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『復刻版 やわらかい手』◆花岡大学◆求龍堂◆ 一覧に戻る
復刻版という文字につられて購入。「花岡大学」という作家の名前は知っていたものの、作品を
読むのはこれが初めて。
「ここには、キラキラした大切なものがいっぱいつまっている
まず、おとなが読み、そして子供に伝えたい…」帯から
最近の「癒し(この言葉ものすごく嫌いなんだけど。)」とか子供たちの置かれている状況、
本の売れ筋なんかを考えるとこういう帯になっちゃうんだろうなぁ。確かに大切なものは
つまってるかもしれないけどねぇ。
昭和63年に亡くなった作者の花岡氏は生きていたら「キラキラ」なんて間違ってもつけなかった
と思うな。私は本人じゃないけどさ。
『鈴の話』『午後一時五分』『水蜜桃』『やわらかい手』『黒い門』の五つの短編童話集。
子供の頃の記憶は楽しいことばかりではありません。
どの作品にもとてつもなく暗いナニカが見えます。
こんな童話があったのか。鳥肌さえ立つような残酷な物語に、人間の本当の姿を見たような。
自殺があって、暴力があって、嫉妬があって。
でもね、実は私、この作品集を読んでいて何度か吹き出してしまったんです。
あまりにもあっけらかんとしていて。
明暗をさらっと描く。情景が浮かんでくる。
子供の頃に読んだらなにもわからなかったかもしれない。
素晴らしい黒井健さんの装画とともにこの作品を甦らせてくれた「求龍堂」さんに感謝。
2200円。←ちと高い。でも納得。
『戦争案内 ぼくは二十歳だった』◆戸井昌造◆平凡社ライブラリー◆ 一覧に戻る
画家である作者が20歳から23歳までの戦争で失った時間を、恨みをこめて綴った一冊。
戦争で失ったものは帰ってこない。
作者はその失ったものを丁寧に絵と文章で教えてくれる…というか、書かずにはいられなかった
んでしょう。
戦争を体験していない私に彼の体と心の痛みが伝わってきます。
勉強をしたいのに、恋をしたいのに、贅沢でなくただ普通の生活がしたいだけなのに、戦争は
全てを奪ってしまいました。
戦争にかかわった人たちがすべて戸井さんと同じ感情を抱いているとは限らない。
今の時代だっていろんな人はいるからねぇ。好きで戦争をしていた人もいるだろうし。
でも、正直言って、しばらくは戦争モノは読みたくないな。
「面白かった」と一言では言い尽くせないところがつらいです。
これがフィクションだったらよかったのに。
『枯れ蔵』◆永井するみ◆新潮文庫◆ 一覧に戻る
第1回新潮ミステリー倶楽部賞授賞作。
帯でも紹介しているように、この作品は「農業ミステリー」なんだわな。
富山で従来の農薬では効き目のない新種のウンカが大量発生。物語はここから始まります。
食品会社に勤務する映美が以前参加したツアーの添乗員だった曜子に久しぶりに連絡をとろうと
して曜子の自殺を知る。
曜子の自殺の原因は。
今さら調べてどうなるというのか。
こんなに専門的な内容なのに、読むスピードは緩むことなく一気にラストへ。
「米」は私にとって身近なモノ。結婚して自分で食事を作るようになってからコメ不足騒動も
体験しているし(当時ご近所の今はなき城南電気であきたこまち売った時にうちのボロアパートが
テレビに映った。しかも上空からの撮影。屋根見て感動)実際に自分が物語の脇役として出ている
ような気になりました。
衝撃的なプロローグ。今まで何回か暴力的なシーンは読んだけど、初めて涙が出た。
何度も読み返してしまいました。哀しみがずんと胸に迫ってきます。
プロローグでこんなに引きずり込まれるのって滅多にないぞ。
タイトルが『枯れ蔵』でなければ、作品が発表されてすぐに読んでいたかもしれません。
実は前からこの作家もタイトルも知っていましたが、なんとなく時代物のような気がして、
手が出なかったんですわ。
登場人物も魅力的。そーんなにいっぱい人を殺してどーすんだ?っていうどっかのミステリーとは
違い、一人の自殺からここまで話を膨らませることが出来る作者のワザには脱帽。
『もつれっぱなし』◆井上夢人◆文春文庫◆ 一覧に戻る
6つの証明の短編集。96年から「オール讀物」で発表した作品たち。
「宇宙人の証明」「四十四年後の証明」「呪いの証明」「狼男の証明」「幽霊の証明」「嘘の証明」
すべての証明が一組の男女の会話だけで構成されています。
私の好きな作家さんの作品だから、最初からかなり期待して読み始めたんですけどねぇ。
「会話」だけというのは限界があるんじゃないか?読んでいくうちに、な〜んか自分がイライラ
してきたのがわかって、何度も途中で投げ出しそうになりました。
一方のセリフが長いと「話、長いよっ!」ってチャチャ入れたくなるし、あんまり短いとなんだか
損したみたいな気になってくるし。
こないだ読んだ『オルファクトグラム』がよかったからなぁ。
ん〜と、これはミステリーじゃないのか。背景が見えてくればもっと面白かったのかもしれない
けど、会話だけで読者に想像させようとするにはナニカが足りない。
実際に自分の口で、言葉に出して読んでみるとわかる。
所々に、普通の会話では出てこないような言い回しが出てくる。どこがどう、というワケでは
ないけど、どうもそこらへんでイライラしてしちゃう。うむ。
『あるき太郎』◆武井武雄 画噺◆銀貨社◆ 一覧に戻る
昭和2年(1927年)に「武井武雄画噺(えばなし)」シリーズの第1巻目として丸善から出版
された本の復刻版。
私はよく旅先で本を買ってしまいます。
しかも、東京で簡単に手にはいるようなハードカバー。数日後には東京に戻ってくるってわかって
いるのに。だから帰りの荷物が増えちゃうんじゃないか。もう。
そして、この本も旅先で購入してしまいました。一目惚れだったんだもん。
昭和初期の本って、今の本屋さんには並んでないような色してんのよ。
復刻版の『あるき太郎』はチョコレート色を基調に山吹色のタイトル、あるき太郎クンも真中から
黒と赤に分かれている水泳帽みたいのかぶって、ジャージを半分に切ったような半ズボンを履いて
敬礼しております。イヤ〜な目をしてます。
カバーをめくると当時の装幀が出てきます。復刻版の方がオシャレかな。
ある日、あるき太郎がポッポステーションから汽車に乗って、船に乗って、海の上を歩いて
「じだうしゃ」とじてんしゃとオートバイに乗って「ひかうき」にのって、最後に歩いて歩いて
たどり着いた場所は…?
なにやら怪しげなおとうさまとおかあさまが旅行でなにが一番面白かったか?って聞くと
あるき太郎は答えます。
「それはあるくことです。あるいたおかげでぼくはいまてっぽうだま太郎よりつよいんですよ」
うがーーっ!なんてイヤなガキじゃー。飛行機が面白かったって言えーっ!
…と発狂しつつ、乗り物の絵が素晴らしい、とか、短い物語の中で何度か笑ってしまったりで、
私の直観は当たってたな、と我が家の本棚の「一目惚れコーナー」に無事収まったのでした。
よかったね。
『日本語の「大疑問」』◆池上彰◆講談社+α新書◆ 一覧に戻る
去年、新卒で我が社に入社してきた女の子に面白いのがいます。(通称:がらっぱち)
「今、お時間よろしいですか?やばいことになってしまったんですが。」
「昨日は梅干しありがとうございました。美味しくて一度に三個も食っちゃいました。」
あー。どーなってんだ。私も他人の言葉遣いをどうこう言えた義理ではないが。
うっかり年上の私に「なかなかいい店みつからないんだよね〜」なんて言ってしまうと、本人は
慌てて「えーと、見つからないんです」と言い直したりしてんだけど、そういうのはいいから
「食っちゃう」はやめましょう。
…で、そんながらっぱちと楽しい毎日を過ごしながら、NHKのキャスターである作者が書いた
本を読んでみたんですが…。
がっはっはっは。
きっとこんなに笑わせてくれようと思って書いた本じゃないんだろうけどさ。
おかしな日本語を使ってんのはがらっぱちだけじゃなかったのね。
自分の知ってる敬語を使おうとすればするほど、自分でもナニを言ってんのかわからなくなる。
当然、相手もナニを言おうとしてんのかわからなくなる。
言葉は時代によって変化するもの。それは認めるの。
でも昔からある日本語ってキレイなんだよね。
うるさいなぁ〜と思われつつも、私の周辺では今日もこんな会話が飛び交う。
「これ、食べれます?」
「食べられますか、でしょ!」
「うぅ。…で、食べられるんですか?」
「はい、食べられます。」
『死ぬかと思った』◆林雄司・編◆アスペクト◆ 一覧に戻る
1ヶ月くらい前だったかなぁ。よく覗きに行く「Web やぎの目」というサイトの管理人さんから
「今度、死ぬかと思ったの本を出すので投稿載せてもいいですか〜」ってなメールが届いたのね。
「死ぬかと思った」というコーナーは読めばわかるけど、低レベルな臨死体験を読者に投稿して
もらって成り立ってるとこなんです。
そこに私は2度も掲載してもらって(だってよく死ぬかと思っちゃうんだもの)それが出版
されるってなればよろしいでしょうかもなにも、こっちからお願いしますってな具合で。
んで、OKしたんです。
てっきり「食中毒3連発(牡蛎だのアワビだの梅仁丹だの)」の投稿が載ると思ってたら、
それより前に載った「父親に殴られ出血」の方が採用されちゃってよぉ。
よかった、本名載らなくて。
あ、でも「34歳 女」って。う〜。
管理人の林さんから「お礼に1冊お送りします」って言われてたんだけど、それじゃ印税の足しに
ならんかなと思って、自分で買いました。でも、こないだサイトを見にいったら「特製カード
つけておくります」って書いてあんの。素直にもらっときゃぁよかったわい。
(このあと林さんからでかいTシャツとシールと缶バッジが送られてきました。
ありがとうございました)
しかし、こういう本ってどんな人が買うんだろ。
掲載されてる人は買うだろうけど、家族に「わしの投稿が載ってるから買って!」とも言えない
ようなことばっかだもんなぁ。
ところでホントに細かくて申し訳ないんですが、巻末に載ってるサイトのURL、間違ってます。
「w」が一個多いです。さすがアスペクトって感じです。ぷぷ。
『対岸の家事』◆南伸坊◆日本経済新聞社◆ 一覧に戻る
あの「おにぎり頭」の南伸坊さんが96年1月から97年7月まで日本経済新聞で「家事」に
ついてのコラムを書きました。ふ〜ん。こんな連載してたんかぁ。
タイトルからもわかるように伸坊さんにとって「家事」は「対岸」にあるモノだったんですね。
家には家事の大先輩である奥様がいるから、普段はな〜んもしなくてよかったんです。
それが新聞社から『対岸の家事』という素晴らしいタイトルまで用意してもらって、コラムを
書いてみませんか?と。
私の場合、自分の職業を聞かれたら「会社員」と答えてはいますが、前からちょっと不満だった
のね。だって家事、大変なんだもん。でも家事は職業としては認められてないし、会社は会社で、
まぁ、そこそこお給料貰える程度には働いてるし。兼業主婦って言い方も、どっちもないがしろに
なってるみたいでイヤなんだよなぁ。
私が掃除しなかったり、晩ご飯を外で済ませたりするのは単純にメンドーだからだと思っていたの
ですが、伸坊さんは本書で「なぜメンドーなのかといえば、それは掃除が楽しくないと思っている
からだ。楽しいことはメンドーじゃない。メンドーなところが楽しくなったりするものだ。」と
書いています。
そうそう!そうなんよ。掃除って最後までやらないと達成感ないし、せっかく掃除してもダンナが
会社から帰ってきてアッというまに散らかしたりしちゃうから、全然楽しくないのよ。
伸坊さんは家事をしないダンナのためにこの本を書いたんじゃないな。
きっと家事をメンドーだと思っている世間の奥さま連中に「こんなに面白いんだからもっと
楽しんでみなさい」って言ってんだな。
だって最初の何ページか読んだだけで、私、掃除したくなっちゃったもの。
窓ガラスもきちんと磨いて、棚を買って散らばってる本をきちんと収納して、この際ダンナの
ジーンズもきっちりアイロンかけて(もちろん嫌がらせ)、会社から帰ってきたダンナが
「え?ココ、誰んち?」って戸惑っちゃうくらい、片づけたくなっちゃったも〜ん。
そうだっ!ダンナにも読ませよう!ヤツは凝り性だから我が家をピッカピカにしてくれるぞ。
『すごろく旅行日和 だれもしらない観光地を歩こう!』 一覧に戻る
◆石川浩司◆メディアファクトリー◆
石川浩司さんって誰だかわかるかな。
「たま」のランニングって言えばかなりの方がご存知でしょう。
そうです。あのちょっと風変わりな石川さんがすごろくを振って、あちこち知らない所に出没し、
いろんなことをしでかしちゃうっていう旅行記です。
どこから迷い込んだか覚えてないんですが、
石川さんの公式サイト「石川浩司のひとりでアッハッハー」で、この本の存在を知り、早速購入
いたしました。ひとりでアッハッハーも面白いよ。こっちは本を読んでから見ると数倍楽しめます。
旅行はすごろくを引くだけでなく、あらかじめ作っておいたクジもひきます。
すごろく旅行は石川さん一人というワケではなく、いい年こいた大人が数名参加します。
その中の参加者「クニちゃん」がとってもいい味を出しています。彼女の言動を見ているだけでも
楽しくなってきます。ふたりきりで旅行するって言ったらちょっと遠慮しちゃうタイプかも。
だって私と似てる。
ところでこの本の挿画、石川さん本人が描いているんですが、自画像、この感想の上に紹介して
いる南伸坊さんの自画像にそっくり。どっちも坊主。でも石川さんの顔っておにぎりじゃなくて
アケビっぽいんだよな。アケビじゃ例えが悪いか。わらじかなぁ。う〜ん。みんな若い子が
わからんもんばっかじゃ。石川さんは1961年生まれ。私と3歳しか違わないのかっ!
『自転車通勤で行こう』◆疋田智◆WAVE出版◆ 一覧に戻る
作者の疋田さんはインターネット上でも「自転車で通勤(通学)しようぢゃないかっ!」を発信。
そこで「なかなか売れない」とか「返本の山」と嘆かれていた本がこれ。
それがですねぇ、とんでもないですよ。時間をかけてじわじわと売れてくような予感。
疋田さんは東大卒で「ニュース23」のディレクター。プロフィールの画像からは報道関係の
ディレクターとは想像もつきません。絶対お笑いのディレクターかと思ってました。インパクト
ありすぎです。ガキ、泣きます。
自転車通勤を始めた経緯、疋田さんの奥さんが自転車に引きずり込まれていく過程、自転車のある
風景がテレビで映像を見るように(それ以上かも)伝わってきます。
自動車評論家の徳大寺有恒さんとの会話が可愛い。
「あのプリウスだって、やっぱり排気ガスは出すんだよ。ボクは思うんだ。クルマはもう最低限で
いいって。趣味で乗るクルマは楽しいけれど、もう社会がそれを許さない時代が来つつあると
思う。」
これが自動車が好きで好きでたまらない徳大寺さんのセリフなんです。
そう、日本にはクルマが多すぎる。せっかく「せまい日本、そんなに急いでドコへ行く」って
標語があるくらいのわが国。慌てず急がずのんびりと行こうじゃありませんか。
『吉井和哉のマル秘おセンチ日記』◆吉井和哉◆ロッキング・オン◆ 一覧に戻る
マル秘って機種依存文字っていうんでしたっけか。だからタイトルがものすげ〜怪しくなって
しまいましたが、○の中に「秘」っていうのがホントです。ごめんなさい、吉井さん。
吉井和哉って言われても、私はぜ〜んぜん聞き覚えのない方だったんですが、ロックバンド
「ザ・イエローモンキー」のヴォーカリストなんですね。(とか言いながら、やっぱりよく
わからんのだった)
会社の同僚に「あんたと同世代だから絶対面白いから読め」と言われて「う〜、他に読もうと
思ってる本たくさんあんだけどなぁ」とごねたところ「1時間で読めますからっ!」と猛烈に
薦められて、そんなに言うなら読んでみっかの、と読み始めたところ…、
困った。なかなか先に進めない。
文字が多いってワケでもなく、文章が読みにくいってことでもない。
逆に文字は少ない方だし、文章もすんなり入ってくる。
何故だ。
それは私の過去の記憶と重なる部分が多いからだ。
「ちあきなおみさんの喝采という歌が大好き」だったり、ボーリングに異常な興味を示したり、
お父さんに連れてってもらった所が北区の飛鳥山公園だったり。
自分の記憶と照らし合わせて読んでいくうちに、不覚にも涙が出てきてしまった。
まいったな。これじゃぁタイトルの「おセンチ」にすっかり取り込まれてしまってるではないか。
今までイエモン(ぐわー。省略すんの嫌いなんだよ〜)の曲は会社のカラオケ好き好き男の声で
しか聞いたことがなかったんだけど、この日記を書いた吉井さんの歌となればちゃんと聞いて
みたい。