10月の本棚 ■眠くてしかたありません。
『大王』◆黒田硫黄◆イースト・プレス◆
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滅多に知らない人の描いたコミックは読まないんだけど、ダンナが買ってきたんでちょっと読んで
みました。
コミックをここで説明するのは難しい。
絵も物語もいい。うまいかどうかはわからないけど(ダンナに言わせるととってもうまいらしい。)
私は好きだな。
中でも、同棲していた男が出ていってしまったアパートの隣の部屋に、なにか食い物はないかと訪
ねていったら象が住んでいたという「象夏」とちょっと色っぽい蚊の恩返し「蚊」は特にいい。
うちの隣の部屋にも象、いないかな。ドアを開けたら象のお尻。部屋いっぱいの象。
「蚊」のラストは絶妙。オチはわかってはいたけど。男って酷いな。(ホントに)
長編モノより短編で夢のような曖昧な話をもっともっと描いてほしい。
『夏の口紅』◆樋口有介◆角川文庫◆
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大学3年生のぼく・礼司の父親は15年前に母と離婚して家を出ていた。その父が死んで礼司に残
されたモノは2匹の蝶と、妹と名乗る「季里子」。
青春小説です。ちょっとミステリー。
樋口さんの書く男の子は私が出会った男の子にはいないタイプが多い。
そこそこかっこよくて、冷静(実は冷静に見えるだけ?)で、理性があって、お母さんと仲がいい。
…なんて書くと、今までどんな男の子とつきあってきたのか?って言われそうですね。
何年も会っていない父が何故、礼司に蝶を託したのか。何故、今まで気にも留めなかった父親の
存在が父の死後、こんなにも気になりだしたのか。
「季里子」の存在が妙に色っぽい。私には兄がいない。私のおっとうは外でコドモを作った気配が
ないので、小説のような「兄」が突然目の前に現れる、ということもない。
まぁ、それは家族にとっては当たり前のことなんだけど、こんなミステリアスな恋(!)が出来る
のなら、どっかからボクはキミのお兄さんだよなんて出てこないかなぁなどと不謹慎なことを考え
てしまうんである。
「二十歳を過ぎてからの初恋なんて…」。礼司くん、でも、それはかっこいいよ。
『特選!くらいまっくす99』◆永田守弘×荒木経惟◆
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あはははは。エロ本ですよ〜。
雑誌「ダカーポ」創刊以来18年続いてる「くらいまっくす」の特別編集です。
いろんな官能小説のクライマックスのシーンだけ集めてドカンと掲載。
そのエロ活字に天才アラーキーのエロ写真がどかんどかん、と。あは〜ん。
目次だけでもエロってます。
・くらいまっくす・おしり・うしろからまえから・あそこ・なめる・しゃぶる・おっぱい
・くわえる・すう・あし・いじる・こする・ゆび・はじめて・はめる・しめる・おなにー
・ぬれる・もだえる・れずびあん・うめく・わめく・いたぶる・もれる・ちびる・よがり・なく
あーあ。キーボード打って腰が砕けてきちゃいました。
…と言っても中身はそんなにたいしたことなかった。ふふ。
だって、クライマックスの最後にいちいち一言オチがついてるんですが、きっと男の人ならこの
一言で一気に萎えるだろうなぁ〜っちゅうようなオチなんだもん。女の私がそんなこと言うのも
なんですが。
ただアラーキーの写真は相変わらずステキです。女の人の一番いい表情とカタチをよくご存知で
らっしゃる。
『孫ニモ負ケズ』◆北杜夫◆新潮社◆
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北杜夫と言えば、私の中では『船乗りクプクプの冒険』。他にもたくさんあるのですが、私はこの
作品が一番スキ。
『船乗りクプクプの冒険』はその名の通り、冒険モノでございます。
以前、北杜夫さんは躁鬱病、というようなことを聞いたことがあったのですが『孫ニモ負ケズ』は、
そんな北さんの娘さんに子供が産まれて、いきなりお爺ちゃんになり、その孫との格闘記です。
躁鬱病は考える人間であれば誰もがココロの中に持っている病気だと私は思っています。
その症状が強いか、弱いか、というだけで。
現に私も鬱を抱えてて、何カ月に一度、どこにも外出できなくなり、電話に出ることも辛くなっ
てきます。北さんはその症状が強いらしい。家族や仕事でかかわりのある人たちは症状が出るたびに
大きな不安を抱えることになります。
自分のことだけでも精一杯なのに孫はお構いなしに突進してくる。
歩くようになって、言葉を使うようになって、狡賢くなってくる。
解説には躁鬱病のことが出ているけど、解説を読まずに北さんの過去を知らない人が読んだら
「なーんだ、やっぱり親ばかならぬ爺バカ日記じゃないか」って思うかも知れません。
北さんのことを少しでも解ると「躁鬱日記」が見えてきます。
『街の座標』◆清水博子◆集英社◆
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きれいな本です。すばる文学賞受賞作品。
物語は女流作家Iの作品について卒論を書こうとしたけど、どうしても書けない女子学生が、
柳という他の大学の男子学生に代筆を頼むことから始まるのですが…。
東京の下北沢が舞台。迷路のような、いろんな食べ物の匂いがごちゃまぜになった街。
文学賞の選考会では異例の4時間超の討論が行われたとか。
本職の選考委員が4時間も悩むんだから感想は難しいよな。ちょっと安心した。
セリフを「カッコ」でくくらず、作品の中に埋め込んでゆくという形式には少し戸惑いましたが、
コレも慣れると心地よく、クセになってしまいました。
ただ心地よいわりには読後の疲労感はかなりのものでした。安部公房を読んだ時のような…。
『キリンと暮らす クジラと眠る』◆アクセル・ハッケル作/ミヒャエル・ソーバ絵◆
◆那須田淳/木本栄 共訳◆講談社◆
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なんといってもタイトルがいいっ!夢のようではないですか。
あのクビのなが〜いキリンと暮らすんですよ。あのプランクトンをぐわ〜っとひと飲みにして
しまう、クジラと眠るんですよ。
挿画もとってもステキ。本屋さんで絵だけ見ても損はしません。ミミズの気持ち、ゴキブリの
気持ち、ハイエナの気持ち。他にも人間がよくテレビや動物園などでよく見かける動物たちが
いっぱい出てきます。
本屋さんでは児童書の絵本の本棚にありましたが、これはどちらかというと大人のためのスパイスの
きいた童話です。きれいな装幀ですから贈り物にもいいかもしれません。
『Piss
ピス
』◆室井佑月◆講談社◆
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クレイジーな愛と性を描く最新作品集。
「生きるのに飽きたらムロイを読め。」ビートたけし氏絶賛の短編集です。
薄いグリーンの液体が入ったグラスの表紙がとってもきれいです。
帯にもあるように、まさにクレイジーな愛と性。タイトルの「piss」ってのは某エロ英和
辞典のサイトで調べたら「おしっこ」っちゅう意味らしい。(ダンナに聞いたら「小便のこと
だろ」といとも簡単に答えられてしまった。わざわざインターネットで調べることもなかったな)
グリーンの液体はおしっこってことか。うむ。
作者はモデル、女優、レースクイーン、銀座ホステスなどの職業を経験してるようです。
著者近影、さすがにキレイです。27歳。
キレイなおねーさんが書いた小説にそんなに期待はしてなかったんだけど…。まいったな。
泣いちゃったよ。
「Piss」のみゆきも「銀の雨」の萌も一生懸命、人を愛している。たしかに普通じゃない
けど、愛情にはそれぞれのカタチがあって、決してクレイジーではないと思う。
「鼈(すっぽん)のスープ」のカナコの生き方も間違ってはいない。(と言い切ってしまうと
ちょっと神経を疑われるかもしれないな)
次回作が楽しみな作家さんです。
『幼な子われらに生まれ』◆重松清◆幻冬舎文庫◆
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作者の重松さんが文庫のためのあとがきにも書いているように、この小説は地味だ。
妻が妊娠し、生まれるまでの家族のつながり(絆って呼んでいいのかな)を淡々と描いています。
夫も妻も再婚同志。妻には2人の女の子(薫・恵理子)があって、夫は年に4回だけ前の奥さんとの
娘(沙織)に逢える。
夫は奥さんが連れてきた女の子たちのいい父親になろうと必死になっている。
俺はムリをしていないか?一番可愛いのは血の繋がっている沙織ではないのか?
そんな自問自答をくりかえし、奥さんのお腹を見ながら「中絶のタイムリミットはいつだ」などと
いうことを考えてしまう。
その夫が逃げ込んだ先は同僚から教えてもらった風俗店。
アンジーという店の女の子との出逢い。
だからといって、私には風俗店に出入りしている夫を責めることはできない。
最近涙腺がゆるくなってしまったんだろうか。
アンジーとの交流の中で胸がしめつけられ、これでは小説ではないじゃないかと思わせるような、
現実的なラストシーンにも泣かされてしまった。
普通の「お父さん」もしくは「パパ」に読んでほしい。
この1冊を読んで、あなたは自分の子供が生まれるということに戸惑いはなかったか、家族から
離れようとしたことはなかったか、いい父親の「フリ」をしていないか、聞いてみたい。
はっきり書いてしまえば、私は子供を産む自信も育てる自信もない。
この物語に出てくる薫と恵理子の前の父親・沢田に私は似ている。
何度か活字中毒の本棚で重松さんを紹介させていただきましたが、中年を書かせても、少年を
書かせても、ほんとうにうまい。うまいってプロの作家さんに向かっていうことじゃないか。
でもヘタな作家もいっぱいいるからな。
『透明な一日』◆北川歩実◆角川書店◆
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そういえば、北川歩実さんの小説、どっかで読んだよなぁと思って過去ログを確認したら5月に
ありました。ホントに検索システムが欲しくなってきた。
『透明な一日』というのは前向性健忘症という説明するだけでも何ページもかかるようなややこしい
記憶障害を題材としたミステリー。
実際、前半は病気の説明ばっかりでどうなることかと思いました。あれ?これってミステリー
だったよな?って思わず帯を見返してしまうような。
出てくる人物が多いんで、それだけでもメモったりして大変だったのに、この本、2段組なん
ですわ。なかなか先に進まない〜。まだ苦手なんだよなぁ、2段組。
途中、中だるみしそうでしないんです。あららら・・と思うと新しい展開をホレっと投げ与え
られて。私は尻尾を振って新しい展開に食いついてしまったんですな。
ちょっと読みにくい部分もありますが、ミステリーとしては楽しめました。
今年の5月に『僕を殺した女』を読んだ時は、この作者は男か女かわからない部分があったん
だけど、この『透明な一日』は完全に「女性」。結局調べてないからホントはどうなのかわからん
のですが。
なんとな〜く映画化されそうな気がするぞ。人物多いし、角川だし。
『内なる猫』◆ウイリアム・バロウズ/山形浩生・訳◆河出書房新社◆
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「このネコの本は寓話だ。作家の過去の人生が、ネコの影となって示されている。」
こないだのオフの時に くろきちさんからせしめた1冊。
バロウズという作家は恥ずかしながら名前も知らなかった。だからなんの知識もなく『内なる猫』を
読み始めて…。
何度も何度もしつこいようですが、私は翻訳モノが苦手。でもこれは通勤電車の中でいいペースで
読めました。日記のような詩のような。
年譜や訳者の山形さんの解説読むとをとんでもないジジイなんですな、バロウズ爺さんって。
『内なる猫』はバロウズのことを知ってから読んだほうが楽しめたかも。
彼の他の作品を読むより彼の人生が気になる。この本に関しては「解説」から読むのがオススメ。
世の中にはいろんな猫好きがいる。
単純に猫が好きって人がタイトルだけに惹かれて『内なる猫』を読んだらどう思うだろう。
私は猫と犬とどっちが好きって聞かれれば、私のことを好きになってくれるヤツなら犬も猫も
好きだって答えます。バロウズは猫たちに愛されていたのかなぁ。(そもそも猫は人間を愛するって
ことが出来るのか?)