成功の陰で(困難性との闘い)E                   TOKYO X物語 TOPへ
 研究を開始した当時、国内では豚の伝染病オーエスキー病が流行していた。このウイルスは人や物、動物に付着して伝染する。人には何の害もないが、豚では胎児が流産し、生まれても育ちが悪い。完全なワクチンがまだ出来ておらず、予防するしかなかった。大変貴重な北京黒豚や英国から直輸入の高価なバークシャー種に伝染病を入れてはならない。そこで当時考えられる最も厳しい管理を選んだ。
 
 すなわち、豚舎全体を隔離して閉鎖システムにした。つまり、豚舎の周りにネズミ返しを設置し、運動場にはネットを張り巡らし鳥やカラスを防いだ。飼育管理者は衣服を取替えシャワーを浴びて豚舎に入らねばならない。そのため、風邪気味でもシャワーを浴びて入る。一度外に出ると再度のシャワーが必要で、昼休みに外にも出られない状況となった。豚飼育には飼料や器具類の出入りが多く、その度に洗浄・消毒の確認などで少しも気が抜けず、厳しい管理を続けることになった。 
 だが、この研究で最も苦心したことは、豚の霜降り形質が本当に改良できるのか、そして美味しい肉をどうして造り出そうかと言う事であった。理論は可能でも実際には出来ないかも知れない。過去の研究例がないのは何かわけがあり、重大な問題が隠されているのではないかと疑心暗鬼にもなった。
 
 専門家の中にもこの改良研究そのものを否定的にとらえる人もいた。とにかく心配はあるが、理論と自分達の計算値を信じてやってみるしかなかった。 そんな研究の途中、心配は現実となった。改良中の選抜第2世代から第3世代の試験豚に、背脂肪が極端に厚く、ロース断面積が小さい豚がかなり出た。霜降りが入らないものもいる。そしてバラツキもある。これでは商品にならない、頭を抱えた。
         ネットで囲った放飼場
  改良はやはり無理なのか、追い詰められた。試験の中止も頭をよぎった。すぐに、交配記録や測定値、選抜計算式の再点検、飼料の品質まで調査してみたが、間違いは見つからない。
 
 幸い、改良値そのものは上向きで、良い豚肉も混じっている。祈るような思いで改良を先に進めることにした。選抜第4世代になってやっと背脂肪が少し薄くなり、霜降り肉のバラツキも小さくなった。 背脂肪と霜降り形質の間には、ある遺伝的な関係があり、背脂肪を薄くしようとすれば霜降りも少なくなった。また、ロース肉の大きさから赤肉割合を高めようとすれば、霜降りが少なくなった。
 
 こうして、次々に困難な問題が発生した。本研究は容易に完成した訳ではなかった。
 
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