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佐々木俊尚 Toshinao Sasaki


Googleを中心に回る検索サービス業界の行方

 検索エンジン業界の歴史をひとことで言えば、存在感とパワーを日ごとに増していくGoogleとライバル社たちの戦いの歴史だったといっても過言ではない。
 そのパワーの影にもっとも怯え続けてきた(もちろん現在も)のは、Yahoo!だ。同社は2000年6月、Inktomiとのパートナー関係を解消し、かわってGoogleを自社ポータルのデフォルト検索エンジンに採用。Googleを世界最大のユーザー数を誇るエンジンに押し上げることに一役買った。ところがGoogleの存在感が増すにつれ、Yahoo!はジレンマに陥っていく。Yahoo!が主役であるべきだと考えるポータルよりも、検索エンジンそのものに注目が集まっていく。そして「Yahoo!はいらない。Googleだけあればいい」と考えるユーザーが徐々に増えていったのだ。「軒先を貸して母屋を取られることにならないだろうか?」――そんな疑念がYahoo!の内部でふくれあがっていく。
 この疑念に押されるようにYahoo!は昨年末以降、相次いで検索エンジン企業の買収に走るようになる。かつてGoogleのために切り捨てたはずのInktomiを昨年12月に買収。今年7月には、広告型検索エンジン(PPC)でGoogleと激しい競争を繰り広げているOverture買収を発表し、世間をあっと言わせた。Overtureは今年初め、Googleへの対抗戦略としてノルウェーFAST社の検索エンジン部門(AlltheWeb.com)と老舗の検索エンジン企業Altavistaを相次いで買収したばかり。Yahoo!は2社の買収により、有力検索企業4社を有するメーンプレーヤーとなった。
 これに強い危機感を抱いたのが、Microsoftだった。自社製の検索エンジンを持たず、InktomiとOvertureをMSNに採用していた同社は、「これでは強敵のYahoo!に塩を送ることになってしまう」と焦りを募らせているという。そして“試合巧者”のMicrosoftは、2本立ての戦略でこの事態を乗り切ろうとしているようだ。第1は、自社製検索エンジンの開発。「MSNbot」と呼ばれる新たな検索エンジンの開発をスタートさせており、次期Windows(Longhorn)のデフォルト検索エンジンに採用されるという噂もある。OSの独占状態を利用し、市場を奪う――かつてInternet Explorerでウェブブラウザ市場を席巻し、Netscape Commnicationを崩壊させたのと同じ手法を、再び使おうとしているのかもしれない。
 そしてもうひとつのMicrosoftの戦略が、Googleの買収だ。Googleは卓越した技術力とユーザー数を誇るとはいえ、しょせんは未公開企業である。圧倒的な資金力を持つMicrosoftが同社を買収してしまう可能性はゼロではない。
 もしこの買収が実現すれば、検索エンジン業界はYahoo!とMicrosoftという2強が争う状態となる。それがユーザーに利便性を与えるのか、それとも不便な世界をもたらすのかはまだわからない。だがMicrosoftとYahoo!という2大企業が明確な意志を持って参入してこようとしていると言うことは、言い方を変えればいかに検索エンジンが注目されているかという証左でもある。実際、Search123を買収したネット広告のValueClickのように、異業種企業も検索エンジン業界に参入の機会を伺いつつある。
 合従連衡は今後もまだ続くだろう。OvertureとGoogleの間で勝負がついていない広告型検索エンジンの分野では、シェア3位のFindWhatが欧州のEspottingを買収するなどホットな動きが続いている。ライコスジャパンとインフォシークの2社を買収した楽天や、Googleとの技術提携に踏み切ったNTT-X(goo)など日本勢の動向も気になるところだ。
 いずれにせよ、明るい話が少なく、沈みがちなIT業界にあって、検索エンジンは唯一といっていいほどの熱いフィールドとして盛り上がっている。


 Googleは1998年の創設以降、圧倒的な技術力で検索エンジンのデファクトスタンダードの地位を占めてきた。そして30億以上のウェブページをインデックス化し、1日2億以上の検索クエリーを処理するようになった。MicrosoftやYahoo!の巨大な資金力をもってしても、Googleのこの技術に対抗しうるエンジンを作り出すのは容易なことではない。
 そして昨年以降、Googleの戦略は第2のステージを迎えている。それが「検索エンジンの多角化」だ。
 最初に打って出たのは、昨年春に最初のベータ版が登場したGoogle Newsというニュース検索サービスだ。クローラーを使って世界中にある4000以上の英語ニュースサイトから記事を収集。トップストーリーやワールドニュース、テクノロジー、エンターテインメントなどのカテゴリーに分類され、リンクつきの見出しと媒体名、記事の冒頭部分がリストとして表示される仕組みになっている。検索エンジン的な使い方もできるが、それ以上に巨大なニュースポータルの役割を果たしている。このポータルさえあれば、個別のニュースサイトは不要とさえ思えるほどだ。オールドメディアからの反発は少なくなく、「ニュースサイトのトップページの編集を黙殺している」「タダノリで各社のニュースを利用しようとしている」といった批判も起きている。
 このGoogle Newsのリリースとほぼ同じ時期に、GoogleはAdWords Selectのサービスを開始している。AdWordsはPPC(Pay Per Click)型の広告型検索エンジン――つまりキーワードごとに検索結果のランキングをオークションにかけ、高い値段をつけた企業のURLをランキング上位に表示するという仕組みだ。この分野ではOverture(Yahoo!が買収)が先行しており、バナー広告が低迷していたネット広告業界を席巻したことから、Googleもあわてて参入した。今ではOvertureとGoogle Adwordsの2社がほぼ拮抗して覇権を争う構図になっている。
 さらに昨年暮れ、Froogle(フルーグル)という新たな検索エンジンのベータ版を発表した。「カタログエンジン」「商品検索エンジン」などとも呼ばれており、無数のオンラインショッピングサイトから購入可能な商品を検索してくれるエンジンだ。この分野への進出で、Googleは今度はオンラインショッピングのポータル企業との競争にぶつかることになる。実際、Amazon.comは独自にA9という名称のカタログエンジンを開発。Froogleに対抗している。