9月の本棚 ■どうするよ、読書の秋、来ちゃうぞ。


一覧
オンゴロの仮面 ななつのこ
発奮忘食対談 初ものがたり 翡翠露 あたしンち・5
深夜の弁明 見張り塔からずっと 本の雑誌1999.10 unga!1999June,July
おろち エイジ 月の砂漠をさばさばと

『鯖』◆貞奴◆情報センター出版局◆      一覧に戻る

「ハジメマシテ サダヤッコです 剃ってますか? それではご機嫌よう」

うちの掲示板によく出没するバカトリオの一人、くろきちさんからいただいた本。
貞奴さんもインターネットの人でして、この『鯖』は彼女がHPで連載していた日記をまとめた
モノ。人の書いた日記を読むとすぐ影響されちゃうんで、日記としてではなく「日記のようなモノ」
として読みました。

目に入ってくるものは一緒なのに、彼女が吐き出す言葉にはどうしてこんなに流れがあるんでしょう。
日記は誰のタメにあるんでしょうか。

彼女のWEBを検索してみたんですが、どこにも見あたりません。(検索下手だし。)
本の中にも書いてないし、やめちゃったのかな。
…と思ったらやってました。くろきちさん情報。> 貞奴
ちょっと覗いてみたけど、本で一気に読んだ方が面白いわ。


『おろち 1〜2巻のみ』◆楳図かずお◆秋田書店◆      一覧に戻る

もうタイトルと楳図かずおってだけで怖いもんな。
あーあー。まだ生きてるのに腕をもいじゃ痛いじゃないか。

おろちって可愛い女の子の名前なんですよ。時空を超えて少女「おろち」が出没するところに不吉な
事件あり。彼女がメインというワケではないんですね。

しかしねぇ、妻が具合悪くて会社休んでる時に『おろち』買ってくるかな。>オット
どうせ買ってくるなら全巻買ってこいよ。なんで2巻だけなんだよっっ!おいっ!


『エイジ』◆重松清◆朝日新聞社◆     一覧に戻る

第12回山本周五郎賞受賞作。(相変わらず私は文学賞に疎いのですが。)

学校の先生である父親と専業主婦の母親、高校生の姉をもつエイジは14歳。家族はそれなりに
優しい
し、学校でも普通の生活を送っています。どこにでもいそうな中学生。

そのエイジの心が、膝を痛めてバスケ部を休部し、近所で連続通り魔事件が発生した頃から微妙に揺れ
始めます。

作者は『定年ゴジラ』で中年のオジサンの心を見事に描き、今度は『エイジ』で今時の中学生の心を
れまた見事に描きました。一貫して14歳の目を通して物語は進みます。

「少年A」たちが関わる事件が頻発する中で、少年たちの心の内側を描こうとする作品はたくさんあり
ますが、この作品ほど的確に表現している作品は少ない…いや、ないんじゃないかな。


普通の中学生の物語ですから極端に盛り上がる、ということもありません。
お調子者で悪ガキの「ツカちゃん」がとってもいい味をだしています。過去に中学生を経験した人で
れば「ツカちゃん」みたいな男の子にきっと逢ってるはず。

『月の砂漠をさばさばと』◆北村薫◆新潮社◆     一覧に戻る

北村薫さんと言えば『空飛ぶ馬』『スキップ』などで有名なミステリーの作家さんですが。

『月の砂漠をさばさばと』は大人も十分堪能できる児童文学です。…児童文学ってくくりにしてはもっ
たいないな。おーなり由子さんの素敵なイラストでこのタイトルですからいつもの北村さんに期待して
いるファンの人にはちょっと手にしづらい作品かもしれません。

でもいいです。とても。

9歳のさきちゃんと作家であるお母さんの、ふたりだけの生活。過去になにかあったようですが、
お父さんのことは直接は触れられていません。

ふたりの会話からにじみ出てくる優しさ、温かさ。時には大人顔負けのさきちゃんの言葉にドキッと
します。ふわ〜っと涙が出てくるようないい物語。


気持ちが沈みそうな時に。絵を描いたおーなりさんも「波」という書評誌で「おまもりみたいな本」と
書いていましたが、まさにそんな1冊。北村さんは前からこんな本を書きたかったような気がします。

『深夜の弁明』◆清水義範◆徳間文庫◆     一覧に戻る

シミズ流傑作パスティーシュ集。

…と帯には書いてありますが、残念ながら全部面白かったってワケではありませんでした。

表題作の「深夜の弁明」は締め切り間近になっても原稿の書けない作家が、追いつめられた状況で
とった行動とは…ってあったんで、かなり期待してたのですが、ちょっと期待はずれちゃいました。

でも「よく知っている」は私のまわりにも同じような人がいて、思わず苦笑い。
ちょっとした有名人が会話の中に出てきた時に「あ、その人、よく知ってるよ」とか「会ったこと
ある」って言う人、よくいますよね。ホントは「会った」のではなく「見た」だけなのに。
そんな人のお話です。

「黄色い自転車」は駅の自転車置き場で「いい場所」を探しているうちに、自分と正反対の生活
パターンの男を見つけ「いい場所」をお互いで共有する…という、これだけじゃなんのこっちゃ
わかりませんね。文庫にして11ページ。ササっと読めます。(立ち読みを薦めてるワケじゃない
んだけど。)

「茶の間の声」もちょっと面白い試みです。我が家でもこんな「音」が流れてるのかな。

『見張り塔からずっと』◆重松清◆新潮文庫◆      一覧に戻る

あれ?この単行本って前に角川書店から出てなかったっけかな?と思ったら、あとがきに「ぼくの
わがままが過半を占めるいくつかの事情で」違う版元から文庫版を出すことになった…とありますが。

どんなわがままなのかな。その理由はさすがに書けないんだろうけど気になります。

「ぐらぐら揺れる家族」たちの短編集です。

せっかくマンションを買ったのに発展の望みを絶たれた家族。「カラス」
1歳の息子を突然失い、空虚を抱える夫婦。「扉を開けて」
18歳で結婚したのに夫にも姑にもないがしろにされている若い妻。「陽だまりの猫」

この家族たちが「特別」というワケではない。むしろ「普通」の家族。

「扉を開けて」の中にこんな会話がありました。

「だから会社としても、今回は組合に歩み寄って、とりあえず
家族持ちの社員はリストからはずすように・・・・・・」 
その言葉を聞いた途端、顔から血の気がひいていくのがわかった。
コーヒーを注ぎに来たウエイターに、カップも差し出せない。

「どうした?」
「…家族じゃないんですか」

絞り出すように言うのがやっとだった。こめかみが内側から
押し上げられ、瞼の裏に鋭い痛みが宿る。

「夫婦は、家族じゃ、ないんですか」


会社の経営不振で夫がリストラの対象になるのですが、夫は現実をきちんと受け止める準備が
ありました。それなのに、この部長の一言で一気に夫が支えにしていたモノが壊れてゆきます。
すべての人にデリカシーを求めるのはムリなのかもしれない。現に私もドコに行っても初対面の人に
さえいきなり「子供はいないんですか?」と聞かれることがあります。

なんだか自分と重ね合わせてしまって、ちょっと哀しい1冊となってしまいました。

『本の雑誌1999.10 問答無用松茸号』◆本の雑誌社◆      一覧に戻る

そうか。もう90年代は終わってしまうんだな。
特集は「90年代のベスト100発表!」です。

本の雑誌編集部が90年代に刊行された本の中から「ベスト100冊」を選んでしまおうという無謀
ともいえる、この試み。でも、きっとどっかの本屋さんで「本の雑誌が選んだ90年代の100冊
コーナー」とか出来ちゃったりするんだろうな。

自分ではけっこう読んでるつもりが、ベスト100のうち読んだのは15冊しかなかった。

…ってことは、まだ読んでない面白そうな本が85冊もあるってことですね。
ますます本屋へ行く楽しみが増えたぞ。90年代の本はなんとか今年中に片づけたいな。(それこそ
無謀というものか?)


62ページの西上心太さんのコラム「忙しいのになぜ?続々と開設されるミステリ作家HP」は
とっても興味深い。でもURL紹介してないんだよな。
ちょっとこれから検索していろんな作家のサイトをを覗いてみよう。

『unga!1999 June,Julyno.65 / 0yen』◆unga!編集部◆      一覧に戻る

久しぶりにCD屋さんの前を通ったら「ゆらゆら帝国」の文字が。
思わず手にした「ご自由にお持ち下さい」。

ちょっと前に出たミニコミ誌です。ぜ〜んぜん知らないアーティストの中に何故か「さだまさし」の
インタビューが載ってたりして。しかもお目当ての「ゆらゆら帝国」のインタビューは巻頭ページに
掲載されてはいるものの、さだまさしの方が文字数多かったりする。とほほ。


せめてボーカルの坂本慎太郎さん以外のメンバーの声も載せるとかしてほしかったのぉ。
ま、タダだからしゃーないか。


『シーナとショージの発奮忘食対談』◆椎名誠・東海林さだお◆文春文庫◆     一覧に戻る

長崎に行った時に持っていった本が大ハズレでつい買ってしまいました。
旅先での購入は荷物が増えるし、東京に帰ってきて近所の本屋さんでも手に入ることが多いので
ホントはイヤなんだけど、帰りのことを考えたら買わずにはいられませんでした。

ショージくんもシーナも「食う」ことには命をかけてるからなぁ。何にでも使えるタマネギは偉い!
とか
みんなが大騒ぎしている「札幌ラーメンはまずい」とか。まずくはないけど、わしも醤油ラーメンが
一番好きだな。

ふたりの対談を読んでいるといい匂いがしてくるんだよ〜。食べ物の本は食う気にさせる!ってのが
大前提ですからね。そういう意味ではこの本は大成功でしょう。


装幀は和田誠さん。挿画は矢吹申彦さん。矢吹さんのイラストはひさうちみちおさんや南伸坊さんの
絵に似ています。ちょっとシュールでいい感じ。

『初ものがたり』◆宮部みゆき◆新潮社◆      一覧に戻る

宮部さんの小説はミステリーだけでなく時代物も好きです。
この作品も時代物なんですが…。読んでいくうちに不思議な感覚。

なんて言うんだろう、舞台は思いきり時代小説なんですけどね、いつのまにか現代っぽくなってるの。
物語に登場する食べ物は確かに時代を感じるモノですが、宮部さんもあとがきで書いているように、
今でも実際に作って食べることが出来ます。

それから人物の設定かな。妙に現代っぽい。

時代小説に徹することが出来なかったのかもしれないなぁ。
それはそれで面白いと思いますが。う〜ん。

『翡翠露(ひすいろ)』◆唐亜明◆TBSブリタニカ◆     一覧に戻る

第8回開高健賞奨励賞受賞作品。
中国人のコックさんと店に来る日本人(人妻)の恋愛小説。
でも物語はコックさんの手紙だけで綴られています。一方的な手紙だからどうしても状況を説明する
文章
が多いのですが、そこらへんは目をつぶりましょう。

中国と日本の文化の違い。特に食文化。
こんなに近い国なのにこんなに違うんだな。

日本人は醤油の匂い。
欧米人はチーズの匂い。
中国人はニンニクの匂い。
異民族の者にとって、この匂いはたまらなく新鮮で、性的な刺激になる。

中国人のあまりにも一途な感情に戸惑いました。惚れられる人妻の気持ちには共感出来ない。
小説としては展開があまりにも普通で物足りない。…と思ったら綴じ込みの選評集でみんな同じコト
言っ
てらぁ。

カバー・挿画は佐野洋子さん。とってもいい。このイラストがなかったらこの小説の面白味は半減
したか
もしれないな。

『あたしンち・5』◆けらえいこ◆メディアファクトリー◆    一覧に戻る

あー。もう5巻も出てる〜。
「あたしンち」は会社の友達が発売されると同時に買ってしまって、その日に無理矢理貸してくれる
んで
1〜4巻は我が家にありません。本当は全巻揃えたいのに。くー。

5巻は最近その友達と勤務地が別になってしまったんで買わざるをえなくなってしまいました。
悔しい。1〜4巻も買っちゃおうかなぁ。それも悔しい。

読売新聞日曜版で連載中のコミックです。友達は新聞も取ってて毎週きちんと読んでいるのに、
それでも
新刊が出ると買ってくるんだよ。私が欲しいのわかってて。意地悪〜。(類は友を呼ぶ)

これ読むとどこんちのカーチャンも一緒だな〜と安心出来ます。
でも自分にも似てるとこがいっぱいあって、やっぱり少し不安になってしまうんでした。


『オンゴロの仮面』◆諸星大二郎◆秋田書店◆     一覧に戻る

掲示板で少し前に話題になった諸星大二郎さんの20年近く前の作品。
神秘ロマンコミックスって書いてある通り、確かに神秘的です。ロマン・・・?ん〜。

ニューギニアの奥地から研究員が酋長の息子を連れ帰ってしばらく同居するのですが…。
酋長の息子は子供の頃から少しずつ入れ墨をして、成人になる頃には全身に見事な模様が完成する。
あぁぁ、そのふんどしの下にも入れ墨してるのっ???見たい見たい。

話は面白いな。でも、でも、でもっ!

諸星さんの描く女の子…。この作品に関してはほとんど口が半開き状態なんだよぅ。
キュッと閉めろ、くちは。だらしないなぁ、もう。
ページめくるたび、くち半開きの女の子がいるんだもん。わし、こーゆーことにうるさいの。

ダンナは続編も買ってくる!と息巻いておりますが、もうお腹いっぱい。他の本、買ってきてくれ。

『ななつのこ』◆加納朋子◆創元推理文庫◆      一覧に戻る

以前から気になっていた作家さんです。長崎の本屋さんで見つけて購入。でも家の近所の本屋さんにも
あったんだけど。

町の本屋さんで表紙の絵に一目惚れした絵本を買った駒子さんが、その物語の作者にファンレターを出
しました。すると思いがけず作者から丁寧な返事が…。

第3回鮎川哲也賞受賞作品。
「ななつのこ」というタイトルから、ちょっと昔っぽいミステリーかなぁと思って読み始めたのですが
作品の中に出てくる「絵本」の内容がちょっとだけ昔の日本のお話、というだけで全体の話自体は現代
のお話でした。

ミステリーと言ってもドロドロした愛憎があるわけでも殺人劇があるわけでもありません。
出てくるのは女子大生の日常に起きたちょっとした事件。
こんなことがありました、と「ななつのこ」の作者に手紙を出すと、その作者がどんどん謎を解明して
しまうんですね。

手紙だけで謎を解明する、という部分はちょっとムリがあるかなぁとは思いましたが…。

読んでいくうちにいつの間にか加納朋子さんの描く世界に引きずり込まれてしまっている自分に気づき
ました。これといって、目新しい手法が使われているワケでもないのですが、妙に気になります。