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佐々木俊尚 Toshinao Sasaki
今年6月、静岡県裾野市にあるヤマト運輸の支店で、配達途中の荷物が突然爆発し、仕分け中のアルバイト作業員が大けがを負う事件があった。すわテロか、と大騒ぎになったのだが、実は爆発物の中身は自衛隊の演習場で拾い集められた本物の砲弾。ミリタリーマニア向けにネットオークションで販売されていた砲弾が、あろうことか配送途中で誤爆してしまったのだ。
火薬類取締法違反で逮捕されたのは、地元では名の知られたミリタリーショップの店主(32歳)で、こんなキャッチフレーズとともにオークションに兵器類を出品していた。
「使用済みの弾頭・他です。画像の物すべてです。画像で判断してください。1円ですので、ノークレームでお願い致します。使用済みで中身も空ですので、危険な物ではございません」
本人は炸薬を抜いて出品したつもりだったのだろう。店主は「まさか爆発するとは思わなかった」と供述したが、後の祭りだった。ちなみに砲弾のオークションでのスタート価格はわずか1円。希望落札価格も3000円だったから、危険な割には本当に安い品物だった。
度重なる不祥事に、オークション運営会社の側は「違法出品物は即刻削除しているし、悪質な場合はIDの停止処分もとっている」などと説明してきた。最大手のヤフーでは、非合法な出品物や盗品をチェックするパトロールチームを作り、2001年から24時間体制での監視を続けているという。もちろん警察の側も、違法出品の監視を行っている。警察庁担当の大手紙記者は言う。
「何しろネットオークションは犯罪の草刈り場ですからね。何かネタはないかと、各県警の生活安全部は鵜の目鷹の目で出品物を毎日のようにチェックしているようです」
しかし出品する側も、それほど馬鹿ではない。たとえばこんな手口がある。
真正拳銃をこっそりオークションで売買しようとする。そのまま出品したのではもちろんヤフーにばれてしまうし、警察に即座に逮捕されるのは間違いない。そこで合法的なモデルガンをいったん出品し、赤字覚悟で大量に売りさばく。そうして銃マニアの“お得意様”を作ったら、今度は直接オークションを通さない取り引きを持ちかけるのだ。そして最後の段階が、モデルガンならぬ真正拳銃の売買。もちろんオークションは通さず、直接の手渡しである。
ミリタリーマニアの会社員男性(32歳)が言う。
「そうやって拳銃を手に入れたという噂は、拳銃マニアの間でひそかにささやかれています。僕もそういう出品者に出会わないかと期待しているのですが、運悪くまだチャンスはないですね」
つまり、オークションを撒き餌として、マニアの一本釣りに使っているということなのだろう。需要と供給のミスマッチをうまく解消した、巧妙なビジネスモデルといえるかもしれない。これではオークションの運営会社はチェックしようがないし、本人たちがしゃべらない限り、警察当局も手を出せない。
拳銃の売買はかなり危ない世界で、それほど多くの取り引きが行われているとも思えない。しかしもっとグレーな部分の取り引きなら、日常茶飯事のように行われている。たとえば、銃刀法に引っかかるかどうかが微妙な大型ナイフなどがそうだ。つい最近も、福岡市の婦人服縫製業の男(57歳)が、ネットオークションで売るために大量のナイフを隠し持っていたという容疑で警視庁に逮捕されている。この容疑者は2001年ごろからオークションでジャックナイフの販売を始め、年間400本以上も売りさばいていたという。年商500万円というから、立派なビジネスではないか。
だが自分の店の事務所に169本ものナイフを保管していたことから、警視庁は銃刀法違反にあたると判断したようだ。ナイフはイタリアから通信販売で仕入れていたという。
児童ポルノも、ネットオークションの裏街道の花形だ。拳銃売買同様、最初は合法性の高いビデオの販売で客を釣り、後はどんどんエスカレートさせていく。
前出の全国紙記者は、
「最後の到達点は、カンボジアやタイあたりで撮影された子供の出演する本番ポルノ。この反吐が出そうな代物を、信じられないような高い値段でマニアに売りつける商売が横行しているようです。その売買に、ネットオークションが利用されているという実態があります」
と話す。
他にも手口はある。昨年夏、中国産のダイエット食品を摂った女性たちが肝臓障害を引き起こし、4人が死亡して1000人近くが健康被害にあう事件が起きたのを覚えているだろうか。国内では販売が禁止されているこのダイエット薬は、実はまだ国内でもひそかに売られていると言われる。副作用が激しい一方で、ダイエットにも劇的に効果があるからだ。
大半は個人旅行客の手荷物として国内に持ち込まれ、口コミなどで取り引きされているとみられている。だがその一部は、オークションでも売られていると言うのだ。もちろん、そのままの商品名で出品されているわけではない。ある種の符丁を使い、特定の人にだけわかるかたちで別の商品名で出品されているケースもあれば、拳銃や児童ポルノと同じようにオークションを入り口にして手渡しで販売されることもあるという。
インターネットのけものみちは、奥深いのである。