10月の本棚 ■さらば夏の光よ
『海に降る雪』◆畑山博◆講談社文庫◆ 一覧に戻る
今から20年ほど前に旅先で出逢った人からもらった本の再読。
地方から上京してきて観光バス会社の事務をしながら、保老園を作るボランティア運動をしている
塩子とテレビ局の仕事をしている裕一。スタジオでふたりは出逢う。
思いきり恋愛小説。
塩子が裕一を「音のかみさん」と呼ぶあたりから、高尾山でのデート、同棲ごっこ、塩子の過去の
日記、とにかくなにをとってもくさくてくさくてたまらない。
・「…音のかみさん、なんだかきのうとぜんぜん違う人みたい」
「君だってそうさ。とかげだってそうさ。一晩たてば、みんな違う」
・「この指が、この指め。転校してきたばっかの子どもみたいに熱っついや」
「乱暴に使うと、そこだけ先に墓場へ行っちゃうぞ」
「指くらいなら大丈夫さ。心が先に行っちゃってる人だっているもん」
いくら昭和51年の作品だからって、このセリフはないんじゃないの?
…などとぶつぶつ言いながら、何度も何度も読み返しています。
以前「和 由布子さん」主演で映画化されまして、最初のデートのシーンが高尾山ではなく
室内プールになってましたから、当時としても古臭いと思われる部分があったんでしょう。
裕一役に田中隆三(あぁ、懐かしい)裕一の友人に奥田瑛二、塩子の友人に美保純。
でもその映画が意外と良かったんですなぁ。
ふたりとも背負うものが重すぎて、何度も挫折しながら向かう場所。
決してハッピーエンドとは言えない。こういう恋愛もあるってことだ。
『[新版] 社会人のための国語百科 カラー版』 一覧に戻る
◆編者代表:内田保男・石塚秀雄◆大修館書店◆
私が小学生の頃、一番好きだった本は人名辞典。
読んだことのある本の作家の年譜や作品群を読むのが楽しかった。
読んでいくうちに未読の本も読んだ気になってくるから不思議。
『社会人のための国語百科』はその頃読んでいた人名辞典と同じように、作家の顔写真、作品の背景が
載っている。ふとんの中で読むと、いつの間にか私は小学生の頃の私に戻ってるんですなぁ。
国文学、漢文、国語表現の辞典。
社会人のための、なのか。現代の社会人はココまで知らないとダメなんかな。
古典文学も詳しく載ってるんだけど、古典は苦手なんです、私。
そういえば小学生の頃も古典文学のページは開かなかったような覚えがあります。
下膨れの髪の長い女の人の絵、怖かったんですわ。大人になった今でもなんとなく怖いっす。
『この骨董が、アナタです。』◆仲畑貴志◆講談社◆ 一覧に戻る
いやぁ、面白い本に出逢いました。
骨董にとりつかれたオジサマのお話。重度骨董病患者。
ひとつのことに打ち込むってけっこう体力も使うし、気も遣います。相手は骨董品ですから、お金も
もちろんかかります。
とにかく可愛いんだわ、オジサマ。
たいして知りもしないのに「李朝のものなんかは、ありますか」などと咄嗟に見栄を張ってみた
ものの、結局骨董屋のオヤジに負かされてしまうんです。この場合負かされるというのは買わざるを
得ない状況に陥ってしまうっつうことです。
ホンモノとニセモノ。
自分がいくら惚れ込んだ仏像でもカラダとアタマが別の時代に作られたものだったりするんですな。
その事実を知った時のオジサマ。
空海の書に一目惚れしてから、しば〜らく「くーかいくーかい」と唱えながら駆け回ってる姿。
ソウルに行って海外への持ち出し禁止の壺の中に朝鮮人参をギュウギュウに詰めて持ち帰ったり。
何度も何度も笑わせていただきました。
講談社刊の月刊誌「本」に連載されてた23のエッセーと2つの書き下ろしエッセー。
装丁もいいぞ。カバーとって中を見ましょう。デコボコ加減がまたなんとも言えないんだなぁ。
数々のヒットを生んだコピーライターであり、作詞も手がけ、最近では毎日新聞の川柳のコーナーの
選者にもなってらっしゃるようで。オジサマと呼ぶにはまだ若すぎますか。1947年生まれ。
『黄山瀬』◆田宮虎彦◆光文社◆ 一覧に戻る
私の幼なじみのお父ちゃんから「泣いた本」ってことで薦められたんですが、なんせ昭和34年に
発行された本ですからねぇ。古本屋さんで探していたら幼なじみからある情報が。
「お父ちゃんが持ってるってさ〜」うぅ、最初から貸してくれ。
二度の結婚に失敗し、友人にも裏切られ、やっと出逢った女「きいの」。
いつの間にか「きいの」と暮らすようになり、道一郎は毎晩のように見ていた歩き続けている夢を
見なくなった。波瀾万丈の人生。道一郎には未来はない。
きいのは習字をしていた。引き出しの中に「黄山瀬」と何度も書いた反故(書き捨てたいらない紙)を
見つけ「黄山瀬」の意味を尋ねたが、きいのは答えようとしない。
仕事も落ち着き、ふたりは温泉旅行を計画する。
しかし、ここでもまた道一郎から女は去ってしまう。
道一郎はまた夢を見るようになっていた。
きいのが去り、秋になって道一郎はひとりきりで温泉へ向かう。
きいのが選んだその場所は見渡す限りの谷間がすべて黄色に色づいた「黄山瀬」という谷。
そこはきいのの故郷であった。
…ってな話。
こうやって書くと戦争で人生を狂わされた道一郎が気の毒に思えてくるかもしれませんね。
道一郎にも原因はあるんですけど。
戦争から帰ってきた男の人、すべてが道一郎と同じような運命を辿ったとは言い切れないし、それに
しても美味しい話に飛びつきすぎじゃ。
「黄山瀬」は「きやませ」かと思ってましたが、正確には「きやまぜ」。
久々に布張りの古い本を読みました。発行当時すでに大人になっていた人には落涙本かもしれません。
戦争を知らない世代、そして女の私にはきいのの生き方には共感できたけど、道一郎の生き方には
疑問を抱いてしまいました。
ところでこの本。『黄山瀬』の他に5つの短編が収められています。
夫に死なれた後、娘と二人暮らしだった万寿子はやがて夫と同じ会社に学生アルバイトとして働いて
いた砂田と暮らすようになります。砂田は結婚しようと万寿子を連れて実家に戻ろうとするのですが
あとバスで2時間というところで足踏みをしてしまいます。万寿子だけを明石の宿に残し、先に実家に
向かう砂田。楽しかった万寿子と娘と砂田の生活にはもう戻れない。『明石海峡』
この『明石海峡』の方が表題作の『黄山瀬』よりじ〜んときたのは、やはり私が女だからでしょうか?
『昔の部屋』◆出久根達郎◆筑摩書房◆ 一覧に戻る
過去と秘密の短編集。
■かぶれる
父親の急死によって高校進学を断念した浩吉は住み込みで手取り三千円の古本屋に
就職する。古本屋で出逢った人たち。浩吉の心の動き。初恋にも似たせつない気持ち。
でも浩吉はその気持ちが恋だとは全く気づかない。
■紐
わらしべ長者にヒントを得て作った落語「紐長者」。
作者が高座で語りたくない理由。人を笑わせる落語なのに、落語が出来る前の物語は
ちょっと悲しい。
■忍ぶ恋
小学校の時にみかんの汁で書いたあぶりだし。
一枚目は「努力」という文字を練習し、二枚目に清書、三枚目は隣の人に見えないように
自分の好きな言葉を書く。
みかんが買えずにじゃがいもを持ってきた芦川に東京から転校してきた知子はそっとみかんを渡す。
ふたりが書いた「好きな言葉」はふたりが大人になった時に浮き上がってくる。
■黒い池
久しぶりに訪れた故郷。村は変わっていた。しかし、男の手には感触が残っていた。
そして、子どもの頃の記憶と大人になった男の記憶が一致する。
人がいなくなった村というのは何故か背筋が冷たくなる。
■昔の部屋
この短編集で唯一書き下ろし作品。
浩一は若い頃一緒に同人誌を出版していた佐藤井郎と電車の中で見かける。
佐藤は借金取りに追われ中田清と名乗っていた。
佐藤の書いた「暗流」は当時23歳の若者にしては年寄りくさかった。
日頃から小説は読者を元気づけるものでなければならないという持論の佐藤らしからぬ作品。
「暗流」という小説は実際に著者の出久根達郎さんが若い頃に同人誌に寄せた作品である。
50ページの短編。これを新作の中で発表するとは。
改行がほとんどなく、重婚という重い題材で読むほどに苦しくなってくる。
1つの作品として読むにはつらいものがあるが、こうして新しい小説の中にぽんと出てくると
著者の意図がはっきりわかってくる。
重苦しいままラストシーンになだれ込むのかと思ったらちょっと「?」。
作品が微妙に変化している。前半と後半、同じ人が書いたとは思えない。書いてるうちに人格が
変わってしまったのか。それにしても妙な作品。
『せん−さく』◆永嶋恵美◆幻冬舎◆ 一覧に戻る
「ネット」の魔力を初めて等身大のリアリティで描き切った。中条省平氏、絶賛!』(帯より)
ところで「中条省平」って誰?学習院大学の教授って、そんなに有名な人なん?
インターネットの掲示板で知り合った29歳の典子と中学生の遼介。
遼介の「帰りたくなくって…」という言葉に典子はほんの少しだけ、とつきあうことにした。
インターネットの匿名性を生かした長編ミステリ…と言いたいところですが、なんと申しましょうか、
もしかして作者はインターネットの世界のことをそんなに知らないのではないか、もしくは知っていて
もすごく狭い世界を深く知ってるだけなのではないか…そんな気がしました。まぁ、インターネットの
中だけの物語じゃないからな。
どうせなら「そこまで書かなくてもいい」ってくらいインターネットの世界を描いてほしかった。
現実世界との微妙なつながりを描くにはもっともっと濃くてもよかったのではないか。
しかし、少年凶悪犯罪、殺人計画、ネット中毒、ひきこもり、親殺し…と、よくもまぁこんなに
流行ってる(と言ってはいけないのか)モノばかりを集めてつなぎ合わせたもんだ。
流行っているモノを書くのは難しい。いろんな人が書いてるから。
彼女は私と同い年。私から見たら「ナニを考えてるか、どうしてそんな考えにいきつくのか
わからない」少年像を描いている。もともと私がわからない少年のやることだから遼介の行動や
気持ちになかなか共感出来ない。
『13のエロチカ』◆坂東眞砂子◆角川書店◆ 一覧に戻る
私が翻訳モノを苦手とする理由がここにあった。
登場人物の名前がカタカナってとこがダメなんだ。覚えられないってだけじゃなくて、名前以外の
ことを知りたいと思えないんだ。
坂東眞砂子さんの作品はホラーしか読んだことがない。
帯に「直木賞作家の新境地 傑作官能小説集」ってあるからこういう小説は初めてなんでしょう。
彼女の今までの作品は妙に生々しい性描写があって、ますます恐怖をかきたててくれた。
それが最初から最後まで男根だの膣だのって書かれたんじゃ読んでるこっちが冷めてきちゃうってば。
お願い。元の坂東さんに戻って下さい。
タヒチにいる坂東さんには私の声は届かないだろうけど。
『オダギリジョーセーターブック』◆日本ヴォーグ社◆ 一覧に戻る
あらら〜。なんだかんだ言って買っちまいました〜。
セーターブックなんか10年以上前に買ったきりだぞ。
いや、その時はちゃんと編んだんですけどね、セーター。えへへ。
今回はセーターを編むためじゃなくて写真集として買いましたの。
今まで好き好き〜と言いながら気づかなかったガチャボコの歯並び。でかい耳たぶ。
やっぱセーターがメインだからオダギリ君が作ったアクセサリーはしてないようですな。
それにしてもベージュのセーターがよく似合う。
最近の女の子ってセーターなんか編むのかな。
セーター貰っちゃうと困るって男の子、結構いますよね。
10年以上前に編んだセーターは当時の彼にバレンタインのプレゼントとしてあげたんだけど、
その彼、すっごく器用で、ホワイトデーのお返しに手編みのセーターをくれたんですわ。
なんだかとっても複雑な気持ちがしたのを覚えております。
『スクリーミング・ブルー』◆藤木稟◆集英社◆ 一覧に戻る
どこまでも透き通る海中を漂う美しい死体。
犯人を追う警視庁のエリート刑事・久義英一と心理捜査官の夏目淳子。
沖縄の少女・朝香。
細かい疑問点はいくつかあるものの、久しぶりに素晴らしい作品に出逢えた気がします。
寝る前にちょっと読んだのがいけなかった。止まらない。どうしようどうしようと呟きつつ、
「残りは明日」とやっと諦めたら今度はひどく恐ろしい夢を見た。
夢に出てきたのは血液と内臓を抜き取られた死体。小説の印象があまりにも強かったのか、
いつもは夢の中で夢だと気づくのに、その日は飛び起きて目の前に放ってあった『スクリーミング・
ブルー』の表紙を見て息が苦しくなった。水の中に漂う全裸の女性と真っ赤なハイビスカス。
そりゃ焦るわいな。
沖縄の方言はテレビやラジオでは聞いたことはあったけど活字として読むのは初めて。
連続猟奇殺人事件の緊張したの空気の中に沖縄ののんびりした柔らかい言葉。
一度も訪れたことのない沖縄なのに細い路地まで目に浮かんでくる。行ってみるか、沖縄。
『・・・・・・の反対は?』◆リチャード・ウィルバー作・絵/長田弘・訳◆みすず書房◆ 一覧に戻る
詩人の長田弘さんが子どもから老人までたくさんの人に読まれることを願って選んだ7冊の絵本の
うちの1冊。1本の太いペンだけで描かれたような絵が気に入って購入。
「くたばっちまえ」の反対は?「ガラクタ」の反対は?「7月」の反対は?
こういう本を読むといつも感じます。翻訳って難しいなぁって。
ハッキリ言ってしまえば「ユーモアとウィットにあふれる39のなぞなぞ話」がひとつも
わからなかったっちゅうことです。まいったなぁ。子供が読んだら面白いのかなぁ。
それなら絵だけ見て楽しもうと思ったのですが、やっぱり説明がないと楽しめないんですわ。
見つけた時は面白そうだと思ったんですけどねぇ。う〜ん。う〜〜〜ん。
…で、トモダチにむりやりプレゼント。普通はダメだと思った本は人にはあげないんですが、
彼女と彼女の息子がどんな反応を示してくれるか楽しみでつい押しつけてしまいました。
ひどいなぁ〜。
『かくれちゃったの、だぁれだ』◆三原順◆白泉社◆ 一覧に戻る
私がよく覗くサイトに「復刊ドットコム」というとこがあるんですが、そこで見つけた絵本。
三原順って言えば「はみだしっこ」でんがな。昭和50年代に流行ってたんだけど、名前を
知らない人でも絵を見れば思い出す人も多いはず。
当時は私、この人の作品、好きになれなかったんです。
神経質そうな。子どもがでこっぱちでみんな2等身、とか。そういうのダメだったんです。
それなのに何故わざわざ予約までして購入したか。>諸手数料税金込みで3,305円
手にしたあとで理由がわかりました。呼び寄せられてしまったんですな、三原順に。
山の近くの小さな村に住む仔猫モーリスが見た村の子ども達。
村一番の汚し屋「ヘンリー・Jr」
村で一番オシャレで可愛いと思っている「キャロル」
しっかり者の「シャーロット」なんでも作っちゃう「ロバート」、いばり屋の「ベン」。
そして丘の向うの農場の「D・D」。
おとなたちはみんな「D・D」を嫌っているようだけど、子ども達はみんな「D・D」が好き。
ある日「D・D」が村のみんなを秘密の場所に案内しようとして事件は起こります。
落雷。かくれちゃったの、だぁれだ?
子どもの死。時代は繰り返す、か。
『あくび猫』◆南條竹則◆文藝春秋◆ 一覧に戻る
現代版「吾輩は猫である」。…と言っても本家の方は未読。
帯の紹介文に書いてあったので、多分そうなんでしょう。
鰡野阿苦毘(とどのあくび・「鰡」は魚へんに留。これで「とど」)は三十路独身作家。
飼い猫のチビから見たあくび先生の日常生活。
あくび先生って美味しいモノがとっても好きなのね。美味しいモノが嫌いって人はいないと
思いますが。あくび先生だけでなく、彼を取り巻く人たちもみんな無類の美味しいモノ好き。
猫のチビはあくび先生に連れられて一緒になって美味しいモノを食べます。
チビがカワイイんですわ〜。動きがとってもいい。
古くてコナを吹いてるようなお爺さん猫の「無名先生」から「魂だけご主人様についていく技」の
「猫爾薀(ねこにおん)」を教わる下りは思わずガンバレ〜って応援しちゃいそう。
「別冊文藝春秋」で連載。1編ごとにちょっとしたオチがついてて小咄風。
南伸坊さんの装幀・本文カットもいいですねぇ。厚いワリに軽い。
ページの上の部分(…ってなんて言うんだっけ?)が切りそろえられてないんで少しめくりにくい。
でもこのガチャボコ加減があくび先生っぽくていい感じ。
『アンネナプキンの社会史』◆小野清美◆宝島社文庫◆ 一覧に戻る
中学1年の時にアメリカ帰りの友人が私に「アメリカのナプキン」をくれました。
告白するのもどうかと思うんですが、私、初潮(あぁ、懐かしい)中3の終わりだったんですね。
使い道はなかったのですが、とりあえずバラバラに分解して「へ〜、こんなんで大丈夫なんか〜」と
感心していたのでした。やばいですか。
…で、この本はその生理用ナプキンの世界と日本から見た社会史。
最初のタイトルが「ミイラの膣からタンポンが発見された」です。もうこれだけで驚きです。
ダンナに話したら「吸収力の強いタンポン入れたからミイラになったんじゃねぇの?」などとほざいて
ますが…んなワケあるかいっ。
私、すっかり勘違いしてたのですが「アンネナプキン」の「アンネ」って生理のことだと思ってた
んです。「アンネの日記」と口にするのが当時は恥ずかしくて、まぁ、そういえば同級生も「今日
アンネなの〜」なんて言ってるのいなかったもんな。知らなかったのは私だけか。
これから先、何年あるのかわかりませんが、月に一度はつきあわなくてはならない行事。
つくづくナプキンが進化した後の時代に生まれてよかったな〜と思います。
これを読んでも生理痛は解消されないけど、昔の人のことを思えば気分的には違ってくるんじゃない
かな。
『写真学生』◆小林紀晴◆集英社◆ 一覧に戻る
ある写真家の青春物語。
「なぜ、僕はカメラマンになったのだろう。」(帯から)
長野で生まれ育った高校生がカメラマンをめざし東京に出る。
担任の先生に将来のことを聞かれ「カメラマンになる」とは答えたものの、逆に「それはどうやって
なるんだ?」と聞かれてしまった職業。
当時の東京はバブル絶頂期で岡田有希子の投身自殺、ビートたけしとたけし軍団による写真週刊誌
編集部乱入など衝撃的な事件が相次いだ。そして記録的な空梅雨による深刻な水不足。
私も新宿で働いていた。
毎日毎日残業ばっかりして今では考えられないほどのお給料をもらい、仕事が終わったあとも
「ヒマだから」なんちゅう理由で歌舞伎町でアルバイトまでしていたのだ。
置かれた環境は違っても記憶って繋がってるのね。
この本を読んでいるうちに私の(たぶん)青春と呼ばれる時代が甦ってきた。
もしかしたらあの時歌舞伎町でカメラを構えていた青年は彼ではなかったか、なんて思えてくる。
彼が学生の頃に撮った写真の数々も彼の心をそのまま映している。
答えを見つけようとしてもがく小林くんがとってもいい。