ありなしの色灯しそめ花茗荷 山岸すず
打ち止めの札所に摘める花茗荷 中山冨子
留守の間に茗荷の花の開きゐし 河岸 時
<茗荷の花>=8月25日 南句会兼題
スーパーなどでパックで売られている「茗荷」、その茗荷は
こんなに可憐な花になります。
開花前に食用にされてしまう可哀そうな存在です。
食べると物忘れがひどくなるという言い伝えがありますが、
近年の研究では逆に、ミョウガの香り成分が集中力を増す効
果が実証されたりしています。
同じ頃に大陸からショウガとともに伝来し、匂いの強いのを
「兄(せ)の香=ショウガ」、弱かった方を「妹(め)の香
=ミョウガ」に転訛したと考えられているそうです。
しっかりと覚えておきませう!
短冊をはみ出す文字や星祭 牧野桂一
折鶴を折れる子となり星祭 中村冨美江
星祭夫には夫の願ひ事 野村伸子
<星祭>=8月20日 豊中句会兼題
七夕の夜、牽牛と織女の二つの星を祭る行事が「星祭」。
そして「七夕」とは、二十四節気の一つで陰暦7月7日のこ
とで、夏と秋が交叉する節目のお祭り。
「たな」とは祭壇、「はた」とは機織りのことで、「星」と
は直接の関わりはありませんでした。このように、もともと
は意味が異なるのですが、次第に星祭と習合して、現在のよ
うに「星祭」=「七夕」と捉えられるほどになりました。
でも俳句の世界では別の季題とされていますから、それぞれ
の意味をよく知って詠みたいものですね。なってきました。
<傍題>=牽牛、織女、星合、二つ星、夫婦星、など色々
蜩に応ふ蜩遠くより 林 直入
蜩の逢魔が時を鳴きつのる 束野淑子
蜩や西行堂の錠固く 中川貞子
<蜩>=8月10日 草笛句会兼題
同 20日 豊中句会兼題
朝や夕方、蝉の声としては軽やかに鳴くのが蜩。
真昼でも、木立の奥からちょっと涼し気に聞こえてきます。
夏の終りに鳴くというイメージがありますが、実は鳴き始め
は他の蝉と同じように6月下旬ごろから。ただし、鳴いてい
る期間が長く、9月下旬ぐらいまで聞くことができますので、
夏の残像のように思われるのでしょう。
遠くで聞くのはいいものですが、近くで鳴いていると、かな
りの大声(?)ですよ。
<傍題>=かなかな、日暮し
稲妻の立つ漆黒の雲照らし 馬見塚吾空
草原の闇押し広げ稲光 外村勢佳
稲妻の曇硝子に透きとほる 早川てる子
<稲妻>=8月13日 みをつくし句会兼題
俳句のうえでは「秋」の夜に光るもの。
稲はこの光を享けて育つとされていました。つまり、稲「夫」
というわけですね。
実際、雷の空中での放電のせいで空気中の窒素が分解され、
その窒素が溶け込んだ雨が降ると地中に窒素を供給する土地
が豊かになり、豊作に寄与するともいわれています。
理科の時間に教わった「チッソ・リン酸・カリウム」を思い
だしましたか?
「雷」とは別の季題として扱われていますからご用心。
<傍題>=稲光、稲の殿、
大男子の手花火に身を囲む 奥 可津女
川幅を跨ぎて開き大花火 亀井 碧
火柱を立て降りそそぐ鬼花火 金森早雪
<花火>=8月9日 堺句会兼題
花火大会が集中する8月上旬。待ち構えている見物客に、ま
ず届くのが音だけの花火。どうやらこれが合図になっている
のでしょう、小さいのから順に花火が揚ります。
この「音だけ」の花火、ちゃんと名前がついていて「段雷」。
とても危険な爆薬を使うのだそうです。
そして、一番最後と相場の決まっているのが「仕掛花火」。
水面に落ちる火の粉が夏の終わりを告げているようです。
例句「鬼花火」は北海道・登別に伝わる筒状の花火で火の粉
が大迫力! 仕掛花火の写真は本村照香さんから。
<傍題>=膨大にあります!「歳時記」をチェック!
庭師への三時の西瓜塩添へて 鎌田真弘
山猿の喰ひ散らしたる西瓜かな 杉崎よしこ
沿道に大き旗振り西瓜売る 江村嘉之
<西瓜>=8月3日 吹田句会兼題
初秋の季題とされる「西瓜」。
その名前から判るとおり、「ウリ科」の一年生の植物なので
すが、では何故「西」の瓜?
驚きの話ですが、原産がアフリカのサバンナ地帯といわれて
いる西瓜は、東へ東へと伝わってきました。そして中国へも
「西域」から。ですから「西」の「瓜」。
果物屋さんにも八百屋さんにも並んでいる西瓜ですが、農林
水産省でも文部科学省でも「果実」扱いになっていて、各地
の中央市場でも果物として取引されています。
<傍題>=西瓜番
浜晩夏いくつもひとで打ち上げて 西上禎子
水やればハーブの匂ふ晩夏かな 伊藤とし子
絹雲の生れては消えて晩夏かな 中西以佐夫
<晩夏>=8月1日 水無瀬句会兼題
新暦の感覚では8月の終りごろ、夏休みも残ること数日、と
いう感じですが、今年の立秋は8月7日。つまり8月に入れ
ば堂々と「晩夏」を詠めることになります。
とはいえ、最高気温を記録するのもこの頃、暑さの極みの日
が続きます。
遠く富士山が見える湘南の浜から人影が絶えて、新暦の「土
用浪(7月の季語)」が立つ頃、ですが俳句の世界は旧暦。
詠み間違えないようにご用心!
<傍題>=夏深む
毎月の代表的な季語をビジュアルと、山茶花誌上に
掲載された同人・誌友の例句でご紹介します
<桐一葉>=8月9日 堺句会兼題
「一葉落ちて天下の秋を知る」という有名なフレーズがあり
ます。紀元前2世紀ごろ、当時の学者を集めて編んだとされ
る書物「淮南子(えなんじ)」にある言葉が、明治時代の坪
内逍遥の戯曲「桐一葉」で有名になりました。
関ヶ原の戦い以降、豊臣家の忠臣・片桐且元の苦渋を描いた
もので、ここで「桐」と「一葉」がつながったのでしょう。
植物としての「キリ」は、木材としては軽量なうえに割れや
狂いがなく高級品とされています。
写真は「日本国総理大臣の紋章」、現在も使われています。
<傍題>=一葉(ひとは)、一葉の秋
桐一葉心の隅にひるがへる 下村非文
一葉落つ旧街道に旅籠古り 坂村トキ
石段にかぶさり桐の一葉かな 松本光生