9月の本棚 ■照り返しが強いぞ〜。


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絵本をよみつづけてみる そして、アンジュは眠りにつく 石ノ目 夏の約束
おせっかい 田宮模型の仕事 輪廻 蘆屋家の崩壊
作家の値うち 配達される女 花腐し 極楽カンパニー

『絵本をよみつづけてみる』◆五味太郎/小野明◆平凡社ライブラリー◆ 一覧に戻る

絵本作家の五味太郎さんと編集者の小野明さんが絵本を囲んでなにやらひそひそと…。

会社よりも、子育てよりも、ケータイよりも面白いって、絵本は。
だから,絵本でGO!(帯から)


私は子育てをしたことないからそこらへんはどうかわからないけど、確かに絵本は会社よりも
ケータイよりも遥かに面白い。
好きな色、好きな絵、好きな物語と偶然出逢ったりすると本当に嬉しいものです。

1冊の絵本だけではなく、その本をもっと深く楽しく読むための絵本も紹介。
自分が読んだことのある絵本がほめられてるとこれまた嬉しい。

こうしてみると、私にはまだまだ読まなくてはならない絵本がいっぱいあるんだな。

『そして、アンジュは眠りにつく』◆島田雅彦◆新潮社◆  一覧に戻る

1983年に『優しいサヨクのための嬉遊曲』という本が出版されて以来、気になって気になって
仕方がなかったんだけど、なぜか今まで手に取ることがなかった島田雅彦さんの作品。

9つの短編集。
最初の3篇「茶の間を旅して」「ダイヤモンド・ヘッド」「七歳の男」までは私の子供の頃と重なって
サラッと読めたのですが「赤い服の女」あたりから「あれれれ?」の方向へ。

どれが本当の島田雅彦さんなんでしょう?
「奇跡の鼻」は思わず初出一覧を見てしまいました。
この話、井上夢人さんの「オルファクトグラム」にとっても似ている。
「奇跡の鼻」の方が先に発表されてましたか。

表題作の「そして、アンジュは眠りにつく」は盲人アンジュの世界。
自分のニオイを嗅ぐことによって天気を知る。
弟スサヲの気配をカラダで感じる。

見えぬが花。悪はヒトの目には触れにくい。

小説としてはそんなに珍しくない題材。誰もが描く世界をどう描くか。

なに?単行本の装幀は金子國義さんなのっ?文庫は違うじゃんか〜。う〜。

『石ノ目』◆乙一◆集英社◆   一覧に戻る

今年の6月に読んだ『夏と花火と私の死体』の作者・乙一さんのホラー短編集。

まず始めに作者のペンネームの謎が解けました。
彼は昔『Z-1』という機種名の計算機を使っていて、適当にそれをもじって筆名を考えたらしい
のですが、キーボードで入力するには『乙一』よりも『薔薇』の方が簡単だということに後から
気づき、そして『Z-1』というタレントが芸能界にデビューしてどうしよう、どうしよう、と
慌てているのです。くす。

私も「猿股」などと名乗っておりますが、よく遊びに行ってたチャットで男だか女だかわからない
ようなハンドルってことで「猿股」を使ったその日にいきなりオフ会の話が持ち上がってしまい、
そのまま定着してしまったんですわ。

吉祥寺の駅で「どうしよう、どうしよう」と思ったことを著者の言葉を読んで思い出しました。
あぁ、前置きが長くなってしまった。

まだ学生さんっちゅうこともあって、彼の作品はそんなに出版されてません。
今回も短編集なんですが、表題作の『石ノ目』と他の作品の印象があまりにも違いすぎて、
一気に読むにはちょっとつらかった。

『石ノ目』
メデューサでしたっけ?目が合うと石になってしまうって話。
でもその物語よりも安部公房の『砂の女』。あの作品を思い出しました。
限られた空間での緊張した生活。
緊張の中で見つけた居心地のいい場所。

『はじめ』
悪さをした小学生が「実は“はじめ”という女の子がやった」とウソの言い逃れをするんだけど
その“はじめ”が彼等の前に現れるのであります。
やってることは子供じみているのに語り口が妙に年寄り臭い。なのにお粗末。

『BLUE』
人間の肌のような感触の布で作られたぬいぐるみたち。
舞台を外国にする必要があったんだろうか?ホラーと銘打ってるから?
『石ノ目』と同じ作者が書いたとは思えない。…ってか、信じたくない。

『平面いぬ。』
この短編集の中で唯一、作者がタイトルを考え、書き下ろした作品。
書き下ろしって言っても掲載雑誌がたまたま休刊になってしまったからってことなんだけど。
腕に彫った刺青の犬がいつのまにか動き出すって話。
うぎゃ〜。犬の名前「ポッキー」って…。犬の飼い主である「わたし」の置かれている環境も
なんだかややこしいというか無理があって、それを読者にうまく説明するだけの筆力が作者には
まだありません。

全作品に渡ってところどころに挿画が現れます。
「ジャンプノベル」に掲載された作品だから仕方がないのかもしれないんだけどさぁ、これ、要
らないんじゃないの?

帯で思いきりホメまくってる綾辻行人さんはホントに彼のことを「天才(あるいは天然)」だと
思ってらっしゃるのでしょうか?『石ノ目』は確かに面白かったけど、どうなの、そのへん。

『夏の約束』◆藤野千夜◆講談社◆   一覧に戻る

平積みになっていたら必ず目を引く装丁と帯。
蛍光のオレンジ色が丸くくり抜かれ、ややピントの甘い写真。
そして黄色のチェックに紺の太い文字で「芥川賞受賞」。

手には取ってもどうしても買う気にはなれず、そして発売から半年かかって、やっと読みました。
そして後悔。なんでもっと早く読まなかったんだーっ!

時間の流れがとても緩やかで、登場人物がいいヤツばっかで。
あぁ、特に主人公の松井マルオ。彼の一言一言がとってもいい。

最初の何ページかを何度も読み返したのは、状況がうまくつかめなかったから。
でもそれは作者の狙いなんでしょう。この本読んだ人はきっと1度はアレ?って思ってるはず。

ひとことで言ってしまえば恋愛小説。
酔った勢いで「8月になったらキャンプに行こう」とみんなで約束したけど、そこはそれ、酔った
勢いだから盛り上がってるのもいるし、すっかり忘れちゃってるのもいるワケよ。

そして気持ちがひとつになった時に…と、話はそれだけ。
それがとっても清々しく描かれています。

この夏、ホラーづいてた私にとって、気持ちのいい1冊でした。
(ただカバーがビニールなんで、私みたいに炎天下歩きながら読むとベタ〜っとなるので注意)

『おせっかい』◆松尾由美◆幻冬舎◆  一覧に戻る

人気ミステリー作家は、誰に原稿を書かされているのか!?(帯から)

帯に小さくて薄い文字で「編集者?読者?自分自身?それとも?」と印刷されてます。
さて誰に書かされているんでしょう??

怪我をして入院中の古内繁に退職した部下がお見舞いにもってきたものは数冊の雑誌。
その中の1冊「推理世界」に連載されていた「おせっかい」の登場人物・女刑事、郡上光の人柄に
興味をそそられて、古内は恋にも似た感情を抱く。

面白い小説を読んだり、映画を見たりすると、その物語に自分が入っていきたくなる時があります。
なんとかして主人公と話したい、こんな人がいたら是非お友達になりたい…と。

現実世界と小説の世界との区切りが曖昧になった時に事件は起こります。
病院で寝ているはずの自分がいつの間にか殺人現場の野次馬として小説の中に入り込んでしまいます。

小説を書いている作家・橘香織。彼女も突然の登場人物に違和感を抱きつつ、連載は続き…。

1冊で2度美味しい。
ただお見舞いにきた2人のカップルの設定はちょっと無理があるかな。
執筆中の小説の中に入り込んでしまうっていう非現実的な骨組みがあるからこそ、現実的な人物設定
にはもうちょっとだけ気を遣ってほしかったな〜、と。

『田宮模型の仕事』◆田宮俊作◆文春文庫◆  一覧に戻る

以前から残念に思っていたことなんだけど、なかなか女性が手に取らない本ってありますよね。
たとえばエロ小説と呼ばれる団鬼六師匠の作品。こないだ読んだ棋界の『聖の青春』なんかもその
部類に入ります。面白いのに〜。

そして今回は30代以上の男の人なら誰もが一度ははまったことがあるんじゃないかなぁ。
模型の世界にどっぷりはまった男の話。

実はダンナが子供の頃にジオラマの作り方がわからないと田宮模型に手紙を出したところ、地方では
入手困難だった大人向けの模型雑誌のコピーと丁寧な手紙がすぐに届いたという話を聞いて、この本を
読む気になったのでした。

著者は田宮模型の創業者・田宮義雄さんの息子さんです。
↓この☆がふたつ並んだマークは模型に興味のなかった私でも知っていました。

「模型といえばTAMIYA」という位置を確立するまでのTAMIYAに関わってきた人たちの
努力と愛情が伝わってきます。

小さい戦車なんか作ってドコが面白いんだ?なんて思っていた私でしたが、その小さい戦車が出来る
までの過程を読んでしまったら…あああ!ヤバイぞ。はまっちゃいそうだ。

『輪廻 RINKAI』◆明野照葉◆文藝春秋◆  一覧に戻る

第7回松本清張賞受賞作品。

舞台は新宿・大久保・新潟・茨城。
大久保育ちの香苗は茨城の名家に嫁いだものの、姑・ちずに自分だけでなく、子供の真穂にもつらく
あたりはじめ、香苗は真穂を連れて10年間一度も帰ることのなかった実家に戻ることになります。


でも何故か母・時枝は真穂を一瞬見ただけで拒絶。
香苗が外出している間にできた真穂の痣。
隣人の聞いた虐待の声。
今まで聞くことのなかった時枝の過去。
血の繋がり。

恐怖小説としては申し分のない作品です。
坂東眞砂子の雰囲気と似てはいるものの、舞台が知ってる土地だからか興味深く読みやすい。

でも、読んでいてどうしても香苗だけは好きになれなかったんだよなぁ…。
私の苦手なタイプ。同情も出来ない。でも妙に気になったりして。

人物の絡み合いが絶妙。ちょこっとしか出てこない通りすがりの人間の過去も知りたくなるような。

『蘆屋家の崩壊』◆津原泰水◆集英社◆   一覧に戻る

ホラーかと思ってたんですわ。でもホラーとはまた違う。
この物語に出てくる「怪奇小説を生業としている“伯爵”と呼ばれる男のモデルとなっている作家の
井上雅彦さんのコメントによると、この作品は「幻想」。

幻想かぁ。うん、これならしっくりくるな。

主人公の名は「猿渡」さん。三十路を超えて定職にもつかずぐうたらな毎日を過ごす。
あぁ、羨ましい。

その猿渡さんと伯爵がひょんなことで出逢い、そして二人は無類の豆腐好きという共通点を見出し
意気投合。そして数々の幻想の世界へ。暗く重い世界なのに何故か想像すると笑ってしまいます。

「水牛群」はゲゲゲのきたろうの水木先生に描いてほしい作品。

反曲隧道(かえりみすいどう)
たった6ページの短編。猿渡と伯爵の出逢いの場面。最近見かけませんが稲川淳二の怪奇特集の中に
出てきそうな作品。ラストは見えているものの、ゾクッとしますぜ。

蘆屋家の崩壊
猿渡が学生時代に好きになった秦遊離子は3ヶ月に渡って親密な交際を続けてはくれたものの、いざ
コトに及ぼうとすると「キツネが憑いたら、困る」といって、決して体を許そうとはしなかった。

そして遊離子は猿渡の前から突然姿を消す。
何年かたって、伯爵と各地の豆腐を食べ歩くうちに遊離子の実家のある場所にひきつけられて…。

遊離子が恐れていたキツネ。その正体とは。
濃くて怖い話なんだけど、豆腐を入れたことによって美味しく仕上がってます。

猫背の女
「佐藤美智子」にコンサートの席を譲った猿渡にその夜電話がかかってきた。
「席を譲ってくれたお礼に一緒に映画でも」

佐藤美智子は特別美しいというワケでもなく、かと言って醜いというワケでもなかったが、酷い猫背
だった。彼女といると妙に息苦しい。そして猿渡は2度目の約束をすっぽかしてしまう。

ストーカーという言葉は嫌いなんですが、まさにこの女、ストーカーなんっすね。
思い込みが激しすぎる。逃げても逃げても彼女の気配を感じる。
そりゃ一瞬にして髪の毛が真っ白にもなるわな。怖い怖い。

カルキノス
神話に出てくるでかいカニ、カルキノス。
猿渡と伯爵、今度は静岡にカニを食べにいきます。人間の目鼻を持った紅蟹。赤い巨人。

話はともかくこの二人の食べるものってなんでこんなに美味しそうなんでしょう。

ケルベロス
「カルキニス」に出てきた絶叫女優・落合花代の話を書くつもりがどんどん横道に逸れちゃって…
えーと、ケルベロスってぇのは、やはり神話の中に出てくる地獄の番犬のことだそうで。

猿渡さん、今度は群馬の蒟蒻にひかれて幻想の世界に突入。
あぁ、この蒟蒻も食べてみたいなぁ。

花代が育った土地は双子が産まれるとそのうちひとりを「オキナさんに返す」ということが行われて
いた。オキナというのは水。川に流す。川は黄泉の国へと繋がっている。

そして花代もまた双子の妹・葉子がいる。
姉妹を守ったのは地獄の番犬。
短編だと物足りない。もっともっと葉子の心のうちを読んでみたい。

埋葬虫
短編集の中で一番面白かった作品。
「猫背の女」に出てきた伊予田が再登場。

世の中には虫が苦手って人、多いっすからね。
そいつを食べちゃう話。虫好きな私でも背筋に冷たいもんが走りましたわ。

伊予田とその同僚・齊条はマダガスカルに蝶の写真を撮りに行き、山中で遭難する。
生き延びる術として齊条は自分たちより先に遭難した先客にむらがっていた埋葬虫を口に入れる。
狂ったように埋葬虫を食べる齊条。そしてふたりは救助隊員に発見され、日本に帰る。

…が、内臓の洗浄を受け、抗生物質を投与されても、齊条の体内には卵が残ってたんですな。
死期が迫る齊条のために伊予田が齊条のカメラで森の写真を撮ってきて欲しいと猿渡に依頼。
そこに写っていたモノ。

最初から最後まで一気に読ませます。虫は食べちゃいけません。

水牛群
猿渡という人物は著者がモデルだとわかってはいたんだけど、あぁ、そこまで自分を晒けだして
しまったんですね。
神経症に罹った著者そのもの(猿渡)が登場。
そんな猿渡を伯爵が古いグランドホテルに連れて行く。

猿渡の頭の中の迷路とグランドホテルの迷路が重なって、とんでもない景色を生み出す。

猿渡は苦悶の日々から脱出できたのでしょうか?
著者はこのあと、どうなったのでしょうか?次作が気になります。

巻末の著者による覚え書き「跋」、井上雅彦による「もうひとりの黒づくめから」も必見。
最後に読んだ方が面白いかな。私は最初に読んでしまったけど。

『作家の値うち』◆福田和也◆飛鳥新社◆  一覧に戻る

あ〜、買っちゃった〜、って感じですな。
結構話題になってる本なんで立ち読みしたことある人も多いんじゃないかな。

過去の文学作品を著者が採点してます。100点満点なんだけど、100点はない。

最高の96点が『仮往生伝試文・古井由吉』『ねじまき鳥クロニクル・村上春樹』『わが人生の
時の時・石原慎太郎』。どれも読んだことないっす。…ってか、古井由吉氏に至っては名前すら
知りません。

アイウエオ順なら最初に赤川次郎さんが出てくるだろうと思ってたんですが、浅田次郎さんでしたか。
赤川次郎さんの作品は著者にとって評価する価値なし、なんでしょうか??

しかしねぇ、著者は「はじめに」っつう前書きで「できる限り無私の立場を取るように努力した」
と書いてるんですね。だって評価ってのは無私の立場では出来ないでしょう。言ってるコト、
おかしいよ。いろんな考え方があるからこそ、評価(書評)が面白くなってくるんじゃないの?

船戸与一さんの作品ってそんなにダメなのかなぁ。全作品20点以下測定不能。

そんなに恨みがあるんなら直接会って「あんた、ダメ」って言ってあげればいいのに。
この船戸与一さんの評価を載せたいがために他の作家が巻き込まれたって感じ。悪意が見えすぎ。

ところで純文学畑の福田さん、自分の作品は評価出来ないんっすかね。無私の立場なら出来そうな
モンだけど。ぷぷ。

『配達される女』◆逢坂剛◆集英社◆  一覧に戻る

過去の本棚で2冊読んでるんです、逢坂剛さんの作品。『まりえの客』『デズデモーナの不貞
その時は面白いと思ったんだけどなぁ…。あまりの落差に驚いてます。

「小説すばる」に掲載されたいくつかの短編で主人公は3人。御茶ノ水署の迷走コンビ、斉木と梢田。
そして新任刑事の五本松。

事件の謎より難解なその女の正体とは!?(帯から)

物語の最初に五本松がふたつの顔を持っているということがバラされてますんで、ここにも書いてし
まいますが、もうひとつの顔である古書店のアルバイト・松本ユリを刑事である斉木がどうして同一
人物と見抜けないのか、そこまで間抜けな警察官なのか、呆れてしまいます。

数々の事件も「なんだそりゃ」的な事件ばっかで、事件だけに限らず恋物語もあまりにお粗末で、文
字数が少ないのに読むのに時間がかかってしまいました。よく最後まで読んだぞ。ホントに。

逢坂剛さんにとても期待していただけに残念です。もっと過去の作品を読むんだった。
新刊で1700円もしたんだよなぁ。う〜。

『花腐し(はなくたし)』◆松浦寿輝◆講談社◆  一覧に戻る

雨の日に読み始めて雨の日に読み終わりました。
晴れた日に読む本ではない。

芥川賞受賞作『花腐し』と書き下ろしの『ひたひたと』。
表紙の写真は荒木経惟。カバーはトレーシングペーパーのような手触りでアラーキーの写真が
生えます。

こういう結末が曖昧な小説は感想を書くのがとっても難しい。
どちらも「男」の物語。
幻想の中に生きて、いや、死んでいるのかな、とにかく曖昧な風景と主人公。

詩のような。
そう、詩を読むような感覚で読むといい。
改行の少ない構成で読んでいると息苦しくなってくるのですが…。
その息苦しさが今の私の気分にとっても合っていて、また違う気分の時に読んでみたくなりました。

しかし、こないだ読んだ『夏の約束』も芥川賞受賞してるんだよね。
芥川賞の基準ってどうなってるんだろう。
まぁ、調べればわかるけど、知らない方が先入観なく本を選べるからこのままで。

『極楽カンパニー』◆原宏一◆幻冬舎◆  一覧に戻る

どろっとした『花腐し』の後にカラッとした『極楽カンパニー』。

定年退職した須河内賢三さんは図書館に通う毎日。だってナニもすることがないんだもの。
図書館で出逢った元勤め人の桐峰さんと意気投合し、ふたりは「会社ごっこ」を始ることになります。

会社ごっこですからね、実際になにかを売ったり作ったりはしないんだけど、ちゃんと毎朝出勤して
会議をしてみたり、電卓叩いたりするワケですよ。須河内さんの家で。

会社名は「株式会社ごっこ」。
企業理念は「絵空事」「馬鹿正直」「度外視」。

そのうち喫茶店のマスターが面白そうだと話に加わって、その店が会社になっちゃう。
試しに近所に募集広告出したら同じような境遇のオジサンがわんさと集まってきちゃって…。

結婚を控え、仕事を辞め独立を考えている息子の登場で「株式会社ごっこ」は思わぬ方向へ突進して
いきます。

何十年も勤め人生活に縛られていた須河内さんの奥さんはたまりません。
せっかくこれからの人生、自分の好きなことをとことんやってやろうと思っていたのに、ダンナが
また仕事に目覚めてしまった。

笑いながら読んでるのにふとしたところで身につまされるんですなぁ。
ドキッとしたり、ホロッときたり、忙しい1冊でした。
あたふたした男を見るもよし、どっしり構えた女を見るもよし。男も女もかっこいいぞ。

うちのお父さんに読ませたら「会社ごっこ」始めちゃうんじゃないかな。
そういう私も一緒に始めたりして。