9月の本棚 ■甘いたまご焼き修行中。
 
 
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緑の指 なんでも屋大蔵でございます 双子のオヤジ
人生うろうろ  衣小夜がたり 女子大生会計士の事件簿

『緑の指 ガーデニングの愉しみ』◆曾野綾子◆PHPエル新書◆  一覧に戻る

んー、植物に興味がない人は素通りしちゃう本かもしれないなぁ。
PHP研究所発刊の「ほんとうの時代」と大和農園通信発行の「新種苗」の連載に
加筆修正を加えた1冊。作者が育てたり見たり聞いたりした植物のコラム集。

ガーデニングの本にはあまり興味がないし、どんな植物でもネットで検索すれば
たいてい育て方がわかりますんで、パッと見、ガーデニングガーデニングしてる本は
買わないんですが、著者が小説家の曾野綾子さんなので、読み物としていいかなーと
思って購入。

曾野さんは小説を書くのに忙しい。生活の中でなによりも大事なのが仕事。
植物との出会いは曾野さんが「海が好きだから海の近くに一軒家を持ちたい」と
30年以上前に三浦半島の西海岸の海辺に家を建て、週末用としたことから始まります。

しかし当時は仕事が忙しく、植物などかまってなかったようなんですね。
本格的な切っ掛けは病気でした。50歳直前になって失明しかけたのです。
目が見えなくなると仕事は出来ないし、家事をしようにも今まで頼んでいたお手伝いさんの
仕事を取ってしまうようでなにもすることがなく、それではと始めたのが海辺の家の庭に
木を植えたり、タネをまいたり、花を育てることでした。

その後眼の手術も成功し、作家業に専念するのかと思いきや、眼が悪かったから仕方なく
ひまつぶしでやっていた土いじりにいつのまにか心を奪われ、一番大事なのは仕事だけど
園芸は二番目に大事なこととして、曾野さんの生活に入り込んだのです。

文章はと言えばちょっと読みづらいというか、辻褄が合わないようなところがあるんですが、
ひとつひとつのエッセーは短いので気にするほどでもありません。
ただ、いくつか植物のイラストが掲載されているのですが、これがモノクロでもいいから写真
だったらなぁと思いました。特に残念なのは「天上の青」というコラムのイラスト。

実家が毎日新聞を購読しているので、曾野さんの『天上の青』が連載されていたことは知って
いたのですが、私は新聞の連載小説は読まないので内容を知りませんでした。
それがこのエッセーで「大久保清の連続殺人事件をヒントに描かれた小説」だったと知り、また
「天上の青」というのは朝顔の人気品種「ヘブンリーブルー」から取ったものだとも知り、急に
興味がわいてきたのです。

新聞連載の『天上の青』の終わりに近いある日、小説は初めに4行、後に3行、その間のスペースに
ヘブンリーブルーの挿し絵を入れたようなのです。曾野さんはその7行のためにこの小説を書いて
きたそうなんですが、新聞社側で連載の最後の挿し絵にカラーのヘブンリーブルーの挿し絵を
曾野さんに内緒で入れてくれたんだそうな。

こういう話を聞くとあの時読んでおけばよかったなぁと思うんです。
文庫にもなってるけど、その新聞の挿し絵を見てみたい。実家でスクラップしてないか確認中。
『なんでも屋大蔵でございます』◆岡嶋二人◆新潮文庫◆  一覧に戻る

先日テレビでみたドラマの原作が岡嶋二人だと知り、岡嶋二人は好きだけど、この作品は未読だった
ので、古本屋さんで探してきました。

ドラマの中の主人公「釘丸大蔵(くぎまるだいぞう)」は片岡鶴太郎。なかなか役に合っていたと
思います。…と、小説のあとがきが宮部みゆきなんですが、彼女もこの大蔵役には誰がふさわしいか
いろんな役者さんをアテて楽しんでますが、このあとがきが書かれた昭和63年に片岡鶴太郎が
役者として活躍していたら、候補にあがっていたかなぁと考えるのもまた楽しい。

宮部さんが大蔵役の候補として挙げたのは西田敏行、川谷拓三、橋爪功。そして最終的には
菅原文太を挙げたのでした。菅原文太ねぇ。どうかなぁ、貫禄というか存在感ありすぎのような
気もします。こないだ放送された鶴太郎主演のドラマを宮部さんはみたかなぁ。

釘丸大蔵はふすまの張り替え、子供のお守り、ラブレターの代筆、その他悪事以外はなんでも
引き受けるなんでも屋さん。いろんな仕事をしているうちにこれまたいろんな事件に巻き込まれ
ます。犯人に間違えられそうになるのですが、ドラマには欠かせないおっかない刑事さんと気の
合う刑事さんが出てきて、うまい具合に話がおさまるって寸法。

殺人事件も出てくるし、誘拐事件も出てきます。それでも血生臭い感じがしないし、読み終わる頃
にはすっかり事件のことなど忘れて、なんでも屋さんに仕事を依頼したくなります。

続編が読みたいなぁ。でも岡嶋二人【徳山諄一&井上泉(現・井上夢人)】は解散しちゃった
しなぁ。
『双子のオヤジ』◆しりあがり寿◆青林工藝舎◆  一覧に戻る

何故こんな山奥に双子のオヤジがいるのかとか、何故このふたりはいつもハダカなのかとか、
そんなことを考えてはいけない。双子のオヤジはどっちが自分かわからなくなるほどそっくりで、
喧嘩もするけどとっても仲がよくて、幸せな日々を送っている。それだけわかっていればいいのだ。

登場するのは見事に双子のオヤジだけ。水墨画のようなチカラの抜けた世界にふたりは生きている。
彼らの生活は現代人の生活からかけ離れているように見えるが、誰もが一度は考え、憧れた世界。

この本はうちのダンナが「あんた好きそう」と買ってきてくれた本なんですが、好きそうどころか
双子のオヤジの中に自分を見出したりしちゃって、何度も読み返してしまいました。
ダンナに「その本、よく笑わないで読んでいられるよな」と言われましたが、いや、一番最初は
笑いましたよ。でも2度3度と読んでるうちに彼らの言葉にヤラれてしまいましてね、じっくり
読むようになってしまったんですわ。

特に、いろんな家族が出てくる「多重人格」がいい。アハハと笑ったあとにくるじわ〜ってのが
いい。
『人生うろうろ』◆清水義範◆講談社文庫◆  一覧に戻る

ゆりかごから墓場まで、人生の転機をスケッチした10篇。

どこにでもあるような、誰もが経験したことのあるような話だけど、すべての物語があと数ページ
あったらミステリー小説になるような…、あぁ、そうだ。いつもミステリー小説を読むと、事件を
起こしてしまったこの人はこの先どうなっていくんだろう、事件に巻き込まれたこの人はどんな
人生を送ってきたんだろう、ちょっとしか出てこなかったけど、この人の物語も読んでみたいなぁ
と思うのですが、この『人生うろうろ』はまさに私の欲求を満たしてくれた1冊でした。

しかし、清水さんってよく“人”を観察してるよなぁ。私がなにげなく送ってきた人生だけど
「あわわ、清水さんに見られてたっ!」って気になっちゃうもんなぁ。特に「久仁子の結婚」の
主人公・久仁子の心が動きが絶妙。動きというか、私も結婚を決めた時はこのくらいのスピードで
心が動いたんだったよなぁと懐かしくなるのである。

解説は茶木則雄氏。解説を先に読んだらネタばれになっちゃうし、後に読んだらその時にはもう
清水んの職人ワザにすっかりやられちゃって、お腹いっぱい。こういう解説はいつ読んだらいい
んだ。
『衣小夜がたり』◆鳥越碧◆NHK出版◆   一覧に戻る

現代に伝わる伝統の「染」と「織」に命をかけた男女の美しく切ない物語。

加賀友禅、結城紬、有松絞、仙台平、鍋島更紗、佐賀錦、小千谷縮、久留米絣。
1996年春から翌年の秋にかけて「美しいキモノ・アシェット婦人画報社」にて連載。

最初にそれぞれの染物や織物がどんなものなのかを見てから読めば、もっと物語に入っていけた
かも。

冒頭に簡単な説明はあるのですが、細かいところまでは、普段着物を着ることがない私にとって、
それがどんなものなのか想像出来ず、後になって「あぁ、ネットで簡単に画像を探すことが
出来たのに」と後悔しました。

雑誌「美しいキモノ」に連載されていた時は実物の写真も掲載されていたのかな?
書店で表紙は見たことがあるのですが、ページをめくったことがないのでなんとも言えませんが、
伝統のある染物や織物の時代小説だもの、きっと写真付きだったんでしょうねぇ。どんなふうに
連載されていたのか気になるところです。

8つの物語のうち、一番心を打たれたのは鍋島更紗の「忘れ桜」。
唐津城の奥方付けの腰元である綾路と朝鮮からの捕虜・九山との道ならぬ恋と更紗にかける情熱。
一度は結婚することを諦め、御城勤めに上がった綾路。忘れた頃にほんの数個しか花をつけない庭の
しだれ桜をかばい、己の姿を重ねて涙する日もあった綾路。あぁ、幸せになってよかった。
『女子大生会計士の事件簿』◆山田真哉◆英治出版◆  一覧に戻る

いつも利用している楽天ブックスの書評で話題になっていたので、どんなもんかと購入。
宅配便で本が届いた時にページをめくったら、あまりにも文字が少ないんで購入は失敗だった
かなーと思ったのですが、読み始めたら面白いんですよ、これが。でも文字が少ないからアッと
いう間に読み終わっちゃったけど。

私もちょっとだけかじったことがあるのですが「会計」の世界というのは非常に奥が深いのです。
数学や算数が苦手だというだけで、ずっと敬遠していたのですが、一度その世界に入って、パズルを
解くような感覚と申しましょうか、帳尻がピタッと合った時の感動を経験してしまうと抜けられなく
なります。

主人公の藤原萌美は全国最年少で会計士二次試験に合格した現役女子大生。
会計事務所の後輩である柿本一麻とともに企業をまわり、監査の仕事をこなす。
会計士の話だから派手な事件は出てこないのですが、監査が終わったあとの爽快感はなかなかの
モンです。

会計の専門用語もたくさん出てきますが、ページの下に簡単な説明があるので、いちいち調べなく
ても先に進めるというのがいいですねー。

巻頭に会計の仕事に携わる人の手助けになる本とありますが、ミステリーが好きな人であれば十分
楽しめる一冊です。