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佐々木俊尚 Toshinao Sasaki


 インターネットオークションが絶好調だ。日本国内で圧倒的なシェアを誇るヤフーオークションに、その好調ぶりは特に顕著になっている。7月17日に発表した2003年第1四半期の決算発表では、売上高43億円(前期比15・8%増)、営業利益は33億円(同20・1%増)を計上。6月の月間データを見ても、総出品数は409万件、取扱高369億円に上っている。利用者数の実態に近い数字を表わすユニークユーザー数は1223万に達しており、単純に計算しても日本人の10人に1人がヤフーオークションを利用していることになる。これに業界2位のビッダーズ(会員数188万人、出品数83万)、楽天の運営するオークション「楽天フリマ」(会員数116万人=今年3月現在)を加えれば、延べ1500万人ものユーザーが存在することになり、この種のサービスとしては過去に類を見ない巨大なマーケットが出現してきたといえるだろう。2005年ごろには1兆円市場になるという予測もあるほどだ。オークションは今や国民産業になりつつあると言っても過言ではないだろう。
 この状況は、海外でも同様だ。ネットオークションの先駆けで、世界最大手の米イーベイは、今年4−6月期の売り上げが前年の倍に急成長。株価も昨年秋以降、右肩上がりを続け、ヤフーやアマゾン・ドットコムなどとともに、先行き不透明な米国のネット業界を牽引する存在になりつつある。
 ネットオークションが、なぜこれほどまでに台頭してきたのだろうか。
 追い風となった要因は明快だ。まず第1に、デフレスパイラルという時代背景。落札者は割安な値段で商品を手に入れることができ、逆に出品者の側は家の中にある不要品を簡単に現金化できる。運営会社は3〜5%の手数料を徴収するものの、リサイクルショップなどが取るマージンに比べればはるかに小さく、フリーマーケットに近い。しかもごく限定された場所で取引されるフリーマーケットと比べ、市場の規模ははるかに大きい。出品側と落札側の双方が、納得できる価格で売買できるというこのシステムは、家計節約時代の中にあって消費者にきわめて強く訴求していると言っていいだろう。
 そして第2に、大量生産から少量多品種へという消費の大きな転回に、うまく適合している。オークションでは、大量生産の品物は注目を集めない。高価でなくとも、少量しか生産していないような珍しい商品に人気が集中する傾向がある。誰もが「自分だけしか持っていないモノ」「他で手に入らないモノ」を手に入れたいと思うようになってきている。
 インターネットの本質は、人と人を結ぶコミュニティーではないか――そんな概念がここ数年、ネットの世界で急速に市民権を得つつある。黎明期には「メディアとしてのインターネット」が注目された。しかし現在では、コミュニティーとしての役割がより大きくクローズアップされるようになっている。その意味では、オークションはネットの本質をもっともシンボリックに実現した場所といえるかもしれない。
 しかし、オークションには内在する問題も少なくない。たとえば昨年、オークション運営各社と警察当局の間で激しく対立が巻き起こった古物営業法の改正問題。オークションを悪用した盗品売買が激増していることに業を煮やした警察庁が、同法改正の方針を打ち出し、その中で盗品と疑わしい出品物についての通報義務を盛り込んだのである。これに各社が「盗品の報告は事実上不可能」「規定が曖昧で過剰な規制につながる」と猛反発。ヤフーとビッダーズ運営会社のディー・エヌ・エー、楽天の3社が警察庁に回答を求める文書を突きつける事態にまで発展した。結局この法案は警察庁の原案通りに国会に提出され、今春に改正法が施行されている。
 盗品売買だけではない。今年6月にはオークションで売買された自衛隊の不発弾が配送中に爆発し、アルバイトの男性がけがをする事件も起きている。改造モデルガンや違法すれすれの薬物などがオークションで売買される事件も相次いでいる。いったん犯罪が誘発されれば、かつてのダイヤルQ2のように、利便性の高いサービスであるネットオークションも徐々に社会の闇へと飲み込まれていく可能性もある。こうした闇の部分と、どう折り合っていくのかが今後の課題とも言えるだろう。