6月の本棚 ■うひゃー、ぎりぎりだー。
 
 
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夕海子 精霊の楽園オーストラリア 夏の滴 
想ひ草  ヘプバーン写真集 世にも素敵なオードリー王国

『夕海子』◆薄井ゆうじ◆アートン◆  一覧に戻る

久しぶりの薄井ゆうじ。
前から薄井さんって人は人間の心の奥に潜んでいるドス黒い部分をうまーく描く作家さんだなぁと
思っていたんですが、今回はちょっと。んー、読んでいるとどんどん気分が落ち込んできちゃって
おまけにイヤ〜な夢まで見ちゃって。

中学時代の特に仲がよかったワケでもない同級生からある日突然洋介に「寒いんです。温めていた
だけないでしょうか」という電話がかかってくる。同級生の名は新島夕海子。
12年振りに訪ねてくるにしては午前5時という時間は早すぎるし、おまけに本当に訪ねてきて
しまった彼女は顔面蒼白でパジャマ姿だった。

最初の夕海子の妙な言動はその後いろんな人の手によって、どんどんタネあかしされていくんですが
彼女を助けようと周囲が動き出した途端、あららららって方向にいっちゃって、いくら小説でも
そりゃ無理があるんじゃないのかなぁ…と首をかしげつつ、とりあえずラストまで読みましたけど、
結果はどうあれ、やっぱり暗い気持ちで読み終えたのでした。

『夏の滴』◆桐生祐狩◆角川書店◆  一覧に戻る

第8回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作品。

子供って残酷だよなぁ、子供だったことのある大人が育ててるんだから、当たり前と言えば当たり前
なんだけどね。ここまで大人に影響されちゃってる子供を見ると、なんだかため息が出てきちまい
ますよ。

んー、この小説に出てくる子供が悪いんじゃないな。いくら読んでも普通の大人が出てこないって
ところに問題があるのかな。こんなに普通じゃない大人ばかり登場させちゃうと、恐怖感が薄れて
くる。

帯の「鬼畜でグロテスク、邪悪でインモラル」はわかったけど「これほどみずみずしく切ない小説が
あっただろうか?」ってのは言い過ぎでしょう。いたいけな子供のひと夏の経験を描けば、みずみず
しく切なくなると思ったら大間違いなワケで。

なにが一番問題って、この小説、読後はいろいろ文句を言いたくなるんだけど、読んでる間はすごく
面白くて止まらなくなっちゃうってとこでして。夏休み前の子供に読ませたら宿題どころじゃなく
なっちゃうだろうなぁ。

角川か。映画化されますかね。映画化されてもわざわざ劇場で観るほどではないけど、配役は気に
なります。
『精霊の楽園オーストラリア アボリジニ 妖怪の古里紀行』
   ◆文・大泉実成/絵・水木しげる◆祥伝社◆
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ちょっと気分が落ち込んだところでパーッと明るい本にいきましょう!
…と思ったのに、ちょーっとばっかし期待しすぎちゃったかもしれん。

幸福になるメキシコ』『マレーシア大冒険』に続くゲゲゲの鬼太郎の水木さんの冒険第三弾
なんですがこのオーストラリアの旅で水木さんがいきなり年をとってしまったような。前は絶対
この人は死なないんじゃないかと思わせるような勢いがあったんですが…。

水木さんと言っても、そりゃ人間ですからね、年も取るだろうし、体も衰えてくるとは思うんです。
前2作であまりにも元気だったもんですから、水木さんの衰え方はちょっとショックでした。

オーストラリアにはアボリジニの精霊に呼ばれて出かけることになったのですが、オーストラリアと
いう国は非常に複雑な歴史を持った国でして、オーストラリアの精霊はアボリジニの人々の中に
根づいているモノなんだけど、水木さんは精霊には興味はあるけど、アボリジニの歴史には興味が
ないんですね。

そこを責めることは出来ないんですが、水木さんの行動は現地のアボリジニの人々にとって、
あまりいい印象を残すものではありませんでした。私から見ても「これじゃあちょっとお金持ちの
おじさんが観光でオーストラリアを訪れただけじゃないか」と思えるようなところも。

でも帰国後に描いたこの本のための書き下ろし「精霊伝説アボリジニ」にはちゃんとアボリジニの
歴史が描かれてるんだよなぁ。それとこれとは話は別なのかなぁ。
『想ひ草』◆鳥越碧◆講談社◆  一覧に戻る

老いを目の前にした女性が、自分の人生を生きはじめる、その瞬間を描いた八つの物語。(帯から)
表紙に私の好きな花、露草が一輪。

なにもかもが静かにゆっくりと流れている。美しい言葉の数々。
今の私には想像もつかないが、こういう夫婦もいるんだ。夫に逆らわず、かと言って、愛するでも
なく、ただひたすら同じ毎日の繰り返し。そんな妻が突然夫に先立たれた時に知る、夫の妻への
愛情。

どうして生きている時に、お互いの気持ちに気づこうとしなかったのか。

八つの物語に出てくる女性はみんな控えめである。今の時代にこういう女性はいるんだろうか。
いるんだろうな、きっと。控えめだからおもてに出てこないんでしょうな。

「高山寺」と「名残り桜」と「貴船」は特に好き。朗読で聞くなら「露草」。
『ヘプバーン写真集 世にも素敵なオードリー王国』
 ◆文・山本容子/写真・ボブ・ウィロビー◆講談社+α文庫◆
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「ローマの休日」を初めて観た時からずーっと好きなんだけど、やっぱりいいなぁ。
文庫での写真集は初めてだそうなんですが、映画で使われた写真ではなく、撮影の合間や
プライベートの写真が多く、初めて見る写真ばかりでした。

文章は銅版画家の山本容子さん。映画やオードリー・ヘプバーンの生き方、ファッションとご自分を
照らし合わせてのコラムがとても可愛らしい。

きれいな写真は出来るだけ大きな本で見たいと思うのですが、この写真集に限っては文庫の大きさが
いいな。大きい写真よりも小さい写真で、いつでもひょいとどこかに連れていけるサイズで。