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佐々木俊尚 Toshinao Sasaki
「Auto-IDセンター準拠のRFIDタグ付き書籍の展開」
RFID(無線タグ:Radio Frequency Identification)の研究を進めている非営利組織のオートIDセンターは10月27日、「Auto-IDセミナー:世界標準IDシステム導入の概要と現状」を東京都港区の六本木ヒルズ森タワー24階で開く。同センターのエグゼクティブ・ディレクターであるケヴィン・アシュトン氏が来日するほか、同センター日本研究拠点のリサーチディレクターを務めている村井純・慶応大教授らが講演。また同センターは日本での実証実験の一環として先ごろ、村井教授の新刊「インターネットの不思議、探検隊!」(太郎次郎社刊、1900円)にRFIDタグを実際に埋め込み、書店に流通させている。会場では、この本を使ったデモンストレーションなども行われる予定。
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RFIDをめぐっては、坂村健・東大教授が率いるユビキタスIDセンターと村井教授のオートIDセンターという2つの団体が、規格作りのイニシャティブをめぐって対立している。
前者は家電業界に大きな影響力を持つ坂村教授のトロンOSという強力な後ろ盾を持ち、NECや日立製作所など日本メーカーが多数参加。流通のトレーサビリティー(生産履歴追跡)での実証実験をすでにスタートさせている。
一方、オートIDセンターは米マサチューセッツ工科大(MIT)が主導し、ウォルマート・ストアーズや米郵政公社、コカコーラなど米国の流通系巨大企業を中心に約50社が参加している。米国のバーコード管理組織も参加するなど、グローバル市場での存在感は小さくない。だが日本での取り組みに関していえば、日本拠点の立ち上げこそユビキタスIDセンターに先んじたものの、実証実験などについては若干遅れていた感もあった。
そんな中で登場した、実際に書店で売られている本にRFIDを埋め込んでしまうというオートIDセンターの試み。まだ登場したばかりのRFIDチップを、流通の現場に流し込もうとすると何が起きるのか――きわめて具体的かつ地道な狙いのプロジェクトといえるだろう。
同センターの羽田久一副所長は「市場に出回らせようとした場合、どうやってタグを実装するのかということと、本当に流通させたときに何が起きるかを調べたかった。大きなハードルとなったのは、書籍に埋め込むためのコストと耐衝撃性」と話す。公共の場所に置かれるため、周波数が開放されている2.4GHzのチップを採用。数千個という小ロットのため、米エイリアンテクノロジー社から購入したRFIDタグは1個200円という高い価格になった。
書籍に埋め込む場所は当初、背表紙が検討されたが、流通の現場では本は背表紙を下にして揃えられるケースが多く、破損してしまう可能性が高い。また、@本を何十冊も重ねた際に、圧力がかからないようにする必要があるARFIDタグ破損が見つかった際には、タグだけを取り替える必要がある――なども考慮しなければならなかった。その結果、裏表紙のハードカバーをくりぬいて埋め込む方法が採られたという。
予想もしなかった問題も生じた。たとえば書籍のカバーの色を濃くすると、インクの中の炭素が多くなり、無線の感度が下がってしまう。また高級なコート紙も原料に酸化類を使っており、読み取り率が下がるという。意外にナイーブな技術なのだ。
RFIDのチップ自体は、量産化すれば価格は加速度的に安くなるとみられている。だが流通する商品への実装については、クリアしなければならない問題がこれから星の数ほど現れてくるのではないか。今回の書籍の実験では、新たな課題を浮き彫りにしたといえるだろう。