BACK    TOP

佐々木俊尚 Toshinao Sasaki



『ワンスペース・リビング日本語版』
家をワンスペースに改装し、広い空間を作って生活を楽しむ。そんなスタイルを実践しているケースを、イギリスやアメリカで取材、撮影。インテリアの実例集としても楽しめる。

著者:シンシア・イニオンス
写真:アンドリュー・ウッド
訳者:鈴木宏子
発行:エディシオン・トレヴィル
発売:河出書房新社

 かつて、どこの家でも電話線の差し込み口は玄関にあった。電話は縦に細長い電話台の上に置かれ、皆が立って話していたのだ。だがコードレスフォンの普及などによって、80年代半ばごろから差し込み口の位置はリビングへと移動していった。
 生活様式の変化と、それを支える製品やテクノロジの進歩。そのときどきで住まいのスタイルはさまざまな変容を迫られていく。ここに来て普及の足がかりができはじめたFTTHは、100Mbpsというその超高速ブロードバンドの実現によって、再び日本人の生活スタイルを一変させてしまう可能性をはらんでいると言えるだろう。インターネットやデジタル放送に接続された大画面テレビが個室から再びリビングへと復活してきた中で、ではIP電話の端末や無線LANのアクセスポイント、そしてパソコンといった機器はどう配置すればいいのか。かつての黒電話のように機器類はすべてまとめて玄関口に押し込め、無線LANによって室内のデバイスはすべてロケーションフリーにしてしまうという時代もやってくるかもしれない。
 「ワンスペース・リビング」は、イギリス人の著者と写真家がまとめたインテリアについてのカタログブックだ。家を目的によって細かく仕切るのではなく、ワンスペース(一室空間)として使うという発想で、さまざまな具体例が美しい写真とともに紹介されている。「家族や友人たちとのカジュアル化した関係、多様化したライフスタイル、多機能化が求められる住環境――ワンスペース・リビングという住み方には、状況の変化に合わせて住まいを自由に構成できる良さがある」というそのコンセプトは、FTTH時代の居室空間を考える中で、多くの示唆を与えてくれるだろう。


『ひかり荘』
高校生から子持ち主婦、作家、花屋、占い師といった多彩な“住人”たちが、アクセスした視聴者たちに語りかけ、話につきあってくれるというコンテンツ。吉本興業が東京電力と共同企画した。
http://casty.jp/
http://casty.jp/hikarisou/

 通信業界におけるNTTの対抗軸として語られている“電力系”。電力網に沿って国内津々浦々に張り巡らされている光ファイバーが、その存在感を裏打ちするパワーとなっている。昨年3月には、東京電力が「TEPCOひかり」の名前で家庭向けのFTTHサービスを開始している。とはいえ、ガリバーNTTに比べればそのブランド力や営業力は決して強くない。そこで東京電力は昨年秋から、「キャスティ」という名前のきわめて興味深いブロードバンドコンテンツを提供し始めた。何と、吉本興業と共同で同名のコンテンツ会社を設立しているのだ。
 中でも注目されているのは、「ひかり荘」という不思議な番組。都内某所に実在する一軒家を舞台にし、各部屋にウェブカメラを設置。光ファイバー経由で動画を転送し、住人たちが生活し、おしゃべりしている様子をリアルタイムで見ることができる。視聴者の側からは、掲示板を使って住人たちとコミュニケーションを取ることができる。さらには視聴者の側も自宅にウェブカメラを設置して他の視聴者に見せることまで可能で、FTTHの双方向性を存分に生かしたコンテンツとなっている。かつて番組「進ぬ!電波少年」(日本テレビ系列)で人気を博した「なすびの電波少年的懸賞生活」のインタラクティブ版ともいえる内容だ。サイト全体のページビューは何と1日200万にまで達しているという。吉本興業の底力を思い知らされるような勢いだ。
 現状では無料で、ADSLやCATVなどFTTH以外からでも視聴することができる。将来的にはFTTHの特質である速度や双方向性をさらに高めていく可能性を視野に入れながら、コンテンツの方向性を探っていくという。


『RBB-TODAY』
 ウェブ上のブロードバンドの情報源はいくつかあるが、その中でも「RBB-TODAY」は情報の濃さや関連サービスの充実度では群を抜いている。
http://www.rbbtoday.com/

 ブロードバンドに特化した情報サイト「RBB-TODAY」は、インターネット総研(IRI)の関連会社であるアイ・アール・アイ・コマース・アンド・テクノロジーが運営している。もともとは有限会社ポイントファイブコミュニケーションズが運営する独立系のニュースサイトで、ブロードバンドの貴重な情報ソースとして定評があった。2000年12月にIRIが営業権を取得してからは、オンライン販売などメディアミックス的な展開へと突き進んできている。
 とはいえ、コンテンツのメインは、ブロードバンドにまつわる各種のニュース。業界事情にまで踏み込んだコラム群や、一次ソースを重視した記事への評価は高い。
 それに加えて自分の住んでいる場所の郵便番号を入力するだけでプロバイダ検索を行って比較することができ、しかもその検索結果から申し込み画面に進むことのできるという無料サービスの人気が高いようだ。だが他にもブロードバンドに特化したコンテンツやサイトを紹介する「RBBナビ」、ブロードバンド用語を網羅した「ブロードバンド辞典」、ブロードバンドの通信測定サイト「speed.rbbtoday.com」など、ブロードバンド総合ポータルとしてありとあらゆるコンテンツサービスが並べられている様子は壮観でさえある。
 ページビューは月間800万、ユニークユーザー数は90万人。2001年ごろには月間100万程度だったといわれるから、驚異的な伸びを示している。


『パナソニックセンター』
住所:東京都江東区有明 2-5-18
休館日:毎週月曜と年末年始
開館時間:午前10時〜午後6時
入場無料
電話:03-3599-2500
http://www.panasonic-center.com/

松下グループの総合情報受発信拠点として開設された。『「ユビキタスネットワーク社会の実現」と「地球環境との共存」を2大テーマに、次の未来の「夢」と「快適」を創るために、皆様とコラボレーションする場でありたい』という。

 松下電器産業が2002年9月、東京・有明にオープンした「パナソニックセンター」は、ブロードバンドが生活の隅々にまで入り込んだ近未来の住まいのあり方をかいま見せてくれる。地上4階地下1階、延べ床面積1万5788平方メートルというかなり広いフロアに展示されているスペースはかなり多岐にわたるが、たとえばビジネスプレゼンテーションショーケースの中にある「eテーブル」。テーブルトップは魚の泳ぐ画面。魚ひとつひとつが情報のフォルダとなっており、席に着くと、ユーザー個人に特化された情報ファイルが集まる仕組みになっている。また希望する情報を伝えると、クラゲ状のエージェントが水の中を泳いで探してきてくれる。このテーブルのコンテンツは、家庭用サーバを経由してインターネットとつながっており、非コンピュータ的なインターフェイスを使ってシームレスにネットの海に泳ぎ出ることができるというわけだ。
 これはビジネス客向けのフロアにある施設だが、一般客向けの「くらし・環境ショウケース」などでは、冷蔵庫やエアコンなどすでに実用化されつつあるインターネット家電をさらに進化させ、ネットの検索エンジンや外部の企業サーバと連動させたシステムなどを見ることができる。ブロードバンドインフラや携帯電話を使い、ユビキタスなネットワークが生活に入り込んできたとき、どのような住まいの風景が出現するのか。そんな未来像をこの目で確かめる場所としては、かなり興味深い施設だ。このパナソニックセンターで提案されている暮らしは、2005年から2010年ごろに実現することを想定しているという。