12月の本棚 ■外より家の中のほうが寒い。
『子作り爆裂伝』◆室井佑月◆飛鳥新社◆ 一覧に戻る
別にこれから子作りに励もうとかそういう理由ではなく、著者の室井佑月さんが好きだから
購入。好きって言っても『Piss』はいいなぁと思ったけど、次に読んだ『血(あか)い花』は
ちょっと私の嗜好には合わなかったんだわな。
最近よくテレビでみかけるようになって、特に朝の「とくダネ!」のゲスト出演は楽しみにして
おります。番組の途中でいきなり司会者の小倉氏にコメントを求められると、一瞬「あ、全然
聞いてなかった、やっべー」って悪ガキみたいな顔をするのがいいのです。
子供が嫌いだった室井さんが子供を作ろうとしたきっかけは「猿」。
性格の合わない夫婦が「ふたりきりでは寂しい」とペットを飼おうと決めた時、たまたま居合わせた
室井さんのお母さんが「寂しいんなら子供を作りなよ」と提案。
私も子供は嫌いです。もうすぐ四十路に突入しますんで、さすがに子供は作らないの?と聞かれる
ことはなくなりましたが、少し前までは聞かれるたびに「子供は嫌いなんですよ」と答えると、
「なんで?こんなに可愛いのに」とか「絶対年を取ってから寂しくなるよ」とか言われて、子供が
いないってだけでダメ出しされてるような気分になってました。
子作りに励んではいたものの、元から生理不順だった室井さんは、妊娠していると気づかず、
タバコはばかばか吸うわ、風邪薬だってのんでしまいます。しかもタレントをしていた頃に
事務所の社長にすすめられて、おっぱいに食塩水も入れてます。
不安を抱えつつも彼女の頭の中にはもう産むという選択枝しかなくて、医者に「緊急流産」という
診断を下された時も、病院を変えるという手段に出ました。いくつ目かの病院でやっと信頼出来る
看護婦さんや助産婦さんと出会い、「あなたは大丈夫。顔を見りゃわかるわ」と太鼓判を押された
時は、今までの不安も吹き飛んだのではないでしょうか。病院側のこういう一言って、とっても
大事。
この爆裂伝の中で一番面白かったのは(面白がってはいけないのかな)巻末の「おまけ」。
「あとがき」の後に室井さんが書いた文章です。
幸せな子作りの記録かと思いきや…人ってわからんもんですねー。
ラストの「生きていくぞ」のイラストにエールを。これからも頑張ってね、室井さん。
『不味い!(まずい!)』◆小泉武夫◆新潮社◆ 一覧に戻る
とにかく世の中のあらゆるものを食べまくっている小泉さんですが、美味しいモノばかりでは
ありません。虫を炒ったモノや血で作ったソーセージなどはともかく、世の中には普通に暮らし
ていても不味いモノが多々あるワケで、普通だったら不味そうだなと思ったら食べなきゃいいん
ですが、小泉さんは、もしかするととんでもなくうまいかもしれん、と思って食べてしまうのです。
食い意地が張って…いや、小泉さんは東京農業大学の教授で、専門は醸造学、発酵学ですもの、
研究のためにはいくら不味くて飲み下せないようなものでも、意識を失いそうになるくらい強烈な
ものでも食べなくちゃいけないのであります。
私が過去に食べたもので記憶に残っている不味いものは箱根に行った時に旅館で出た鍋。
刺身がまずくても、まぁ、鍋は大丈夫だろうと思って食べたんですが、野菜とハムかつが入って
いたんですよ。なんで箱根に来て高い金払ってハムかつの鍋を食わなきゃいけないんだ。しかも
そのハムかつが不味い。翌朝のぬるい湯でいれたインスタントコーヒーもまずかったなぁ。
結局、同じ食材を使って美味しい不味いの差が出るのは、作る人の心意気なんでしょうね。
美味しいモノを食べさせたいと思って作った料理は美味しい。この食材をどうしたら一番美味しく
食べることが出来るかと考えて作った料理も美味しい。
『いとしのロベルタ』◆佐々木マキ◆ほるぷ出版◆ 一覧に戻る
「わたしのロベルタがいなくなってしまった」
青い帽子に青いスーツ、赤いネクタイをした小太りのおじさんが階段を駆け下り、町に出て
いとしのロベルタを探します。おじさんはロベルタがいなくなった理由は自分にあるのでは
ないか、いや、私は精一杯ロベルタに尽くしてきたつもりだ、と何度も自問自答を繰り返します。
ロベルタは町にも森にも海にもいません。どこに行ったんだ、ロベルタ。
いいなぁ、おじさん。作者の佐々木マキさんってこんなおじさんじゃないかなぁ。
ロベルタが家を出ていった理由はわからないけど、きっとおじさんのせいじゃないと思うよ。
この本は絵本でして、どこがどういいのか説明するのが難しい。物語もちょっとミステリー色を
含んでいるので、それを書いてしまったらこの絵本を初めて読む方の感動が薄れてしまうでしょう。
んー、これじゃあこの本の良さがちっともわからんではないか。でもいいんですよ、ホントに。
『汚名』◆多島斗志之◆新潮社◆ 一覧に戻る
2001年7月から一年間「小説新潮」で連載された文芸ミステリー。
<わたし>は子供の頃にドイツ語を教えてくれていた叔母・藍子について、なにも知らずにいた。
無愛想で親類ともほとんどつきあいのなかった叔母の死後、<わたし>はひょんなことから
叔母の過去を調べることになる。
私はゾルゲ事件がどんなものだったか知らない。学校で勉強したとは思うんだけど、
ゾルゲ事件がどれほど戦時中の日本を震撼させたものかわかっていない。
藍子はゾルゲ事件とは関係はなかったものの、事件に巻き込まれたひとり。
藍子の昔を知る人物の手によって書かれた小説で<わたし>は藍子の闇を知ることになるのですが、
その小説、戦後すぐに書かれたものでして、旧仮名遣いで綴られているんです。
最初は読みづらかったけど、これだけ長いと慣れてくるもんですねぇ。しかし、藍子の謎は
その小説だけでは解けません。
タイトルの『汚名』は誰に向けたものなのか。藍子の愛人であり、ゾルゲ事件で逮捕された中沢の
ことを指しているとばかり思っていましたが…。
藍子の中沢に対する愛情の深さがわからない。謎が解明された後も心のどこかにもやっとした
ものが残ってしまう。私が藍子と同じ状況にあったらわかるかと想像してみたけど、どうしても
わからない。
『夏休み』◆中村航◆河出書房新社◆ 一覧に戻る
働かなくなってから夏休みとはほとんど無縁の生活をしていて、夏休みがあったところで
どこかに出かけようなんてこともしないのですが、それでも「夏休み」という言葉を聞くと
なんとなくワクワクします。
ある2組の夫婦の日常。こういう幸せな家族の話はいいなぁ。
幸せと言っても大げさなものではなく、例えば同居しているお母さんのいれるお茶がとっても
美味しいとか、ほんの些細なことなんだけどそれを幸せだと感じるマモルがいい。
好きになって結婚しても所詮は他人同士。お互いの考えていることがすべて伝わるわけはありません。
どんなに幸せに暮らしていても、たまにはひとりになりたいこともあるのです。
書き置きを残して家出した吉田くんを探しにマモルとユキ夫婦、吉田くんの妻・舞子の夏休みが
始まります。
理由がどうあれ、この3人は夏休みを楽しんでいます。それぞれの心の中はいろんなことが
渦巻いていて、それが読み手にも伝わってきて一瞬不安になるのですが、夏休みはいつかは
必ず終わるもの、夏休みが終わる頃には宿題も片づいてるはず、そう思うとこの人たちは
きっと夏休みが終わってもうまくいくと思えてくるのです。
いつも本を読む時は他のことを一切せずに、本だけに集中するのですが、今回は何度もコーヒーや
お茶を飲んだり、タバコを吸ってしまいました。なにげない生活のシーンがとてもよく描かれて
いて、そうせずにはいられなくなります。