| 性格悪いな〜、このホテル |
スタンリー・キューブリック監督の映画版を先に観ており、キングはこの映画版に大いに幻滅したということだったので、幻滅の理由を探ろうと読ませて貰いました。 なるほど、キングにしてみたら幻滅するのも分かります。この作品は「恐怖小説」というよりは「父と息子の愛情物語」という味付けですね。 映画版ではジャックが狂っていく理由が「外界と隔絶されたホテル」という、狭苦しいところに閉じこめられたから暴発したのか、悪意を持つオーバールックホテルに心の隙をつかれて暴発したのかがいまいちピンときませんでしたが、原作では非常に邪悪な存在であるオーバールックホテル(こいつの悪意描写が凄まじい)が、巧みにジャックの心の隙(家族に対する負い目、敗残者的根性)をつき、その為にジャックが暴発するというのが納得行く形で描写されていました。 ラストに後味の悪さが残る作品の多いキングの中では珍しく、美しい愛情が感じられる珠玉の一冊です。 |
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| キング短編集その1 | 10編の作品とJ・D・マクドナルドの「紹介のことば」、キング自身の「はしがき」を収録。<地下室の悪夢>、<波が砕ける夜の浜辺で>、<やつらの出入り口>、<人間圧搾機>、<子取り鬼>、<灰色のかたまり>、<戦場>、<トラック>、<やつらはときどき帰ってくる>、<呪われた村>。 「はしがき」はキングの恐怖に対するスタンスが語られており、必読です。「トウモロコシ畑の子供たち」では恐怖小説らしからぬ作品がぽつぽつ入っていましたが、この短編集は恐怖小説一色です。出色は「人間圧搾機」(ただの圧搾機が意志を持った化け物に変化した理由が秀逸)、「戦場」(オチに掟破りの武器が登場)、「灰色のかたまり」(あんなのがいっぱい出てきたらと思うとぞっとするぜ) |
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| スケール大きすぎの凡作 | "クソは変わらず日付が変わる"をモットーに、メイン州の町デリーで育った、ジョーンジー、ヘンリー、ビーヴァー、ピートの4人組。成人した今、それぞれの人生に問題を抱えながらも、毎年晩秋になると山間での鹿撃ちを楽しんでいた。だが、奇妙な遭難者の出現をきっかけに、いやおうもなく人類生殺の鍵を握る羽目に陥る。 ストーリーは「地球に来たエイリアンVS異様に執念深い軍人VS今では大人になったかつての幼なじみ4人組(+1人)がそれぞれのプライドと生き残りをかけて、そこかしこで生存への死闘を繰り広げる」というもの。その三者三様の生き様がキングお得意のしつこい描写によって、余すところなく表現されています。 しかし、物語のスケールは文庫本4巻も費やして書き上げただけあって非常に壮大ですが、結末に向かうに従って物語のスケールはぐんぐんと小さくなります。物語に対する引きつけられ方も当然結末に向かうに連れて弱くなるという、読んだ後の印象が激烈に悪化するパターンをこの小説は踏んでいます。 以下ネタバレ→【「このままミスターグレイの跳梁を許せば世界が滅びてしまう」】という結末もあまり切実感がなく、斧を持ってかけずり回るジャック・トランス(シャイニングの主人公)や、邪悪なペニーワイズ(Itのピエロ)の方がはるかに切迫感があり、正直言って恐怖を感じられませんでした。 部分部分で面白いところ(ミスターグレイとの頭の中での虚々実々の駆け引き、幼なじみとの楽しかった日々、おならの描写)はあるんですけど、それが上手いこと繋がっていない感じがしました。 |
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| キング短編集その2 | 10編の作品が収められた短編集。<超高層ビルの恐怖>、<芝刈り機の男>、<禁煙挫折者救済有限会社>、<キャンパスの悪夢>、<バネ足ジャック>、<トウモロコシ畑の子供たち>、<死のスワンダイブ>、<花を愛した男>、<ジェルサレムズ・ロットの怪>、<312号の女>。巻末には新井素子氏の解説が付いています。 出色は「超高層ビルの恐怖」(クレスナーが耳元で癇癪玉を爆発させたときには、ノリスと同じくらいビックリしました)、「禁煙挫折者救済有限会社」(そりゃだれでも禁煙できるわ。ラストにもう一発恐怖のパンチが飛んできました)、「死のスワンダイブ」(そんなに受けとめて欲しかったのか。手紙は一生捨てられそうもない)、「ジェルサレムズ・ロットの怪」(この作品は「呪われた町」を読んでからの方が楽しめます)。 |
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| カウントダウンは何のため? | 西暦2025年。世界は環境汚染に苦しみそして荒廃していた。アメリカは巨大な管理国家と化し、都市には失業者があふれていた。彼らの娯楽といえば、絶えず流されているテレビの残酷なクイズやゲームの番組だけだ。そんな失業者のひとり、ベン・リチャーズが出場したのは、ネットワークで最高の人気を誇る番組「ランニングマン」。それは全米を巨大なフィールドとする「人間狩り」だ。全視聴者を敵にまわしながら、一ヶ月逃げとおせれば十億ドルの賞金、しかし捕まれば、テレビカメラのまえで容赦なく殺されるという文字通りのデスレースなのだ。ベンは行き詰まった人生を一発逆転させるため、この殺人ゲームに参加するのだった。 リチャード・バックマン名義で発表された本作。「バトルランナー」というと、キングの原作ではなく、シュワルツェネッガーのアクション映画を思い浮かべる人が多いと思います。映画の方はメタメタに酷評されることが多いですけど、一般大衆のいい加減さや、シュワルツェネッガー達を追いかけるストーカーの悪趣味さ等は突き抜けていて面白いと思います。 で、原作ですが映画とは全く違う雰囲気を持っています。主人公であるベン・リチャーズは無敵のヒーローではなく、病気に苦しむ娘の治療費を稼ぐために「ランニングマン」に参加する普通の男です。彼を追跡するストーカーも、固有の名前が付いた人物は登場しません。 どっちかというと地味な雰囲気の漂う本作品ですが、結末が今までの地味さを粉々に吹き飛ばします。しがない小市民であるベンが「ランニングマン」を主催する強大なゲームズにとんでもないしっぺ返しを喰らわす様は、すこし悲しいけれど最高に爽快! 今までの地味さもこの恐るべきオチのために用意されたのかと思うと、長い物語の道程も苦になりませんでした。 以下ネタバレ→【9月11日の同時多発テロで、ワールドトレードセンタービルにジャンボジェット機が体当たりする様を見て、この小説のラストシーンを思い浮かべたのは私だけじゃないと思います。】 |
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| そこまでやるかよ! |
キングの得意技であるしつこい描写は相変わらず健在ですが、ルイス一家に起こるエピソ−ドはそれほど多くなく(飼い猫死亡→インディアンの埋葬地に埋めた猫復活→息子死亡→インディアンの埋葬地に埋葬した息子復活)、しかもルイスが最終的にどういう行動を取るかは分かってるのにも関わらず、彼の心の歯車が少しずつずれていく心理描写が異様なほどに多くて食傷気味。「ルイスさん、もうええから少しは話を進めてくれよ」という感じになりました。 トラックに轢かれて死んだ息子を、インディアンの埋葬地に埋めて復活させようとするとんでもない暴挙に、ルイスが駆り立てられていくバックボーンを与えようとするのは分かりますが。 |
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| ファンと作家のせめぎ合い | 新作を書き終えご機嫌の作家、ポール・シェルダンは雪道で事故を起こした。瀕死の重傷を負った彼は元看護婦のアニー・ウィルクスに助けられる。しかし、幸運にも彼女に助けられたのは、新たなる不幸の始まりだった。シェルダンの熱狂的なファンであるアニーは、彼を監禁し、完結した「ミザリー」シリーズをもう一度復活させろと脅迫するのだった・・・。作中でポールが書かされる別の小説が差し込まれた異色の一作。 ロブ・ライナー監督で映画化もされ、アニーを演じたキャシー・ベイツはアカデミー主演女優賞を受けました。 キングの作品によく登場する「超能力」や「超常現象」は、この作品にはまったく姿を見せません。登場人物はアニーとポールの2人にほぼ限られ、ホラーというより被害者VS加害者の、密室を舞台にした心理サスペンスといった趣。キングの諸作には珍しく、かなり正攻法の作り方がされています。 作中でポールがアニーに受ける虐待ほどひどくはないんでしょうけど、作中に出てくるポールと同じ立場である売れっ子作家のキングには、熱狂的なファンのキチガイじみた行動に恐怖を与えられることが多々あるようで、この作品にはキングが感じるファンへの恐怖が手に取るように伝わります。 実際に彼が経験したことに根ざしているだけあって、その描写はリアルさに満ちあふれています。創作意欲をよく刺激されたのか、比喩の表現もこれまでにないくらい印象的なものがたくさん登場します。その比喩がやたらと軽妙で巧みなので、ポールはめちゃくちゃに痛めつけられているにもかかわらず、この状況を楽しんでいるんじゃないかと錯覚するほどです。 作家が感じるファンへの恐怖を中心に据えて描いていますが、作家とは、物語を書くことが大好きで大好きでしょうがない人だというのもよく分かる一作です。 |
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