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佐々木俊尚 Toshinao Sasaki
1月16日付の読売新聞朝刊に、ポッカリと空白のあいた「週刊新潮」の広告が掲載された。「読売新聞の伏魔殿 『販売局』に国税のメスが入った 裏金スキャンダル」という見出しが、読売側の意向で削除されたのだ。
週刊新潮に掲載された問題の記事は、読売に東京国税局の税務調査が入っており、同社販売局で数十億円単位の使途不明金が発覚。10億円近い申告漏れが指摘されそうだ――という内容。「国税関係者」の証言として、「今回(国税は)販売局に切り込んでみたものの、ワケのわからない支出がたくさんあり、金の流れが複雑。その分、いろんな操作が可能で、裏金を作りやすい土壌がある。本当に伏魔殿のようなところですよ」という言葉を掲載している。また「販売局の裏金作りの手口は、販売店や拡張団への補助金をキックバックさせたり、また支出したことにして裏口座にプールしておく手法などがあります。(中略)本社にバックしていた金は数十億円になりますね」という読売新聞の拡張団の元締め役という人物の衝撃的な証言もある。記事の真偽は置いておくとしても、この挑戦的な見出しがいたく読売を刺激したであろうことは間違いない。実際、読売側は「週刊新潮の記事に関しては法的措置を執る」とカンカンで、名誉毀損で提訴する方向で検討中だという。
両社の間で、どんなやりとりがあったのだろうか。新潮社宣伝部の担当者は語る。
「発売4日前に広告の校正刷りを読売側に渡してあったのですが、直前になって『こういう内容の広告は載せられない』と返答がありました。週刊新潮としてはきちんと取材して記事を作っているので、掲載しないのは困るということを伝えたのですが、折り合いはつかず、最終的には読売新聞の側が広告の一部を削って掲載するという形になりました。こちらとしても、そこまでするのなら勝手にやってくださいというしかなかった」
一方、読売新聞の側はどう見ているか。同社広報部に取材を申し込んだが、日ごろ“夜討ち朝駆け”取材を得意とする新聞社にしては、「質問は文書で申し込んでください」と木で鼻をくくったような回答。今回の経緯や広告の削除理由、同社の広告掲載ガイドラインなどについてあらためて文書で質問したところ、次のような回答が返ってきた。
「週刊新潮の広告については、同誌に当社に関する事実無根の中傷記事が掲載差入れることがわかったため、新潮社に対し、広告中のその記事に関する部分を求め、同社の了解を得たものです。広告掲載基準では、当社を言われなく中傷する広告は、掲載しないことになっております」
新聞広告をめぐる週刊誌と新聞社のトラブルは、過去にも頻発している。たとえば週刊新潮に関して言えば、1997年、神戸市の児童連続殺傷、通称「酒鬼薔薇」事件で容疑者の少年の顔写真を新聞広告に載せ、全国紙各紙から掲載拒否された“前科”は有名だ。一方、読売新聞も92年の佐川急便事件の際に同社との不明瞭な土地取引を暴かれた際、「不可解!200億 火の車佐川急便がナベツネ読売の土地を買ったワケ」(週刊朝日)「スクープ連弾徹底追及!佐川急便事件 TBSが“告発”した読売新聞の『土地疑惑』」(サンデー毎日)といった見出しを新聞広告から削除させたことがある。
どっちもどっち――という感がしないわけでもないが、業界事情通はこう解説する。
「読売は広告の掲載基準があると主張しているが、その基準の内容は曖昧すぎてはっきりしない。そのときどきで自社に都合の良いように変えているとしか思えない節もある」
新潮社の担当者も、
「明文化された広告掲載の基準があるのなら、はっきり示してくださいといつも読売側には要求しています。しかし『それはケースバイケースだから』という理由で、いつも見せてくれない。今回問題になった広告でも、以前は拒否された『群盲』や『シャブ』といった言葉が別の記事の見出しで使われていますが、特に問題にはされませんでした。はっきり言って、私たちにもよくわかりません。これまで一貫して掲載拒否されているのは『巨乳』という言葉ぐらいですね」
とあきれ顔だ。