6月の本棚 ■かえるのうたはきこえてくるか?
『煩悩配達人』◆末永直海◆小学館◆ 一覧に戻る
初めての作家さんだったんですが、タイトルに惹かれて…いや、白状しましょ。
帯に惹かれてしまったんだな。
『「セックスして、お願い」。お願いです。』ですぞ。買わないワケにはいきますまい。
思った通り、電車の中ではちょっと、ちょっとぉ〜な本でした。なんでもこの作品、あの
「女性セブン」に連載されてた官能ミステリーなんですと。
「女性セブン」って言えば小学生のころ美容院でオババたちの目を盗んで「微笑」と交互に
読みまくっていた女性週刊誌。あぁ、その頃から私はエッチくさ〜っての好きだったんだなぁ。
●煩悩配達人
どんな展開になっていくのかドキドキしながら読みました。
主人公の遠藤憩は30歳。エンドウイコイ。彼女にはどうしても「縁遠い恋」に聞こえてしまう。
ポストの中に入っていたエロチラシを見てビデオを注文するのですが…。
終盤はなんとか連載終わらせようとして無理矢理走らせた感じがみえます。そこに行き着くまでの
描写がとってもよかっただけに惜しいっ。
●幻獣
こわ〜〜〜〜。
ミステリーというよりサイコホラーかな。こちらの主人公は30歳独身、職場で煙たがられている
桑原砂知子。他人に言われる前に先に言っとこう。桑原砂知子さん、私に似ているところがあるぞ。
仕事とプライベートにギャップがある人は要注意。
主人公と私との共通点がドコかはここでは内緒にしときましょ。うっかり書くと誰もココに来て
くれなくなっちゃうからな。
『食い物を粗末にするな「並の日本人」の食文化論』◆立川談志◆講談社+α新書◆ 一覧に戻る
5月の連休に確かに本屋さんで買ったと思ったんだけどなぁ。家のどこを探してもみつからない
んです。…で、会社の同僚に借りました。(結局面白くてまた買った。今度はなくさないぞ)
日本人は食い物を粗末にしすぎなんだよ。贅沢を勘違いしてるヤツが多すぎる。
そいつを見事にブッタ切ってくれたのが「なかなか死なない」というウワサの談志師匠。
談志師匠の言葉ですからね。初めての人は面食らうかもしれません。毒があっていいのよ。
私は毒が好きだ。毒があるモノほどウマイのだ。
『夏と花火と私の死体』◆乙一◆集英社文庫◆ 一覧に戻る
まず作者の紹介から。
乙一。おついちとそのまま読みます。『夏と花火と私の死体』で17歳の時にジャンプ小説大賞を
受賞。昭和53年福岡生まれ。
誘拐事件の多発している小さな村で9歳の五月ちゃんが殺された。
「わたしは死んだ。」
解説は小野不由美さん。解説から先に読むのが好きという方は要注意。私も先に読みたかった
のですが初めての作家さんの作品ということもあり読み終わるまで我慢しました。あとから読んで
正解。
調べてみたらジャンプ小説・ノンフィクション大賞ってのは「少年ジャンプの読者が楽しめる作品」
ということで募集しているそうな。
大賞を受賞するような作品ですからうまいのは確か。でもうまいだけじゃないんですね、ちょっと
変わった語り口というか構成というか。驚きました。
17歳が描いた命の重さ。軽いとみるか重いとみるか。
『動物の村』◆武井武雄◆銀貨社◆ 一覧に戻る
「武井武雄画噺」これでやっと3巻揃いました。
第一巻『あるき太郎』第二巻『おもちゃ箱』と読んで、この作者の絵本だったら全巻揃えてもいい
かなと思っていたら、な〜んだ、3巻しか出ていませんでした。あ、これは復刻版ね。
相変わらず妙な絵です。他の2巻に比べるとキャラクターが全然可愛くありません。
こういうのがモダンでハイカラな絵を言うのでしょうかねぇ。私好みですが。
あとがき(注意書きかな?)にもあるのですが、武井武雄は作品の一部に「RRR」という文字を
入れています。それは彼が一時好んで使用したサインだそうなのですが、この「RRR」の意味。
これがちょっと面白い。なんでもフンヌエスト・ガーマネスト・エコエコ・ズンダラー・ラムラム
王(長いな)通称ラムラム王(Roi Ram Ram)の頭文字を取ったものだというのです。
そのラムラム王とは。ひえ〜。銀貨社から出てる『ラムラム王』を読めってさ〜。まぁ、買って
みますか。
『ブラッド』◆倉阪鬼一郎◆集英社◆ 一覧に戻る
私、実は「潤子」っていうんですけどね、あんまり小説では使われない名前なんです。
それがこの『ブラッド』では金髪の女として登場します。すごいよ。やんなっちゃうぞ。んも〜。
帯で大森望さんが書いているように「殺しすぎだぞ倉阪」。
参りました。毎日でも食べたいと思っていた焼肉屋のユッケ、見るのもイヤになりました。
(でも食べる)
いきなりウエイトレスが子供の目にフォークを突き刺し、母親をブン投げ殺してしまう。
そこからノンストップでどんどんどんどん人が殺されていく。あ〜。気持ちわる〜。
本屋で装幀見てください。
夜、ふとんの中でこの本を読んでいてそのまま眠ってしまったら、ダンナが私の枕元に置いてあった
本を見て胸くそ悪くなったと申しておりました。
怖いのは怖いんだけどなぁ。前半の流れと後半の流れが妙にマッチしてないっていうか、はぐらか
されたっていうか、消化不良。誰が主人公なんだかわからないよぉ。ミステリーじゃないから結末は
曖昧でいいのかなぁ。
ところで倉阪さん。その著者近影やめましょうよ〜。荒川区に住んでる人の写真じゃないっすよぉ。
『カップルズ』◆佐藤正午◆集英社◆ 一覧に戻る
噂ってその噂の主と関係のない人たちに伝えられていく間にどんどん形が変わってしまう。
変形した噂は他人にとって面白おかしいモノだから本当のコトなんてもう誰も興味がなくなっている
のだ。
『カップルズ』にはそんな男と女の噂話が7編。連作っていうのかな。毎回佐藤正午さんと思われる
小説家が登場します。
タイトルも装幀もちょっと若い子向きだけど、7つの噂話はピリッとスパイスがきいた大人向け。
噂は噂のままでいたほうがオシャレなのかもしれません。
私の一番好きな作品は街の居候として住み着いた男の噂話「食客」。そういえば私のまわりにも
こんな男が…。いや、あくまでも噂話ですけどね。ふふ。
『大人のための歌の教科書』◆川崎洋◆いそっぷ社◆ 一覧に戻る
『覚えていますか?
「かえるの合唱」かえるのうたがきこえてくるよクワックワックワックワッ・・・・・』帯から
覚えていますとも。子供の頃に歌った歌って忘れないものです。
冬の寒い日にいつもとは違う裏道を歩く。「かきねのかきねの曲り角〜♪」と口ずさんでいる自分。
夜中に鍋を焦がして穴があいちゃった時なんか「なーべーなーべーソッコ抜け〜 ソッコが抜けたら
かえりましょ♪」などと呑気に歌っている私がいるのである。
戦後の音楽の教科書から66編を作者の川崎洋さんが選び、歌詞と楽譜、その歌にまつわる作者の
想い出を当時の挿し絵とともに紹介してあります。
「おぼろ月夜」という歌を習った時に「なんだか大人になった気分だな〜」と思ったものです。
小学校6年生の時だったんだね。昭和24年の教科書検定が始まった年からずっとこの歌は6年生の
教科書に掲載されてるんですと。みんなは初めてこの歌を歌った時、どんな気持ちがしたかな?
作者と私とは30歳以上も年が離れていますが、同じ歌を子供の頃に歌ったという想い出は一緒。
なんだかとっても優しい気持ちでこの本を読み終えたのでした。ちゃんちゃん♪
『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』◆遥洋子◆筑摩書房◆ 一覧に戻る
遥洋子、う〜ん。この帯の顔、どっかで動いてるの見たことあるぞと著者についてはこの程度の
認識。そして上野千鶴子、あちゃー。タイトルになってるのに聞いたことも見たこともありません。
装幀、私があまりスキではない「タイトルが斜めになってるっ!」
カバーを外すと電車の中で読めない白地にピンクの著者の似顔絵!
では何故わざわざお金をだして買ってきたか。
いつも行く本屋さんにどーんと山積みされていたのをパラパラとめくったら「ん?出だしが
いいぞ。」と いうことで先も読みたくなって、つい。
ダンナがテーブルの上に置いてある本を見て「あっ。遥洋子!ボク、ダメなんだよ、この人」。
松本伊代と妖怪人間ベラに続き「ボク、ダメなんだよ」の人か。
この3人(?)に共通するモノってなんだ・・・・ってこういう読み方はいけないかな。自分で買った
んだからいっか。
タレントさんである著者がケンカ道に磨きをかけようと東大・上野ゼミに入門。この時点でダンナが
「ダメ」なワケがわかってきました。ふふふ。
しかし著者が東大で上野教授から学んだものはケンカなのか?本人もわかってらっしゃると重々承知
の上書かせていただきますが・・・・だからタレント本って言われんじゃないの?流行ってますからね、
ケンカ。せっかくここまで上野教授から学問を学んだのに。「東大で上野千鶴子に学問を学ぶ」じゃ
どーもピンとこないもんなー。でも面白かったよ。
『クマグスのミナカテラ』◆山村基毅・原作/内田春菊・画◆新潮文庫◆ 一覧に戻る
南方熊楠(みなかたくまぐす)という人物をご存知でしょうか?
私は何年か前に熊楠展を見に行って彼がなにをした人物か知ったのですが、それまでは名前の読み方
も知りませんでした。
彼は粘菌を研究した博物学者なのですが、本のタイトルが熊楠の発見した「ミナカテラ」という
名前を使っていたので、てっきり研究者としての物語と思いきや…粘菌にはほとんど触れず、
彼の学生時代とその背景を綴った物語だったんですね〜。
私は研究者としての熊楠がスキだったので、もう最初からわざわざ買うべき本じゃなかったと
読み終わってから気づきました。今度からもうちょっと気をつけて買おう。
内田春菊という人は人物が多くなるとダメなんっすかねぇ?みんな同じ顔に見えちゃうんだけど。
本人もあとがきで言っているように「漫画家やめて時代考証家になった杉浦日向子の原作で漫画を
描かせてもらいたくて、とりあえず練習してみっか」という気持ちでこの作品を描き始めています。
バカにすんな。
多分、原作は面白い。内田春菊に何故この物語の漫画化の話がいったのかな。う〜ん。
んでもって未完。彼女、この先書く気あんのかな…と思ったらやっぱないみたい。理由は文藝春秋
から出てるエッセイ集を読んでくれってさ。やなこった。
『土俵の上から見た不思議なニッポン人』◆旭鷲山昇◆扶桑社◆ 一覧に戻る
おすもうさんの本の帯はやっぱりでかい!
モンゴルから来たおすもうさん「旭鷲山」が未知の国日本に来て全てのことにカルチャーショックを
受けます。何度もホームシックにかかって部屋を脱走したこともあったっけ。
旭鷲山はいいのぉ〜。相撲はもともと好きなんですが、こうやって言葉もなにもわからない純朴な
青年が日本に来てどんどん強くなっていくのを見ると無条件で応援したくなります。
監修はモンゴル国立大学客員教授、絵本作家でもある宮田修さん。モンゴルの絵本「ラクダの
なみだ」を出版したことから旭鷲山との交流が始まります。宮田さんは旭鷲山の言葉をじゅうぶん
引き出し、とても面白い1冊の本にまとめました。(後半はちょっと女性週刊誌寄りになってしまい
ましたが。)
モンゴルの未来を背負って立つ旭鷲山。かっこいいぞーっ!
『笑う萬月』◆花村萬月◆双葉文庫◆ 一覧に戻る
昔の悪事を人前で自慢する輩がいる。
そういうあんたもそうじゃないかと言われそうですが、私の場合は何故か「昔、こんなことやあんな
こともしたでしょ」と相手に決めつけられてしまうことが多いんですな。フツーに過ごしてきた
つもりなんだけどなぁ。
それはさておき花村萬月。
彼の作品は『皆月』が最初だった。小説はせつなかったし、映画も見にいきました。
でも絶対オススメ!とは言えなかった。それ以降彼の作品をいくつか読んでみたけど、最後まで
読み切れなくてココの本棚には載せてないんだわ。
暴力。いくら美しい言葉で描いたって暴力は暴力。私は嫌いだ。
『笑う萬月』は作者があちこちで書いたエッセーというか雑文。この中から作者の暴力の原点が
見つかるかなと思って読んでみました。ふぅ。
花村萬月が作家になるきっかけとなった某旅行誌で10万円もらったという旅行記は読んでみたい
とは思ったものの、新しい作品を積極的に読もう!とは思えなくなってしまったのでした。
『ストックホルムの鬼』◆薄井ゆうじ◆マガジンハウス◆ 一覧に戻る
週末に一気読み。
もっとゆっくり読みたかった。でもゆっくり読んではいけないような、そんな小説だった。
この作品をどこからどこまで説明したらいいのかわからない。
ある日、突然拉致された「私」は得体の知れない巨大施設に監禁される。「私」を監禁しているのは
中学の同級生だった。いや、でも彼は中学の頃、自殺しているはずだ。「私」の頭と心は混乱する。
本当のことを知りたいのに周囲は「きみは質問ばかりだ」と彼を責める。
薄井ゆうじワールドにまんまと引っかかった。
作者の作品の根底にあるものはいつも同じなのに、いつのまにか引きずり込まれてしまう。
この人の描くセックスシーンは切ない。どこかにいつも深い傷を残す。
出口がわかっているのに出ることの出来ない迷路。
「私」はこの巨大な迷路から抜け出すことが出来るのか。読後のため息が重かった。
『五番町夕霧楼』◆水上勉◆角川文庫◆ 一覧に戻る
昭和25年の金閣寺炎上。その事件を元に昭和37年に書かれた作品。
この作品に関しては再読です。
最初に読んだのが中3の夏。学校の「私立高校受験対策模擬面接」なるものに強制的に参加
させられ、その時に面接官だった教頭先生の「最近読んだ本は?」の問いかけにこの1冊を挙げた
のでした。
中坊だった私に『五番町夕霧楼』の本質など見抜けるはずもなく、当時流行していた赤川次郎や
渡辺淳一を読んでる連中とはちょっと違うんですよ、などと自慢するような小生意気なガキだった。
赤川次郎も渡辺淳一も読んでたくせに隠してたんだわな。
貧しい家庭を助けるために遊郭へ身売りした夕子。
体を売る商売なのに好きな人に逢いたい一心で自分の居所を知らせる。
こんな事情だけでも夕子の心情を思うとため息が出てきそうですが、作者は夕子の心の内を一切語る
ことなく綴っています。
それにしても夕子が惚れた櫟田正順。
彼の生い立ちを考えるとしゃーないのかなとも思うけど、あまりにも背負ってるものが重すぎて、
夕子はつらい恋を選んでしまったんだなぁとつくづく思うのです。
『雪の花』◆吉村昭◆新潮文庫◆ 一覧に戻る
天然痘と闘った町医者「笠原良策」の生涯。
天保8年。天然痘には牛糞を黒焼きにして飲むとか神頼みくらいしか手立てがなく、医者ですら人が
バタバタ死んでいくのを見ているだけ。そんな時に「なんとかしなくては」と私財をなげうって立ち
上がったお医者さん。
天然痘にかかると死ぬか、生き長らえても顔にあばたが残る。(今気づいたんだけど「あばた」って
変換すると「痘痕」なのね。)
笠原良策は海外から入ってきた牛のかかった天然痘の膿(種痘の苗)を人間の体に植え込むという
確実な予防法を学び、目の前で死んでいく町民を助けようとするんだけど、死に物狂いで手に入れた
種痘の苗を町民は恐がり、役人や藩医の妬みもあって「めっちゃ医者」と狂人扱いされてしまいます。
こんなことだからいつまでも「お役所仕事」なんて言われちゃうんだよなぁ。
「めっちゃ」というのは越前地方で「あばたのある人」という意味。
昭和46年に『めっちゃ医者伝』として刊行された後、笠原良策の末裔・笠原健雄氏から大量の
文献を寄贈された福井市立郷土歴史博物館の協力により昭和63年に加筆修正し『雪の花』と改題。
『俺はその夜多くのことを学んだ』◆三谷幸喜・文/唐仁原教久・絵◆幻冬舎文庫◆ 一覧に戻る
三谷幸喜の作品は面白い。エッセーも好きだけど、テレビ・映画・舞台も好き。
人をおちょくってるような態度。そんなとこも好き。
「俺が学んだ“恋愛に関する7つの真理”」
ふんっと鼻で笑ってしまうような。だからオンナにもてないんだよ、と言いつつ、私にも当てはまる
真理がいくつかあったりして。
いわゆる「あぁ、その気持ち、わかるわかる!」の世界。
実は立ち読み6分で読み終わってしまったんだけど、絵も気に入ったので購入。
彼女のことなんかを考えてしまって眠れない夜にオススメ。ますます眠れなくなりますけどね。
『ペラグラの指輪』◆若一光司◆北宋社◆ 一覧に戻る
積んである本はいっぱいあるんだけど、WEBを始める前に読んだ本でココに紹介してない本も
どっさりあるんでたまに時間をみつけて読んでいこう。新しい発見があるかもしれない。
…で、『ペラグラの指輪』。3年ほど前にタイトルに惹かれて購入。
ペラグラってね、病名なんです。皮膚症状、消化管症状、精神神経症状を主とする疾患。
物語は全編に渡って「僕」が「きみ」に宛てた手紙で綴られていきます。
長い長い手紙です。僕の発狂していく過程、きみとの関係、僕が僕であることの現実にたどりついた
確かな証し。きみには届かないかもしれない。でも僕は今、どうしても書いておかなければ
ならなかったんだ。
精神病棟に入院している誰もが自分の世界を持ち、外の世界を見つめるきっかけを探している。
僕のそのきっかけは衝撃的で残酷なモノだったけど、そこには温かいナニかが存在する。
白の背景に金色の指輪。その中にタイトル。右上に「ペラグラ」に関する記述。
「僕たちの聖杯伝説は狂気の彼方に輝いている。」という帯。
装幀がとてもいいんだけど、どこにも名前が書いてないんだよなぁ。謎の多い本だ。