8月の本棚 ■照り返しが強いぞ〜。
『いちげんさん』◆デビット・ゾペティ◆集英社文庫◆ 一覧に戻る
1996年第20回すばる文学賞受賞作品。
巻末の解説にも書いてあるように、この本を読んだ後に作者を「外国人」と呼ぶのはふさわしく
ないのはわかってるんだけど、それにしても流れるような日本語。日本人が忘れかけていた言葉。
日本人が気づかない日本という国。
舞台は京都。留学していた僕がボランティアで盲目の女性京子に小説の読み聞かせをすることに
なり、急速にふたりの心は接近していく。
1999年の京都映画祭で鈴木保奈美さん主演で上映されましたが、盲目の主人公京子をどう
演じたのかとても気になります。脱いだとか脱がないとかそんなことはどうでもいい。
限られた世界に生きるふたりが自分がナニモノであるかを問い、どんな答えを出すのか。
それが映像になった時にどう表現されるのか。そういうことです。
読み聞かせのシーンがゾクゾクします。本好きにはたまりません。
『GO』◆金城一紀◆講談社◆ 一覧に戻る
私の実家の近くには朝鮮学校がある。女生徒は例外なくチマチョゴリの制服をきちんと身につけ、
清楚で凛としていた。当時ドブネズミ色の制服を着ていた私はあの制服に憧れた。
今でも不思議に思うのは女の子たちは一目瞭然なのに、はて?男の子たちはどこに潜んでいた
んだろう?どんな制服だったのかもわからない。
『GO』は《在日》である僕が日本人の女の子と恋に落ち、毎日向かってくる敵をバタバタと
倒し、そして数少ない友人と過ごした日々を綴ったものだ。
内容もさることながら装丁もカッコイイ。
↑上に紹介している『いちげんさん』の「自分はナニモノか?」という問いが『GO』にも
出てきます。国によって違いもあるんだろうけど…いや、これは個人の問題か。
冒頭の『ロミオとジュリエット』からの抜粋。まさしくコレだ。
・名前ってなに?
バラと呼んでいる花を
別の名前にしてみっても美しい香りはそのまま
ラストシーンを読んで「あぁ、あの男の子たちが朝鮮学校に通っていた男の子たちだったのか…」
と思い当たりました。「日本」という国の名前の意味すら知らない日本人!意味のない差別なんか
してる場合じゃないぞ。
『P.I.P. プリズナー・イン・プノンペン』◆沢井鯨◆小学館◆ 一覧に戻る
すごいすごいと『本の雑誌8月号』で北上次郎さんがホメテたんで読んでみましたわ。
作者の沢井鯨さんは97年紛争後の混乱のプノンペンでいわれのない罪で逮捕されて懲役12年の
刑を言い渡され、なぜか半年後に釈放されました。…で、この作品はその時の経験をもとに書かれ
たそうなのですが…。
あぁ、どこまでがホントでどこまでがフィクションなんだーっ!
私の古くからの友人が結婚してしばらくプノンペンにいたんだけど、こんなとこでよく新婚生活を
送ったもんだ。すごいぞ、たごさく。
とにかくカンボジアではだ〜れも信じられないんだってよぉ。警官も検事も子供も大人も誰も。
しかし、帯に「前代未聞のアジアン・ミステリー」ってあんのよ。
ミステリーなのか?前代未聞は認めるが。
私、結婚して7年になりますが、未だにダンナがうんうん唸ったあとにトイレに入るとオエって
なっちゃうんですね。プノンペンの拘置所には絶対入らないぞ、と心に決めたのでした。
メシ時にはオススメしませ〜ん。
それにしてもこんなにカタカナの名前ばっか出てくる小説、よく読んだなぁ。
面白かったってことか。
『依頼人は死んだ』◆若竹七海◆文藝春秋◆ 一覧に戻る
ふぅ。
前にこの作者の本を読んだ時も感じたんだよなぁ。>『プレゼント』
表紙のイメージと小説のイメージがどうしても重なってくれない。
女探偵・葉村晶をとりまく事件の数々。シリーズ物です。
前回はそーんなに魅力を感じなかった主人公がこの作品でいい方向に向いてきました。
わたしはもうすぐ二十九になる。
無能とまでは思わないが、有能というほどでもない。
不細工とは思わないが、平凡な容貌だ。(帯から)
そう、恐らくどこにでもいそうな女性なんでしょう。見た目は。
しかし、彼女の内に流れる冷たいナニか。
この作者はゴタゴタと説明するということを嫌っている。
だからきちんと読まないとせっかくのどんでん返しが色を失うという危険をはらんでいる。
連作短編集。季節毎の9つの物語。
人物がこれだけうまく描かれているのに季節が感じられない。季節毎の副題はどうしても必要
だったのかなぁ…。
『鞄屋の娘』◆前川麻子◆新潮社◆ 一覧に戻る
あれ?作者の名前、小説に出てくる女の子と同じ名前だ。
本当のことを言うと最初の何ページかは「最後まで読めないかも」と不安だったんです。
家族をもとうとしなかった父・宏司。ミシンを走らせ帆布で鞄を作る。鞄屋の主人。
家族をもつのが怖かった娘・麻子。父のミシンのダダダという音の記憶。鞄屋の娘。
麻子の生き方にも興味を覚えたが、それより宏司だ。事情のわからない人から見ると「家族が
いるのに浮気なんぞして新しい家族を作ったくせに、やっぱりそこからも逃げてしまった男」
ってことになるんでしょう。
でも誰も宏司を憎めない。自分たちを捨てていった男なのに、なぜかどうしても憎めないのだ。
物語は静かに始まり静かに終わる。
主人公だけでなくあらゆる登場人物を丁寧に描き、それぞれでもう1冊描いてほしいような。
第6回小説新潮長篇新人賞受賞作。装画は林静一氏。きれいな本です。
『海辺の生き物 ヤマケイポケットガイド16』◆小林安雄◆山と渓谷社◆ 一覧に戻る
せっかく暑くてたまらんので目だけでも涼しくなればと図鑑を買いました。
その名の通り海辺にいる生き物の図鑑です。
山と渓谷社のポケットガイドシリーズは何度も言いますが本当に写真がキレイ。
「生息環境/海域」「見かける状態」のインデックスがついていてとっても見やすいのです。
海にはいろんな生物がいるけど、この図鑑に出ているウミウシの仲間たち!
く〜〜〜!!すんばらしいっ!
■■■←こんな色したニョロニョロのタマゴ産むアメフラシ。
黄色に真っ白なトゲトゲを持つイガグリウミウシ。
深い海の中で光りも届かないような場所で何故こんなにキレイな色をしてるんだ?
昔、父島に行った時に見つけたヤドカリも発見。>ムラサキヤドカリ
あぁ、バフンウニがうまそうだーっ!(見るとこ、ちょっと違う)
『古書店アゼリアの死体』◆若竹七海◆光文社◆ 一覧に戻る
タイトルはとってもいいと思ったんだけどなぁ。
相澤真琴はいつかやってみたいと思っていたことがあった。
「海に向かってバカヤローッ!」と思いきり叫ぶという夢が。
東京でリストラされ、憂さ晴らしに泊まった豪勢なホテルの火災、円形脱毛症、おかしな
宗教の執拗な勧誘。東京から逃げた真琴にとうとう夢を叶える時が来た。
「バカヤローッ!」
でも海から返ってきたのは青年の死体。悪いことって続くのね。
そこから話は始まります。
舞台はかなりクセのある老婦人・紅子が経営する古書店。
いろんな本の名前が出てくるんだけど、ロマンス小説ばっかり。巻末で紅子さんが本文に
出てきた本の注釈を書いてます。
そこらへんの試みはとっても面白いんだけど、推理小説としてはちょっと物足りなかったな。
登場人物が多すぎるよ。誰が主人公なのか誰が謎を解いていくのかがハッキリしない。
人物の動きに無理があるので、なんとなく小説の中に入り込めない。
高校時代に隣りのお寿司屋の女将さんから借りて読んだ赤川次郎っぽい。
…なんて書くと赤川次郎ファンに怒られるかな。
『あやし 〜怪〜』◆宮部みゆき◆角川書店◆ 一覧に戻る
久しぶりの宮部作品。今回は江戸時代の奇談小説です。
■居眠り心中■影牢■布団部屋■梅の雨降る■安達家の鬼■女の首■時雨鬼■灰神楽■蜆塚
の9篇。
人の心の中に潜むナニカ。その存在を宮部さんはじっくり描いています。
時代物と言っても江戸時代に限らず今の世でもありそうな話。
だから余計にゾクッときちゃう。
夏の夜にクーラーなんかつけずに窓を開けて布団の中で読むのがいい。
電気を消して眠るのが怖くなります。なんだ眠れなくなっちゃうんじゃないか。
いや、日本の夏は寝苦しいモノと決まってます。どうせ眠れないんなら朝まで自分の後ろに
いるナニカとそっと語り合いながら過ごすのもいいではありませんか。
『死神』◆清水義範◆ベネッセ◆ 一覧に戻る
思いがけず大物俳優の臨終に立ち会った二流役者夫婦。
有名人の死によって役者としての運が変わっていく。
斎藤昌治が役者としての「斎藤昌平」になり、斎藤兼子が「御倉寿々子」になった時、彼等には
目に見えない台本が用意されてしまう。葬式でのインタビューで役者はVTRを見直して「よし、
台本通りだ。」とホッとする。
そうやって見ると中村メイコと神津善行夫婦、森繁久弥が面白い。
有名人の葬式で必ずと言っていいほど登場し、私たちは「あぁ、やっぱり出てきた」と安心したり
して。
大きなどんでん返しもなく、どこにでもある話が続く。
でも物語のあちこちに「本音」が出てきてドキッとしちゃうんだよな。
ブラックユーモア。
『はじめての野菜づくり』◆荒木雅彦 監修◆成美堂出版◆ 一覧に戻る
出窓でアボガドを育てています。
実はもう2カ月近く画像入りで日記もつけてます。
ホントはすぐに芽が出て、芽が出た時点で公開しようと思っていたんですが、2カ月たっても変化
なし。
腐葉土もいっぱい買ってきちゃったし、それなら他のモンも蒔いてみようと「スイカ」を蒔いてみ
ました。スイカはすぐに発芽し、面白いようにぐんぐん育っています。
しかし。
タネを蒔く前にこういう初心者向けの本を買うんだった。
人の言うことをもっと聞いておくんだった。
蒔き時は春・・・・。ここに出てる表から考えるとうちのスイカの花が咲くのは晩秋。
冬のスイカ・・・・。どーすんだよ。まぁ、そのうち公開しますが。
とにかく美味しい野菜を作るには小さい鉢植えなんかじゃダメなんだな。うぅ。
野菜の育て方だけでなくジャムや漬け物・ピクルスの作り方も紹介。
げっ。キュウリのジャム??まさか顔に塗るんじゃあるまいな。
『孕む』◆久美沙織◆イースト・プレス◆ 一覧に戻る
うわ〜。なんだ、この後味の悪さは。
なんだろう、私が女だからかな。男の人が読んだらどんなふうに思うんだろう?
表題作の「孕む」はいきなり雉をトッ捕まえてそいつをさばいて料理する。
それはあまりにも人間臭い場面。
電話の音とともに舞台はインターネットへと飛ぶ。それもまたある意味、人間臭い。
そして孕むのである。あぁ、なんて生臭いんだろう。
「犬つなぎの木」はたった7ページの短編。
7年間同棲したカップルがいて、今日は男が初めて女を実家に連れていく…という話。
男の気持ちは7年前から決まっていて、女の気持ちは今日1日の一瞬で決まってしまう。
「約束の指」は岡本千草が産婦人科で小学校の同級生の鹿本亜由美にばったり遭う。
学級委員でキラキラ輝いていた千草と地味で陰気だった亜由美。
ほら、この設定だけでちょっとイヤな感じがしませんか。
「献身」。愛して愛されて始めたはずの結婚生活。間違っているかどうかなんて当事者でさえも
わからなくなってくることがある。引用文献多すぎたかな?
祖父母に育てられたジュンが本当は母親はあんたを産むときに死んでしまったけど父親は生きて
いると告げられ安易な非行の道に走り、今度はいきなり見たこともない父親の元に預けられて
しまう。
「森の王」。父親と10歳の息子との生活が生き生きと描かれている。まるでテレビドラマ
「北の国からみたいに。しかし、ある日突然男が現れて…。いやぁ、そんな展開になるとは。
「願い事は慎重におし」。魔女はそう言ってのろまで怠惰で不注意な女の子リミスのことを語り
だした「REMISS」。なんだかな。どんどん短編を読み進めていくうちに飽きてきたぞ。
う〜。
「王子と乞食 #273」はおとぎ話の王子と乞食が入れ替わっちゃって…って、あの物語ですな。
16歳の若さで人生に絶望し死を決意した少女・ノコの前に現れたのは彼女とうりふたつのマコ。
命を失うその瞬間、私も16歳だったら同じことを考えたかもしれないな。
でもこれもギリギリだ〜。
短編集のラストを飾るのは「魔王さまのこどもになってあげる」。
感想ねぇ…。この作者『小説ドラゴンクエストVI』なるものを書いてらっしゃるんですね。
私のまったくわからない世界です。短編なのに最後まで読むのがつらかったっす。
なんとか全編読み終えましたが…。ふがふがふが。
帯で新井素子さんが大推薦してらっしゃいます。わかるような気がするわ。
この本ね、活字が真っ黒じゃないんですわ。■←こんな色。わかるかな。コーヒー豆っぽい。
中に手間かけるなら装丁にもっとセンスを注ぎ込めばいいのに。あぁ、なんか私、怒ってる。