| 世界初の霜降り豚に挑戦C黒豚の味覚の良さ |
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鹿児島黒豚はもともと英国原産のバークシャー種であるが、正確には沖縄や奄美地方の真っ黒い「島豚」の血が入っていると言われている。鹿児島黒豚が少し小型で味が良いのはこのためであり、長い間、鹿児島の風土と人によって脈々とはぐくまれてきたと言われているのだ。ルーツは距離的には近い東南アジア系ではなく、中国大陸系と推測されているのも面白い。
鹿児島黒豚の特徴は、何と言っても肉の味が良いとされていることだ。肉のほど良い弾力性、脂肪の質、噛みごこちの良さ、肉の甘さなど、餌にさつまいもが給与されると真っ白い脂肪がつき、黒豚の味はいっそう良くなるとされている。
味の良い豚を造ろうと考えれば、このバークシャー種を抜きには考えられない。そこで、鹿児島県に紹介して貰い鹿児島黒豚を導入した。また、バークシャー種の純粋種として、英国からも直輸入した。
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三つ目の品種として、米国原産のデュロック種を選んだ。その理由は、発育が速く背脂肪は薄いという産肉性(短期間に多くの赤肉を作る能力)が優れている近代品種でありながら、不思議な特徴を持っているからだ。それは、筋肉内脂肪(霜降り)が高いということだ。この品種がなぜ高いかの理由はよく分かっていない。おそらく品種の成立が関係しているためだと思われる。こうして美味しいとされる豚の品種を集めることができた。
原産国はたまたま英国、中国、米国の豚になった。この豚を互いに交配して選抜を繰り返し、日本の豚を造り出そうというのだ。
牛肉の霜降りは有名であるが、他の動物では聞かれない。まして豚は厚い脂肪で覆われている。大衆肉の代表とされる豚では霜降りなど考えられないと言うのが一般的だ。しかし、美味しい豚肉を造るなら、霜降りを検討してもいい課題ではないかと考えてみた。
豚肉の改良の歴史を調べてみたが、豚肉の味を改良した経験は世界中探してもないことがわかった。意外だと思われるかもしれないが、美味しさの定義は難しく、豚肉の味を改良するなど、もともと無理だと考えられていた。無理だと言われれても、出来ないこととは違う。挑戦してみる価値があると考えた。 |
北京黒豚 バークシャー デュロック |
誰も経験がない美味しい豚肉づくりに挑戦しようとするのだから大変さは覚悟した。この研究の前にエド豚を造ったが、その時、ある人から言われた言葉「豚の改良に取り組むには10年間、休日はもとより昼休みもないと思え」が忘れられない。エドの造成では確かに、豚のお産は徹夜でとりあげることが多かったし、畜試と同時に改良に参加した30戸の農家の豚の測定で昼休みもなかったことを思い出した。
生き物は死ぬことがあるし、病気にもなる。少しも気の抜けない作業が続く。豚の体型を見て枝肉の姿が想像できるようになるまでには、かなりの経験もいる。今回の新しい豚をつくるには、予期せぬ問題の発生も考えておかねばならなかった。 |
近年、育種改良技術が進歩し、スキャナー(
超音波診断装置) やコンピュータが著しく発展していることが、この改良には大きく貢献した。スキャナーは、赤肉量と関係のあるロース肉(
胸最長筋 )の大きさを簡単に測定できる。つまり、生きた豚を保定してスキャナーでロース面積を測定し、ロース肉の大きい豚がすなわち赤肉の多い豚であるので、容易に見つけることが出来る訳だ。
これまでは、体の中のロース肉を調べるには、と畜してから測定した。結果が良く、候補豚として残したくても残せなかったのだ。そこで、どうするかと言うと、豚の兄弟数の多い事を利用して同腹兄弟から候補を残した。時間をかけて何世代か選抜すると改良はできる。しかし、兄弟の違いから、改良効果は低いという欠点があった。でも、それは仕方ないことだった。技術の進歩は改良のための期間を短縮した。
他にもいろいろ指標があって、おしりの筋肉(ハムとも言う)の大きい豚を選んでいくと、筋肉量が徐々に多くなり赤肉割合の多い豚を造り出せることは実際に証明されているのだ。 野球選手はお尻の大きいことが一流選手の条件と言われることがある。お尻が大きいことは筋肉が多くついており、速い球を投げたり、強い打球が飛ばせるなど強い力が出せるという訳だ。 |
TOKYO Xの親子 |
ただし、豚の場合、改良をくりかえして赤肉量をどんどん増やす事は良いことだけとは限らない。ベルギーのピエトレンという豚はより筋肉質に改良した結果、赤肉割合は高くなったが、ムレ肉(
肉色が白っぽく肉汁が多く出る異常肉 )になりやすい体質を持つ豚となってしまった。
さらに、肉質に関する最大の欠点は味が落ちるということだった。味と脂肪量とは密接にかかわっていたのだ。他にも筋肉質になると足が弱くなってくる。このことは私たちは身をもって経験している。 改良技術の向上により、豚が歩くにも不自由なほど筋肉をつけることが可能となっている。 |
コンピュータの発達は急速で、当初、選抜豚の総合能力を計算させるのに、農水省計算センターに依頼して、大型コンピュータで計算したが、その後、手軽で安価なパソコンで可能になった。
TOKYO X豚づくりは、近い将来、豚肉も銘柄豚が主流となる日が必ず来る。本物の美味しさや安全性が付加価値を持つようになる。消費者に喜ばれ、養豚農家も救うことが出来るような新しい豚を造ろうと考えた。これが出発点である。今考えて見ると、東京には味覚の優れた消費者が存在し、豚肉の安全性を求める声もいち早く届いていた。そこに地元、東京の豚肉の出番があったと言えるのかも知れない。 |
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