。
 いったん下って鞍部から頂上の笹原までしんどい登り。でも、相変わらず雰囲気のいい森が続いている。七人山がすっかり葉を落として茶色の優しい曲線を見せている。鈴鹿山脈の主役たちが堂々とそびえているその裾でひっそりとたたずむ七人山が穏やかだ。尾根芯をはずさないように登っていくといつしか笹原の中の道となり程なく山頂へ飛び出した。360度のパノラマ。本峰や武平峠道から登山者が次々と登ってくる。風が強い。長居は無用、降りよう。

七人山へ

 笹トンネルの中は狭くて暗くて湿っぽい。我慢できなくなって笹トンネルから脱出、笹原の斜面を七人山コルに向かってバギバギと転がり落ちていく。七人山コルを走って通過。そのまま森の中を登って一息ついた。この山のたたずまいを何と表現すればいいのだろう。静かで穏やかでひっそりとして落ち着いた山だ。葉を落とし、明るくて伸びやかで秘めやかで、、、、鈴鹿に数ある山のなかで七人山が一番好きだ。目を閉じれば葉が気から離れる音が聞こえてきそうな、こびとがそっと出てきそうな童話の世界。「森の木陰でドンジャラホイ」少し不気味な感じもするのは、西尾本の怪談話の舞台も程近いからか。
 「七人山」と記したピークとおぼしきブナから東進約400m、そしてそこからクラ谷に向かって南に張り出した尾根を歩いていく。この南尾根が今回の山行のハイライトだ。すばらしい森が広がっている。積んであるケルンも苔むしていた。ほとんど人が来ないのだろう。どんどん南に歩いて、急になった斜面を滑り降りるとクラ谷の沢音が聞こえてくる。谷は今が紅
七人山南尾根の秋
葉の盛り。谷の中の葉は台風にも耐えたのか、いっぱいの黄葉、紅葉であった。
 クラ谷から再び郡界尾根へ戻る。ほんのひと登りで1014Pと967Pの間の鞍部に達する。ここからの七人山は樹間にまあるく見えて優しい表情である。
 来た道を戻る。自分の人生も半分を過ぎて戻り道かな、と思いながら疲れた足を引きずって歩いていると突然目の前に、鎌が現れた。そのあまりに堂々とした山容に恥ずかしささえ感じながら、朝歩いた尾根をたどっていた。

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