2月の本棚 ■え。1月ってあれだけだったの?
 
 
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まれに見るバカ オロロ畑でつかまえて 「私が、答えます」
タコは、なぜ元気なのか 三谷幸喜のありふれた生活 赤ちゃんをさがせ ミステリなふたり


『まれに見るバカ』◆勢古浩爾◆洋泉社◆  一覧に戻る

いやぁ、困りました。こんな本読んだらなにもかもが全部バカなモノに思えてきちゃって。

1冊の本でこんなに「バカ」という言葉を連発し、深く掘り下げた本もなかろう。
個人を特定してバカだバカだと言ってるんですが私が前から変だなぁ、なんか違うなぁと思って
いた輩がたくさん出てくるんで気持ちよかったわい。

新書版で非常に読みやすい文体。そう、バカにもわかるように書いてあるけど、バカは自分の
ことをバカだと気づかないから結局バカにはわからない。あー、なに言ってるかわからんな。

この本で槍玉にあげられてるバカの分類で私にもいくつか該当するものがあった。
自覚してたからまだ大丈夫か。自覚していたから面白かったんだろう。たぶん。

あー、私の知人でこの本を読ませたいバカがいるんだけど、読ませたところでバカが増殖する
だけだ。もったいないからやめておく。

自分はもしかしてバカではないか、と危惧されている方は読むとよろしい。
自分はバカではないと思ってる方は読むと頭にきちゃうだけかも。くくく。

『Y』◆佐藤正午◆ハルキ文庫◆  一覧に戻る

単行本が発売された時に読もうと思ってたのですが、ナニカの理由で読まずにいた1冊。
そのナニカ、思い出せなかったんですがこの小説の中で解けた気がします。

後悔と言うほどではないにしても誰もが一度は経験したことのある「あの時こうしていれば」
「あの時間まで遡ることが出来たら」という想い。

人には常に選択がつきまとう。
選択が正しいか正しくないかは本人にすら分からないこと。一度選択された道はまたそこから
枝分かれして、無意識のうちに自分の運命を選んでいくのである。

その運命を変えることが出来たら…。

40歳を過ぎた男の時間を超えた長くて短い恋愛小説。

1980年9月6日土曜日、井の頭線渋谷駅のホームから物語は始まる。
同じ駅から同じ電車に乗り込んだ青年と女性は下北沢の駅で別々の運命をたどることになる。
ホームに降り立った青年と電車に取り残された女性。そしてその電車はまもなく事故に
見舞われることになる。

私はこの本を井の頭線沿いをぷらぷらと歩きながら読んでいたのですが、いろんな不安が始終
つきまとっていました。ややこしいパズルをじっくり解きながら読む。一歩間違えたらまた
最初からやり直し。歩きながらなんて読まずに静かなところで一気に読んでしまえばいいのに、
もう一度読み始めたら他人の運命が気になって先に進まずにはいられなくなりました。

著者の作品は『カップルズ』と『取り扱い注意』についで3冊目。
やっと心から面白かったと言える作品にたどり着きました。

『オロロ畑でつかまえて』◆荻原浩◆集英社文庫◆  一覧に戻る

若者たちが都会へと流出してしまう人口300人の小さな村、牛穴村。
特産物といえばカンピョウ、人参、オロロ豆、ヘラチョンペ。そして民芸品として今は生産
されていないゴゼワラシ。

よくテレビで方言の強い地方でインタビューすると通訳が出ますよね。
この小説も方言は残してはあるもののかなり標準語に近い言い回しになってます。

過疎化の対応策として青年団が選んだのは「村おこし」。
現実世界でも数年前にずいぶんと流行ったようですが、本当に「村おこし」は成功したので
しょうか?

倒産寸前の広告代理店を巻き込んでの村おこし。
青年団は観光客を目当てにし、広告代理店は自社の儲けを企み、とんでもないことを計画します。
そいつにマスコミが飛びつき、なぜか恋が生まれ…。

村おこしに奮闘する若者たちをはじめ、人間臭さの感じられる登場人物ばかり。
読後感のよい作品でした。

田舎をバカにしつつ、都会もバカにする。
著者の田舎と都会に対する愛情が伝わってくる1冊。

『「私が、答えます」』◆竹内久美子◆文藝春秋◆  一覧に戻る

「京都大学理学部卒業後、同大学院に進み、博士課程を経て著述業に。専攻は動物行動学。」
という経歴の著者が平成12年10月〜1年間に渡り「週刊文春」で連載していた読者との
Q&A集。

男についての章を読むと、男性の指と生殖器との関係が。わははは。こーんなに深い意味が
あったとは。じっと見ちゃうじゃないの。え、答えを教えろってか。いや、この本は装丁も
イラストもいいし、買って読んでくださいよ。そのうち文庫にだってなるでしょうから。

キリンの首の進化論。よくキリンは高い所の葉っぱを食べるために首が長くなったと言われ
ますが、竹内久美子は別のことを考えている。ハッとするような回答。

文章がうますぎて、回答が全て正しいのか冗談なのかわからなくなってくるのが難点と言えば
難点かもしれん。


『タコは、なぜ元気なのか「タコの生態と民族学」』◆奥谷喬司・神崎宣武/編◆草思社◆ 一覧に戻る

初めてタコを見た時から「タコというものは墨を吐いて頭がでかくて足が8本、吸盤付き」と
私の頭にインプットされたので、タコに関しては疑問など持たないまま現在に至りました。

しかし。
タコってナニモノなんだ?こんなに面白い生き物だったのか。

オスのタコの8本足の1本が生殖器になっているというのは知っていたけど、例えば
「カイダコ」。カイダコのメスは体長が30センチくらいになるそうなんですが、オスは
たったの2センチ。それなのに。それなのにーっ。生殖器(交接腕というんだそうな)は
びよ〜んと伸びて10センチにもなるんですよ。(…って、また生殖器の話かいっ)

タコの伝説もあの容姿ですから全国にたくさんあります。
私のいた北海道の積丹ってとこには奇岩が数多く見られるのですが、その中にタコそっくりな岩が
ありまして(もちろんそいつもタコ岩と呼ばれています)、そいつは義経と戦って負けたんで岩に
されてしまったというタコなんでございます。ちょっとマヌケな感じがして、私はその岩まで泳い
でいって昼寝をするのが好きでした。

さて、巻頭カラーページには本物のタコの卵から、昭和34年発刊の『蛸の八ちゃん/田河水泡』の
写真、タコ料理まで掲載されていて楽しい。

この本をメルマガで紹介してくれた疋田智氏はたこ焼きが食べたくなったと仰ってましたが、私は
もう一度ソニーの「ボク、タコの赤ちゃん」のCMがどうしても見たくなりました。

『三谷幸喜のありふれた生活』◆三谷幸喜◆朝日新聞社◆  一覧に戻る

その人の日常を面白くするかつまらなくするかは、その人の表現力によるものだと思っている。
たとえば「仕事が休みでヒマな1日」があったとする。日記サイトで「なにもすることがないので
ずっと寝てました」と書くところは意外と多い。

同じ「仕事がなくてヒマな1日」を三谷幸喜だったらどう表現するか。
たしかにナニもしてないんである。ビデオ観賞をしようとして「七人の侍」をセットする。
しかし一人も侍が出てこないうちにこの人は寝てしまう。

でもこの人の日記は面白い。
ナニもしてない日常の中からうんと小さな面白い瞬間をがしっと握って離さないのだ。

日記というのは本来自分のために書くものだから「ずっと寝てた」だけでもいいのかもしれない。
でも自分のために書く日記でもあとで読んで面白い方がいいに決まってる。(と私は思っている)

そういう日記のお手本になるような一冊である。
和田誠氏の装丁、イラストも最高。

『赤ちゃんをさがせ』◆青井夏海◆東京創元社◆  一覧に戻る

フリーの助産婦・児島聡子とその助手・亀山陽奈。妊婦の周辺に起きた事件を聡子の
師匠・明楽先生とともに解決していく連作ミステリー。

「お母さんをさがせ」では加々見さんちの自宅出産を請け負ったふたりが依頼主の家に行くと、
そこには3人の妊婦がおり、実は産院では産めない事情があるらしい。3人のうち本物の
お母さんは誰だ?

助産婦コンビの話を聞いた明楽先生は助産婦の経験と人生経験から意外でありつつも自然な
答えを導く。

「お父さんをさがせ」に登場するのは10代の若い妊婦。今度はお父さんらしき人物が次々と
現れ、そして失踪。お父さんは誰だ。そしてどこへ行ったのか。

最後に「赤ちゃんをさがせ」。
陽奈の元にひとりの不審な男性が近づいてくる。彼は児島聡子の元夫、宝田で陽奈に聡子との
復縁の橋渡しになってもらおうと依頼に来たのだが、陽奈はどうしても宝田のことが「不審人物に
しか見えない。そんな中、聡子が請け負っていた仕事のキャンセルが続き、陽奈は宝田の仕業だと
思い始めるが…。

明楽先生は推定年齢70歳。40有余年の助産婦生活でとりあげた赤ちゃんは六千人とも八千人
とも言われる大ベテラン。現在は引退して悠々自適の生活を送るも、どうも産婦が近くに寄って
くるらしい。

海外旅行をしていても目の前の女性が急に産気づいたり、聡子と陽奈も明楽先生を頼りにして
相談を持ちかける。

登場人物が非常に魅力的である。謎解きも面白い。こんな作家さんがどこにいたのか。
川出正樹氏の解説を読むと驚きの事実が。

実は青井夏海さんは1994年に『スタジアム 虹の事件簿』という作品でデビューしています。
わずか500部の自費出版。偶然読んだ書評家の新保博久氏が書評でとりあげ、あるミステリ
マニアがインターネットで特集を組み、次第にクチコミで評判になり7年の時を経て創元推理文庫
に収められることになり、それから半年後『赤ちゃんをさがせ』を執筆したというのです。

7年間、著者は自費出版の時に出版の楽しみに目覚めて版元の校正係をしていたというから
びっくり。あぁ、こういう人もいるんだなぁ。ミステリを楽しんで書いている。そしてそれ以上に
読者も楽しめる素晴らしい作品です。次の作品も7年後ってことはないですよね?青井さん。

好きな作家さんがまたひとり増えました。

『ミステリなふたり』◆太田忠司◆幻冬舎◆  一覧に戻る

中を見ないで本を購入するとたまにあるんですよ、文字が少なくてスカスカなのが。
ノベルス出身だから仕方がないのかなぁと思いつつ、もうタイトルと装丁だけで本は選ばないぞと
心に誓いつつ。えーとこんな言い方をするとノベルスを評価してないように聞こえるかもしれま
せんが。

愛知県警捜査一課警部補の京堂景子とその夫・新太郎の会話中心のミステリ。
景子が行き詰まった捜査を夫に解決してもらうんですね。同僚たちからは陰で「氷の女」だの
「鉄女」と呼ばれている凄腕の刑事らしいんですが、家庭と職場でのあまりのギャップに読んで
る方はついていけませんわ。その場で解決できなくても一旦家に帰って考えてくると見事に
解決って、そりゃ職場の人間がバカすぎます。気づけっての。

ただ、景子の夫。「髪が長くて華奢でアゴが尖っていて、描いたような眉にアーモンドのような
眼、すっきりとした鼻梁」…ん?表紙のイラストがですね、うちのダンナとそっくり。
料理上手ってとこは全然違いますけど。

そう、ちょっとした料理本として読むならいいかな。ハードカバーで1600円はねぇ。
本の値段は一概には高いとか安いとか言えないけど、それにしてもなぁ。

あ。あとがき読んでやっぱ高いって思ったんだわ。
いい年して「パフとモモへ」なんて。飼い犬に向かってあとがきかいっ。あとがきのページが
一番活字がつまってるじゃないか。ぶう。