| TOKYO Xの命名H | TOKYO X物語 TOPへ | ||||||
| 生産条件の厳しい東京都で小規模な養豚農家の生き残りをかけ、造りだした霜降り豚、名前を何と付けるかは銘柄化に直結するだけに重要なことであった。 前回のエド豚は一般公募により決めた。今回はその予算もなく、みんなで考えようと言うことになった。30近い候補の中で都庁の生産担当者であった鈴木健係長の提案(東京SaBAQ牧場による安全飼育を含む)したTOKYO Xが光っていた。豚の名前としては奇抜であり、斬新でもあった。だから、一部には、何の名前か分からないとの声もあった。しかし、農家指導に当たる農業改良普及員さんをはじめ関係者の支持が多かった。意外であったのは、生産農家の皆さんからこの名前に賛成だとの声が上がったことだ。 こうしてTOKYO Xが決まった。役所が付けたとは思えない、画期的な名前だ、マスコミ関係者からは大きな驚きで迎えられた。NHKテレビのクイズ番組「日本人の質問」にもこの名前が取り上げられた程だ。 Xの意味は、美味しい肉質の豚をかけあわせて出来た、クロス(交雑)の意味と、未知の可能性を秘めた豚であるXを表現している。東京の銘柄豚にとどまらず、美味しい豚として将来ますます拡がっていく可能性、安全生産にこだわり、さらに進化することを目指している。 |
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TOKYO Xのロゴマーク |
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| TOKYO X豚の完成と同時に、この豚を健康に飼って消費者に安心して食べて頂くために、農家に4つの条件を提案した。いわゆる東京SaBAQ(さばっく)牧場である。 先ず、安全飼育の徹底。肥育期間中は飼料に抗生物質を添加した餌は使わない。予防的な投薬もしない。その代わり子豚にワクチン中心のプログラムを実施する。飼料原料のトウモロコシは非遺伝子組み換え(除草剤に耐性のある遺伝子を組み込んだトウモロコシが作られはじめた。そうしたトウモロコシではないもの)で、ポストハーベスト・フリー(収穫後の農薬未使用)のものを採用する。その後、遺伝子組み換え大豆が出たので、これも非組み換えのものとする。 2つ目は、快適な飼育環境で育てる。動物福祉を考えて畜舎のスペースは広く取り、豚にストレスを与えない。従来の開放型の豚舎で、十分な採光と換気をキープする。 3つ目は、素材豚が生産効率優先の品種ではなく、良い肉質を追及した豚である。飼育マニュアルに沿って飼育し、指定飼料を使うことで、上品な香りとさっぱりした脂肪、ほどよい柔らかさのおいしい肉に仕上げる。 4つ目は、本来の生命の力を生かして育てる。効率を求めず、薬品にたよらず、飼料は大麦を22%含む特別メニューとし、昔ながらの飼育法で育てる。 この4つの提案をしっかり守れる農家でTOKYO X豚を生産し、衛生検査のほか、X豚独自の肉質検査をパスしたものを消費者に届けようと提案した。 |
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| SPFは、元々、安全性より、農場の生産性向上を目的に開発された方法であった。
肥育用の飼料には入れてはいけないが、子豚用飼料には一般に抗生物質の添加が認められている。発育の促進と病気の予防のためだ。それを子豚の時期(3ヶ月)に使うだけなら問題は少ないが、肥育豚の後期(6〜7ヶ月)まで使われたという例があった。当然、抗生物質が肉に残留する事故が起こった。 農家における安全生産の難しさ 現在は、肉中の抗生物質残留は法律で規制されている。従って検査も厳しく行われ、農家でも徹底され、このような肉は廃棄されるので、豚肉中に残留はない。 子豚の餌は、高たんぱく質で飼料添加物が入り高価である。その餌をわざわざ肥育豚に使って事故が起こったのは、病気で死ぬ豚をなくすためだった。 豚の肥育においては、現在、治療薬を含めて少なくとも休薬期間30日を守るよう指導されており、そうすれば、残留はない。 安全性のために抗生物質など添加物を一切なくしたい、生産農家も思いは同じだ。しかし、生産現場では子豚の時期は病気に弱く、肺炎や細菌性下痢などで成長が止まり最悪の場合は死亡する。そうなれば、利益が減り、経営が成り立たなくなる。価格競争の中で、蜜飼いは簡単にはなくせない。予防薬を使わざるを得ないのが実態でもある。 抗生物質等を餌に入れないで飼育をした例はある。私たちも経験したが、畜舎が新しいうちは病気は少なく、問題はなかった。しかし、畜舎が古くなると、確実に子豚の病気が増える。病気になると治療が必要で、同じ薬を使うことになる。つまり、生産効率を追い求めるかぎり同じことだ。抗生物質に代わる安価で効果のある代用品は今はない。 そうであれば、効率を犠牲にし、ヒトの手間をかけ病気を防ぐしかない。その結果、果たして再生産できる生産物価格で売れるかどうかなのだ。つまり、安全性を付加価値としてどれだけ豚肉に上乗せできるかにかかってくる。 考え方だが、野菜の減農薬栽培、無農薬栽培を豚飼育の抗生物質で置き換えるとどうなるか。抗生物質を子豚の始めの時期にだけ与えることは減抗生物質になる。多少のリスクを覚悟するとして、徐々に飼育技術を確立し、できれば、全く抗生物質を使わないでも済むような飼育(抗生物質ゼロ)に取り組む。 畜舎をきれいに清掃し、手間をかければできないことではない。 TOKYO X豚はこうした発想から、蜜飼いを避け、生産効率を追い求めず、安全生産にこだわることを目指した。 しかし、安全生産はそれだけではない。飼料穀物を輸出するとき、輸送時の害虫・カビを防ぐため穀物に直接、農薬の散布(ポスト・ハーベスト)を実施している。農薬は時間とともに分解され、安全性で問題はないとされているが、収穫した穀物に農薬をかけることなど、以前には考えられないことだ。 安全生産では問題はまだある。3年前から飼料用トウモロコシ、大豆に、除草剤に強い遺伝子を組み込んだ遺伝子組み換え作物が出現した。安全性試験で問題ないとされているが、消費者の不安は残っている。 現在の日本の食肉の安全性に関して、かなり良い管理が行われていると判断する内外の専門家が多い。にもかかわらず、消費者の関心が安全性に向いているのは、絶対に安全、というのはあり得ず、安全の要望はさらに高いレベルへと続いていく性格によるものとされている。 たしかに、輸入飼料の残留農薬が安全基準を越えているわけではない。食肉中の抗生物質・抗菌剤の残留もない。また、遺伝子組み換えトウモロコシが有害だという証拠もない。 安全性で過去に苦い経験 遺伝子組み換えトウモロコシの有害性の証拠はない。飼料の残留農薬も検出されない。肉中の抗生物質も検出されない。しかし、本当に大丈夫なのか、と聞かれれば、私見であるが、「現在の時点では問題はない」としか言えない。 肉の中の抗生物質の残留に関して、法律もない過去の例だが、検出せずとされていたものが、分析手法が進んで、再検査したところ、わずかだが残留の痕跡が見出された例があったからだ。 また、わが国は過去において、水俣病やイタイイタイ病、DDT、BHCなど、当時は安全だと宣伝されていたものが、後になって有害であるとされた苦い経験がある。 豚肉生産において、現在のままで良いのかと言えば、良いなどとは言えない。安価でより安全な豚肉生産を追い求め、安全性研究は限りなく続けていくことが必要である。同時に、現在、農家での安全生産には負担が伴い、安全な肉を生産しようとすれば高価格につくことも事実である。 安全な肉を作っても、消費者に買って頂けなければ続けることはできない。 TOKYO Xの肥育は、こうした少しでも不安を指摘された飼料は使わないことに決めた。飼料には抗生物質を入れない飼料のみを使って豚肉をつくることにした。病気の予防には手間をかけ、畜舎の清掃やワクチンの接種で対応する。 味覚が優れている豚肉だから、さらに付加価値を持つほどの安全性の高い豚肉をつくる。これを基本のコンセプト(考え方)にした。 実際、ポストハーベスト・フリーのトウモロコシを使うと、価格は1トン(t)あたり約3,000円高い。さらに、大豆・トウモロコシは非遺伝子組み換えを指定したが、価格は約40%割高である。消費者の求める安全性に応えるには、ここまで徹底することが必要であると考え、実施することにした。 餌のこだわりは、まだある。魚粉の使用をやめた。肉の臭いの原因の一つとされているからだ。高たんぱく質の魚粉の代わりに大豆粕とフスマを入れた。そして、大麦は肉のしまりを良くするために22%配合することにした。 生産農家からは、「安全性を配慮した餌かもしれないが、豚の糞が多くなった」とクレームが出た。確かに、フスマを多く入れると繊維が多く、糞も多くなる。だが、小腸内で食物の滞在時間が短くなり、X豚は肉に臭いがないという利点がついている。 飼育環境は、密閉型でなく、開放豚舎で、とにかく蜜飼いを避け、ストレスを減らした飼育を実施することにした。 X豚の普及では、こうした飼育ができる農家こそ生き残れると、普及員さんが先頭に立って農家を説得し進めて貰った。若い後継者のいる農家ほど真っ先に手をあげた。 こうして、同じ飼料で同じ飼育法によって安全性にこだわった豚肉を作り上げ、市場に評価をもとめたのだ。 TOKYO-X豚 |
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