10月の本棚 ■本屋めぐりオフでもすっか。
『ガモラ』◆楳図かずお◆太田出版◆ 一覧に戻る
楳図かずお先生の貸本時代の未完作品『ガモラ』が蘇りました。
厚さ4センチ弱もあるこのコミック。未完の作品にエピローグとして著者本人が14頁の
書き下ろしを加えて復刻。
当時の作風は思いきり手塚ワールドでして、現代に登場する猿飛博士(なんと4歳で博士号を
とって「ガモラ伝説」を解明していく男の子なんて手塚治虫の作品に出てきそうな感じだもん
なぁ。
…で、加筆されたエピローグ。
当初「The End」という文字だけでもいいから描いて下さいという編集者の言葉に「面倒臭い」と
逃げ腰だった楳図先生も結局14頁、出来るだけ当時のタッチに近い形で加筆したんですがね…。
いやぁ、参りました。
手塚治虫ふうの猿飛博士が「まことちゃん」になってるよぉ。
貸本時代に自分の手法を模索していた楳図先生が30年たったらもう元には戻れないってことが
よーくわかりました。
「ガーッ!モーッ!」という牛のような鳴き声から我猛羅と名付けられた怪獣。
「以下4巻へつづく」と書かれているにも関わらず、そのまま30年以上も放っておかれた作品。
他『マスクボーイ』収録。
『蚤の心臓ファンクラブ』◆萩原亨◆講談社◆ 一覧に戻る
群像新人文学賞「当選」作。
「受賞作品」とか「入賞作品」ならわかるけど、なに?当選って。
からんからーん、ハイ、アナタが100万人目の応募者でぇ〜す。
だから内容はともかくあったりーっ!パチパチ…ってなワケで決まったワケはなかろうが。
いやだわ。知らない作家さんの作品をちょっと読んで開拓してみようと思ったんだけど、
これは開拓しなくてもいい分野でしたわ。
なんか最初から違和感があったんだよな。
自殺しようと思って北海道の山奥に吹雪の中入って、結局死にきれずに帰ってきた美智。
あんまりガキっぽいんで中学生くらいかなぁと思って読み始めたんですが、とっくに学校は
卒業して、義母つきのダンナと一緒に住んでたの。
まぁ、帰ってきてから妙なコトに目覚めてしまって、ネットサーフィンなんかやってると
たまに「あっ、いけねぇ」ってな電波発してるようなサイトを作ってしまうんです。
よくあると言えばよくある話ですが。自分じゃ誰にもわかってもらえないようなサイトを
作ることが出来ないんで、ちょーっとだけ羨ましいような気もしますけどね。
とにかくこの主人公の美智とは関わりたくない。
著者、1972年生まれ。(電卓にて計算中)なにぃ?29ぅぅ?
本のつくりは好きだけど、装画がなぁ…。パッと見じゃわからなかったけど、あんまり好きな
絵じゃないなぁ。美智との性格とは合ってるかもしれんけど。
税別で1700円。高い。本の値段で安いの高いのはあんまり言いたくないけど、やっぱ高い。
1200円くらいかと思った。買った時には気づかなかった。私の完敗。
『スカートさん1』◆吉田戦車◆ソニー・マガジンズ◆ 一覧に戻る
だはははは。また吉田戦車だよー。
全部4コマ漫画なんですが、この中に何度も登場する川上さん(←たぶんこの人がスカートさん)が、
実在する私の友人にそっくり。表情も性格も。あぁ、画像載せたい。彼女からのメールも掲載したい。
ギャグ漫画の感想を書くのは難しい。4コマ漫画の感想だったらなおさらです。
実際に見てもらわないと伝わらないんだよな。
去年の5月発行だから、さすがにまだ絶版にはなってないだろうけど、ちょっと見つけにくい本なんで
もしまだ読んだことないって方は早めにどっかで探せっ!
恋をするとおっぱいだして生活しちまう川上さん、広葉樹のモク江さん、ラグビー部のタマ好き美人
マネージャー、鷹匠の三郎丸より流行に敏感な鷹など盛りだくさんの1冊。
つづき出ないかなぁ。もう連載してないのかなぁ。私、コミック雑誌読まないからわからないんだ
よなぁ。
『マンボウ遺言状』◆北杜夫◆新潮社◆ 一覧に戻る
躁鬱病に悩まされながら精神科の医師と作家を続けてきた北杜夫。
その北杜夫が「早く死にたい、痛くなく!」と遺言状を書いた。
どこまでがウソかホントかわからないマンボウワールド。
前に読んだ『孫ニモ負ケズ』は自分の孫との闘いの日々を綴ったエッセーでしたが、あの時も相当死に
たがってたもんなぁ。
でもあとがきで「あとはよろしく頼む」なんて書いてるクセにその後も新作を発表している模様。
躁の状態になったんかいな。
私もどちらかというとあんまり長生きしたくない方でして、ダンナに「美人薄命って言うじゃん。
あとのことはよろしく頼むヨ」と言ったら「あんたはあちこち痛いって言いながら結構マメに病院
通いしてるから100歳くらいまで生きるんじゃないの?あー、やだやだ。100歳になっても意地悪
なんだよ、きっと。俺、先に死のおーっと。」なんて言い腐りやがった。
人間、健康で誰にも迷惑をかけないんだったら長生きしてもいいとは思うんですが、私の場合、
いろんな持病があるので、健康に長生きなんて恐らく無理。
不健康に長生き。あぁ、痛いのイヤだなぁ。
著者はすごい腰痛持ちで躁と鬱の差が激しい。私もさすがにまだ30代だから著者ほどではないけど、
椎間板ヘルニアだのテンションの差が激しかったりする。しかも最近は更年期障害まで出てきた。
更年期障害が出てきたらセーリ止まっちゃえばいいのに。そーすりゃ悩みがひとつ減る。
まぁ、なにが大変かって、私と一緒に暮らしているダンナが一番大変なんだろうなぁ。
著者の家族はそこらへん、よーくわかってるんで「痛いくらいじゃ死にません」と相手にしてないが、
うちの場合、ダンナがとにかく病院嫌い、人が苦しんでるのを見るのも嫌いなんで私がバタバタすると
もうふとんかぶって寝たふりするんだわな。←最近はホントに眠くなっちゃうらしい。
この本をダンナに読ませて少しでもラクにさせてあげたいわ。
ホントは放っておいていいんだよってな。
『チェーンレター』◆青沼静也◆角川書店◆ 一覧に戻る
んー?チェーンメールじゃなくてチェーンレター?
なんだか懐かしいですねぇ。いい思い出はないけど。
私が中学生の時にもらった「幸福の手紙」もこのチェーンメールの類です。
差出人はうちの2軒隣の同級生でした。しかも全然話したこともない同級生。
「幸福の手紙」は私のところで終わりましたが、この『チェーンレター』の手紙は止まることを
せず、しかも出さなかった人に不幸が訪れます。
誰がどこで止めればいいのかわからないこのチェーンレター。
前半はたらたら手紙が行ったり来たりしてたんだけど、後半で一気に急展開。
…とはいうものの、こう展開していくであろうことが前半になんとなくわかってしまいちょっと残念。
結局インターネットが普及した今でさえ同じようなメールが届くってことは、古くて新しい話題なん
でしょうけどねぇ。もうちょっと、著者の筆力があったらもっと怖い作品になっていたんではないか
と。
著者経歴は「埼玉県出身。本書でホラー作家としてデビュー」のみ。
他にも別名でなにか書いてたのかなぁ。ホラーならもっと謎の部分を含んでもいいから私を恐怖の
どん底に突き落としてほしかったなぁ。
『愛の領分』◆藤田宜永◆文藝春秋◆ 一覧に戻る
ため息。
宮武淳蔵は妻に先立たれ、息子と二人暮らし。テーラー・ムサシで静かな日々を送っていた。
ある雨の日、突然やってきたのは若い頃からの知人・高瀬昌平。
高瀬の妻・美保子は筋無力症で入退院を繰り返しているという。
昔、淳蔵は美保子と駆け落ちしかけたことがあり、昌平がその事実を知っているかどうかは
わからない。
昌平は淳蔵にスーツを注文する。
元気のない美保子を励ましてやってくれと言われ、高瀬家を訪れる淳蔵。
そこで淳蔵は高瀬家の娘に絵を教えている馬淵佳世と出逢う。
4人の関係は非常にややこしい。
淳蔵は息子がいるといっても妻がいるわけではないし、佳世は40近いとは言え独身だ。
だから大人同士の恋愛であって隠し事などしなくてもいいはず。
それなのにこの二人には帯の文句にもあるように「秘密の匂いがする」。
男と女、4人の微妙な関係。それは脆く崩れやすい。いや、もう既に壊れているのかもしれない。
ガラスのように繊細な男女の関係は一度壊れてしまったらもう元へは戻れないということか。
さらさらと砂時計のように残酷に流れていく時間。
刻々と迫る終わりと始まりにどうしていいかわからない自分がいた。
『大日本天狗党絵詞(一)〜(四)』◆黒田硫黄◆アフタヌーンKC◆ 一覧に戻る
やっと見つけたよぉ〜ん。
黒田硫黄は「コミックQUE」で読んで以来すげーファンでして。
以前『大王』っちゅう作品を読んだんですけど、これがまたかっこよくて。
なにがかっこいいかってさ、絵のタッチとよくわからん内容だわさ。
楳図かずお先生の好きな理由に「スクリーントーンを使わない」ってのがあげられるんですが、
著者もその一人でありまして、でもペンのタッチは楳図かずお先生とは正反対。
楳図先生が細かい線でみっちり描き込むのに対し、著者は太い筆ペンで描いたようなタッチです。
パラパラとページをめくると黒い部分が多い。
物語はちょっと小野不由美の十二国記に似ているとこがあって、ある一人の少女が突然行方不明に
なって、それが天狗にさらわれたことによるものでして。
天狗っていってもよくある天狗(例えば高尾山の駅にいきなりある天狗の面)じゃなくて、普段は
人のカラダの中に入ってるんですよ。普通のオジサンのクチからガボッとカラスが出てきて「もう
120年は生きてるまっとうな天狗だよ」なんて喋る。クチからカラスが抜けると、その人は魂が
抜けたように動かなくなる。
主人公の「ある一人の少女」の名はシノブ。
小学校の入学式で天狗にさらわれた後、少女になり大人の女になっていく過程で自分のもと住んで
いた家に帰ってはみたものの、そこには別のシノブが住んでいた。そして…。
著者の描く女の子ってなんでこんなにかっこいいんでしょう。
そんでもって比良井(若天狗)を始めとする男たちのかっこわるさ。かっこわるいのにかっこいい。
矛盾してますなぁ。でもいいんだってば、ホントに。
『茄子』◆黒田硫黄◆講談社◆ 一覧に戻る
コミック続きます。しかも同じ著者、黒田硫黄。
ナスをテーマに描かれた8編の短編集。
驚いたことにこの中の「アンダルシアの夏」は自転車のレースの物語なんですけどね。
『このおもしろさが判る奴は本物だ。(帯から)』と宮崎駿氏が絶賛しております。
まいりましたね。私はこの「アンダルシアの夏」も面白かったけど「アンダルシアの夏」以外の
作品の方が面白かったんだよなぁ。ま、人それぞれですからね。
特に18歳の女の子と13歳の男の子が見知らぬ家に転がり込む「3人(前・後編)」は黒田硫黄の
描いた作品の中でも3本指に入る作品だと思います。あ、私の3本指ね。
しかし何度読んでも黒田硫黄はいい。
読み終わった時にどうしても茄子が食べたくなってしまい、近所の農家から100円で6本買って
きました。茄子を炒めて水と砂糖と鷹の爪を加えて7〜8分煮て、さらに醤油を加えて煮込んだ
茄子の田舎煮はとっても美味しかった。
『黒い福音』◆松本清張◆新潮文庫◆ 一覧に戻る
実際に昭和34年3月に起きたスチュワーデス殺人事件を題材に描かれた社会派ミステリー。
久しぶりにちょっと前の本を読むとガツンとくることがあります。
まさにこの『黒い福音』がガツンでした。
実はこの本、先月読んだ『東京自転車日記/泉麻人』の中で紹介されてたんですね。
小説の中では仮名になっているけど、本当にあった事件をもとに松本清張が事件の謎を追ってい
きます。
まるで当時の事件を追った刑事か新聞記者のように執拗に。
殺されたのは日本人ですが、容疑者や容疑者を取り巻く環境は外国人ばかりなので、とにかく
カタカナの名前がたくさん出てきます。
それなのに読みやすい。
カタカナの名前が出てくるたびに前述した内容を簡単に繰り返すので、あぁ、この人はこういう
体格で、こんな性格の人だったなとすぐに浮かんでくるんです。
こうやって繰り返すことで読者に印象づけるというのは簡単なようで難しい。
名前だけでなく、周辺を取り巻く環境を細かい部分まで延々と記述していくことで、ザワザワと
した怪しい印象が脳裏に刻まれる。
殺人現場となった玄白寺川は私の家の近所の善福寺川。
今は桜の名所として結構有名になりましたが、殺人事件があったということを知っている人は
いるんでしょうか?重要な情報を提供したという近所の高校生はもう60歳前後。まだあそこに
住んでるとしたらちょっと会ってみたい気もします。
宗教を扱った問題というのは触れてはいけない部分というのがありますよね。
みんな知ってるし、知りたいことたくさんあるのに。
今でも松本清張が生きていたら書きたかった事件、たくさんあるんじゃないかな。
『友だちは無駄である』◆佐野洋子◆筑摩書房◆ 一覧に戻る
私の嫌いな言葉の中に「私、××する人だから」というのがある。
なぜ「私、無駄遣いしちゃうのよ」を「私、無駄遣いしちゃう人だから」って言うのか。
仲のいい友人には「その、なになにする人だからって言い方、おかしいよ」って言っちゃうんで
すけどねぇ。相手は絵本・童話・エッセイを書く佐野洋子。しかもダンナは谷川俊太郎ときたも
んだ。おまけにこの本は谷川俊太郎との対談がほとんどを占める。
著者は「友だちは無駄」と言い「でもその無駄がいい」という。
私はワガママだから友だちを選ぶ。何年つきあってきた人でも友だちと呼べる人は何人もいない。
ただの知人だ。相手がどう思おうとただ知っているだけなんである。
高校を卒業してから母に「あんまり広く浅くつきあってないで、ちゃんとした友だちを作りなさ
いよ」と言われたことがある。なんだ、ちゃんとした友だちって。
そんなこと言われなくたって、今、ちゃんといるじゃないか。高飛車な言い方だけど、厳選された
友だちが。私のことを「すっげーワガママ」とわかっていたって、会えば話の尽きない友だちがい
るんですよ。だからご心配なく。←誰に言ってるのか?
著書に関しては内容は面白いけど腹が立った。著者のファンの方、すみません。
でも著者の『100万回生きたねこ』は好きなのよ。
面白かったのはご主人である谷川俊太郎が気にしないようなフリをしつつも、佐野洋子の過去の男が
気になっているような会話。やっぱ詩人でも男なんだなって。