8月の本棚 ■暑いと先に進まないのよぉ。
『清水義範の作文教室』◆清水義範◆ハヤカワ文庫◆
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毎週、読書感想なんぞを書いていますが、この1冊は「書く」と言うことをあらためて
考え直すいい切っ掛けになりました。
先月読んだ『蛙男』の著者、清水さんは弟さん(名古屋在住)が経営する塾で作文の教室をや
っている。名古屋に行って教えるというのではなく、塾の生徒が書いた作文をFAXで東京に
いる清水さんに送信し、それを添削する、というものである。清水さんは「東京先生」である。
子供の作文が素晴らしい。特に小学校6年生の広岡麻千子さんの作文がとてもいい。
タイトルが魅力的。
「へんな若松」「昔アパートだったころのトイレ」「はらのたつ、ぼうさん」
タイトルだけでなく、作文もぐいぐい読ませてくれる。
東京先生のアドバイスにもハッとしてしまう。そうか。作文はこうやって書いていくものなの
か。東京先生も忙しそうだが、きっと死ぬまで作文教室続けていくのではないか。
子供はいつか大人になる。その境目が面白い。
『生死半半』◆淀川長治◆幻冬舎文庫◆
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黒澤監督の葬儀で「すぐに後からついてくよ」と言った淀川さんが2カ月後の98年11月に
本当に逝ってしまいました。
誰よりも映画を愛し、誰からも愛された淀川さんは20年も前から自分がいつ死んでもビックリ
しないように「来月の3日に死にます」とあちこちで挨拶していたようです。
「生の延長線上に死があるとはどうも思えません。人間の中には生きることと死ぬことの両方が
半分ずつあるように思えるのです。」そして「生死半半」。
映画の試写会で「あれ?いつの間にか淀川さん、映画見ながら死んじゃった」とそんな死に方を
したいといいつつ、上映中に他の人に気づかれたら試写が中止になってしまうかもしれない、
なーんてそんな現実的な心配をしてしまうんですね。
他のじーさんに言われればただの説教臭いコトも淀川さんの生前の語り口を知っている人には
言葉のひとつひとつがココロの中にスーッと入ってきます。
もちろん「映画の人」だから、ところどころに淀川さんが好きな映画の話も出てきます。
『駅馬車』という映画は当初『地獄馬車』という邦題だったのを、淀川さんが猛反対して
『駅馬車』になったそうな。昔、ビデオで見た時はそんなこと考えもしなかったんだけど、
淀川さんのエッセーを読んでもう一度見たくなりました。『太陽がいっぱい』も見たい!
『Shall we ダンス?』◆周防正行◆幻冬舎文庫◆
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映画の「Shall we ダンス?」の小説化。原作かと思ったら違うんですわ。
既に映画の方は何度も見て、私の好きな映画の一つになっています。
原作と違うのはラストシーン。その直前までは映画とほとんど同じです。
登場人物の設定は映画のまま。だから読んでいて、杉山課長は役所広司さん、ハゲの青木は竹
中直人さん、ボンレスハムの豊子は渡辺えり子さん、ヒロインも脇役も映画の配役が頭に浮かぶ。
映画もよかったけど、ラストシーンの違う小説もいいんです。
映画でどこまで描けるかわからないけど、小説の方のラストシーンも映画で見たい。
画像としては少し地味になるかもしれません。でも登場人物の心の動きや接点という観点から
見ると、映画より小説の方がよりリアルに描けているような気がします。
まだ映画を見ていない人は映画を見てから、映画を見た人は素敵なラストシーンの小説をどうぞ。
「小説」としてはすごくうまいってほどでもないけど、周防監督の『Shall we ダンス?』
に対する愛情で、時にはニヤリとし、時には泣かせてくれるいい作品に仕上がってます。
『社長物語』◆薄井ゆうじ◆講談社◆
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そのまんまのタイトルですが。
いつもの薄井さんの作品とはちょっと違います。
薄井さんのプロフィールを見ると、この本はかなり実体験に近い物語ではないかと。
フリーのイラストレーターである主人公の森田さんが、一緒に仕事をしている集団「鮮酔館」
の仲間が病気になったり、取材中に行方不明になりかけたりした時に、なんの保障もないこと
に気づき「株式会社」を設立することになるが…。
社長は孤独。どこの会社でもそうなのかもしれないけど、自分がトップになりたくて会社を作った
森田さんにとって、孤独でいることになかなか慣れることが出来ない。
帯にもあったけど「銀行は預けるのではなく借りる場所」「見習いを雇えば負担になる」
「どんな結論でも1分で出すべし」など具体例満載。
でもこの帯の紹介は不要だな。
薄井さんがどんな人たちを対象にこの本を書いたのかわからないけど、これは立派な恋愛小説。
多角関係の恋愛小説。一角は妻であり、一角は社員であり、会社であり、取引先の人だったり。
だから「すべてのビジネスマンに贈る」なーんて紹介してほしくない。
何度か涙が出た。森田さんが涙を流してしまった分だけ、私も泣いた。
私も「株式会社サブマリン」で働きたい。(…な〜んて書くとうちの社長イヤな顔すんだろな)
『波の上の甲虫』◆いとうせいこう◆求龍堂◆
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いとうせいこうさんの作品(?)の中で一番好きなのは何年か前のシティボーイズのライブでの
台詞。「渋谷の東急ハンズの店員は態度が悪い」←ボソッと。
しかし、本もなかなか面白いの書いてます。『ノーライフキング』なんて小学生の間に流行った
ゲームのこと書いてんだけど、いつの間にか自分も本の中に存在するような感覚に陥ってしまい
ます。
…で『波の上の甲虫』。
物語はある人物の手紙から始まります。南の島からの手紙。ところどころに南の島の珊瑚や貝、
魚の写真が現れます。
ハッキリ言って、物語の結末は前半でわかっていました。わかっているのに何故かじっくり読
んでしまいました。頭が混乱しました。そして最後にキュッと心臓を掴まれるような。
主人公は一体どこに行ってしまったんでしょう。
本当は主人公は「いとうせいこう」本人ではないのですか?
装幀がいいです。坂本志保さんという方ですね。
真っ青な海に白い波。
でも私は南の島へ行くのが少し怖くなりました。
『日本のこころ』◆編集・日総出版◆発行・新紀元社◆
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昭和58年12月第15版第1刷発行。
実は私の会社の会長(70歳)と一緒にカラオケに行ったときに、山本リンダも内田あかりも
知らないっちゅうんで、実家のおっとうに頼んで送ってもらった、いわゆる「歌本」です。
すごいよ〜。1023ページもあるんだもん。
アイウエオ順になってまして、トップの曲が「あぁ、上野駅」。おぉ、井沢八郎だ。こんなの
会長がわかってもわしが知らんわい。
んで、ラストの曲が「ワン・レイニー・ナイト・イン・東京」。ぎょえ〜。アントニオ古賀先生
じゃんかよぉ。あの人って、ギター弾いてるだけじゃなかったの〜?
これはタイトル見てるだけでも笑えます。笑うために送ってもらったんじゃないけど。
「あなた」ってつく歌がいっぱいある。
「あなたが港町」「あなたにあげる」「あなたに片想い」「あなたの女にしてくれますか」
「あなたの妻と呼ばれたい」「あなたの妻になりたくて」「あなたまかせの夜だから」
西川峰子の「あなたにあげる」しかわからないや。ま、この一曲わかれば十分か。ちっ。
『ぼくの人生案内』◆田村隆一◆小学館◆
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詩人の田村隆一さんの93年5月〜96年7月まで「マガジン・ウォー!」に掲載された人生
相談を元に加筆再構成された1冊。
70年以上も生きてきた筆者が若造相手に「人生」を語ります。
女性を前にすると必要以上に緊張してしまうという18歳予備校生に「女性っていうのはつくづく
恐ろしい生き物なんだ。だって人間を産んじゃうんだぜ」「その緊張を持続させることの方が、
これからはたいへんさ。」と言い放つ。
く〜〜。かっこいい〜。
悩んでいる若造をビシバシぶった斬り、それでいながら繊細。やっぱり詩人だなぁ。
残念ながら98年9月に天国へと旅だってしまいました。
あの世ではもう死ぬことなどないから生きていた時以上に大好きなお酒を飲んでらっしゃること
でしょう。
下町のダンディズム。
宇野千代さん、淀川長治さん同様、田村さんも死なないと思ってたんだけどなぁ。
『宇宙のみなしご』◆森 絵都◆講談社◆
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私は屋根にのぼったことがない。小学校5年生までアパート住いだったし、引っ越してからは
のぼれる屋根のあるような家じゃなかった。
でも、ホントはあったんだな。自分ちじゃなくてもよかったんだね。
彼らは知らない家の屋根にのぼってたんですな。
陽子とリンは仲の良い姉弟。二人は忙しい両親のいない間にいろんな遊びを思いつきます。
真夜中の屋根のぼりも、その秘密の遊びの一つ。
秘密にしていたはずなのに、いつの間にかクラスメイト(と言っても喋ったこともないような)の
七瀬とキオスクが屋根のぼりに加わってしまいます。
登場人物の中で一番の変化を見せるのがキオスクという少年。
給食当番、日直、トイレ掃除。なんでもやらされてしまうような、おどおどした少年にいらつ
きながらも、陽子はクラスで唯一言葉を交わす存在。
その少年が自殺に失敗して登校拒否を起こして…。
こそばゆいなぁ。中学の時にコレ読んだらどう思ったかなぁ。感動しました、なんて言っちゃった
かも。
少年少女の心がつながってゆく過程がジンときます。
ちょっとしか出てこないけど、物語の中で重要な意味を持つ言葉を元の担任のすみれ先生が
いいこと言ってる。
「ぼくたちはみんな宇宙のみなしごだから。ばらばらに生まれてばらばらに死んでいくみなし
ごだから。自分の力できらきら輝いてないと、宇宙の暗闇にのみこまれて消えちゃうんだよ」
『ちびくろさんぼのおはなし』
◆へれん・ばーまん作・絵/なだもとまさひさ訳◆径書房◆
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誰もが知ってる『ちびくろさんぼ』の原作本が「ちびくろさんぼ生誕100年」の記念に出版
されました。日本では原作者の絵を載せた本は刊行されてなかったんですね。知りませんでした。
差別本として、突然私たちの目の前から消えてしまった『ちびくろさんぼ』。
カルピス社の可愛らしい不思議な動物も、タカラ社のダッコちゃんも、このややこしい問題が
起きた途端に市場から消えていきました。
ここでは差別問題をあーだこーだ言う場ではないので、あえて触れないでおきたいと思います。
純粋に『ちびくろさんぼのおはなし』を読んだ感想です。
私が手にしているのは縦13センチ、横8センチの小さな絵本です。
子供のてのひらにおさまる小さな絵本。こんなに小さくても中身は充実してます。
ちびくろさんぼから奪い取った洋服や傘をそれぞれ身につけている虎。
マヌケで可愛いよぅ。
子供の頃にも読んでますが、当時、読むたびにバターをたっぷり入れたホットケーキの匂いが
してきたような気がしてソワソワしてしまったのを覚えてます。
もちろん、今読んでもホットケーキが食べたくなっちゃうんだよなぁ。
あぁ、虎がぐるぐる回って出来たバター食いて〜〜〜っ!
『田舎の事件』◆倉阪鬼一郎◆幻冬舎◆
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平野甲賀さんの装幀とさそうあきらさんの装画に惚れて買いました。
テレビのサスペンスなんか見てると、どんな場所にも警察関係の方がいますよね。
あれはテレビだからであって、現実には田舎に行けば行くほど犯人を追う人がいない。
「探偵なき村落を犯人だけが走る!!」
とにかく犯人だけが突っ走ってます。
田舎で起こった13の事件。
91年から99年の何年かの間に書かれたモノだからかなぁ。
面白い話と、全然わからない話があるんです。全然わからない話は読んで1日たったら
内容すら思い出せない。
好きなのは94年の作品、ニセ東大生が殺人犯になってしまうという「銀杏散る」。
帯の推薦文は有栖川有栖さん。小説は読んだことないけど、ちょっと褒めすぎかな?って
感じもしますが。
あんまり笑える笑えるって書くと、人間、笑えなくなるもんでのぉ。
推薦文がなければ、あとワンランクくらい評価があがったかもしれないなあ。
『アゲイン』
1〜6巻◆楳図かずお◆秋田書店◆
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久しぶりのコミックです。実は楳図かずお先生を崇拝していながら『まことちゃん』の
原点となった『アゲイン』をまだ読んでなかったんです。そしたらうちのHPに来てくれてる
「めじ」さんがド〜ンと全巻プレゼントしてくれたんですね〜。こーゆーことが
あるからHPってやめられないよなぁ〜。
『アゲイン』はまことちゃんの祖父である元太郎じーさんがひょんなコトから若返りの
クスリを飲んでしまい、一夜にして高校生の体になってしまう、というところから物語は
始まります。
元太郎じーさんがかっこいいんだわぁ。体は高校生でも頭ん中はじーさんのままなんだけど、
とにかく元気なんだな。最初から最後まで全力疾走。今夜はココまで読もう、なんて決めたって、
元太郎が許してくれません。
校内マラソン大会コミック。おらおら、たらたら走ってんじゃねぇぞーっ!と元太郎の声が
聞こえてきそうです。
『去勢訓練』◆いとうせいこう◆太田出版◆
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「壊れたセックスでしかイケない壊れた恋人たち
五つのエロティックな夜を描いた短編小説集」(帯より)
どうです?こんな帯、つけられたら読まないワケにはいかんだろ。
しかもわしの好きないとうせいこうさんだ。
へー、エロ本も書くんだ〜と思って、本棚から抜いて手にしてみるとそこにはエロティックな
物体が…。ジッと見れば見るほど…。あぁ、もうダメ。ヘソしかわからんわい。
おっと、感想ですね。失礼しました。
確かにせいこうさんは好きなんだけど、エロ小説としてはあと5ミリってとこですね。
今ひとつ、ナニかが足りない。団鬼六師匠と比べちゃいけないな、あの人はもともとエロ作家
なんだから。
なにが足りないんだろう。経験かなぁ。文章はいいと思うんだけどなぁ。あの髪型がいけない
のかなぁ。
冒頭の「性交写真」は台詞の部分だけ太字になってて、これが妙にいやらしい。活字に
なったエロの醍醐味を堪能できます。立ち読みするならココだけでいいや。3分で読み
終わるから。
でも太字のとこだけ拾い読みするともったいないよ。
とりあえず立ち読みで太字のとこだけ読んで、買って帰って全文読み直しましょう。
1作品で2度美味しい。使い方によっては何度も美味しいかも。ふふふ。
『花のあと』◆藤沢周平◆文春文庫◆
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お友達のぐいんちゃんに本を貸したら返ってきた箱の中に時代小説が何冊か入ってまして、
早速読ませていただきました。持つべきモノは友達ですな。
この「活字中毒」の本棚には時代小説があまり出てきません。…というのは苦手なので
はなく、読むとはまってしまって身動きが取れなくなりそうな気がするからです。
『花のあと』は七篇の短編集です。江戸の人情モノにちょっとミステリーをプラスした
短編でも読みごたえのある作品となっています。
「花のあと」は以登という剣の道に生きた武家の娘の恋のお話。以登は恋に気づかずに
のめり込んでいきます。父親に似て口が大きく、目尻もつりあがっているのを気にして
いたんですが、江口孫太郎という若者がそんな以登の風貌など気にせず、剣の相手として
同等に接してくれたことが以登には嬉しくてたまらない。
…しかし。この恋は二人が恋と気づく前に。
だからといって、以登が不幸になってしまったワケではなく、運命のイタズラとでも申
しましょうか。
私自身も春に咲く桜には思い入れがありまして、ちょっと涙ぐんでしまった作品でありました。
『ゴミを宝に!』◆チチ松村◆光文社◆
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おっと、これも南伸坊さんの装幀だ。
朝日新聞大阪本社発行の夕刊に96年4月〜99年3月まで連載されたコラムが一冊の本と
なりました。
チチ松村さんというのはゴンザレス三上さんって人と「ゴンチチ」を結成して、ギターを
ひいてるんですね〜。ホントはとってもすごい人なんだけど、チチさんに本を書かせると
な〜んかとっても可愛いオジサンになってしまうんですね〜。
チチさんはどこ歩いていてもゴミが気になって仕方がない性格のようです。
ゴミと言っても、今の世の中、まだまだ使えるモノをどんどん捨ててますからね、中には
お宝になるようなモノがいっぱい埋もれているんです。
それを探し出すのがチチさん。…いや、探し出すんじゃないな。ゴミの方から拾って〜って
チチさんに発信しているようです。
驚いたコトに、チチさんは自分の商売道具であるギターまで拾ってきちゃうんです。
そのギターで作曲をし、また拾ってきたギターを粘着テープで修理して、弦を貼り替え、
そのままコンサートで使っちゃってるんですね。偉い。
これからもどんどんいろんなモンを拾ってきてほしいんだけど、きっと奧さんに煙たが
られちゃうんだろうな。私が奥さんだったらお宝用にマンション借りてあげるのに。