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佐々木俊尚 Toshinao Sasaki


 「里親詐欺」と呼ばれる不穏な事件が、ペットの世界で相次いでいる。拾った子ネコや子イヌを善意の人に引き取ってもらったら、里親もろともそのまま行方不明に……というのである。いったい誰が何のために、こうした事件を引き起こしているのか。その裏事情ははっきりとはわかっていなかったが、ここに来て各地の動物愛護運動などの調査で、徐々にその実態が解明されてきた。
 さらわれたイヌやネコたちはなんと、大学医学部などの動物実験に使われているというのである。しかもこうした「詐欺」は、組織的に行われている可能性が高い。
 組織的にイヌやネコを集め、動物実験に売り飛ばす――そんな構図が徐々に浮かび上がりつつある。しかしそれにしても、最近になってなぜ? そんな疑問をある関係者にぶつけると、こんな答が返ってきた。「自治体がペットを動物実験に払い下げなくなったのが最大の原因ですね」
 大学などの研究機関が動物実験に使うイヌやネコは、かつては自治体からの払い下げによって充当されていた。動物管理センターで殺処分を待つペットたちの一部が、実験に流用されていたのだ。その金額は1頭あたり1000円前後だったという。ところが1990年代以降、動物愛護団体がこれに激しく抗議。払い下げを中止する自治体が相次ぎ、今では数えるほどしか残っていない。
 これに困り果てているのが、研究機関の側だ。動物が入手できないからと言って、実験を中止するわけにはいかない。もともとつきあいのあった動物業者に入手を依頼し、アンダーグラウンドなネットワークを使ってあちこちからペットをかき集めるようになった。その一部が、里親掲示板からの詐取に走っている、というのである。大学医学部の関係者のひとりは「最近、実験施設で首輪をつけたままのイヌを目撃した」と証言する。
 別の関係者は「実験に転売されるペットは大量に取引されており、暴力団の関与も噂されている。資金源のひとつになっているのではないか」と指摘する。犬猫売買ネットワークの闇は、かなり深い。