宅配に木戸を開ければ花八ツ手 高田愛子
一匹の虻を離さぬ花八ツ手 杉本蒼生子
釣瓶井戸閉ぢて久しく花八ツ手 安楽陽子
<八手の花>=11月16日 南句会兼題
アップで見るとこんな姿です。
20センチ以上にもなる大きな葉はどこにあっても目立ちま
すが、花は地味。
一見、カリフラワーのようですがもちろん食用にはなりませ
ん。それどころか葉には殺虫成分を含んでいます。
葉も面白い特徴をもっていて、八手というのに葉先は八つに
は裂けず、七つまたは九つに裂けています。
日陰でもよく育つのも特徴で、庭の隅に植えられていたりし
て、地味ながらも存在感を醸している花です。
帰り花ここよと見ればかしこにも 山岸すず
青空に咲きてまさしく帰り花 坂村とき
まぎれなくぱらぱらとあり帰り花 山口光弘
<帰り花>=11月26日 京阪句会兼題
小春日和の真っ青な空を見上げて目に入ったサクラの小枝に、
もう葉も散ってしまっているのに、「あれ? 花が」という
経験はどなたもお持ちのはず。
それが「帰り花」で、単に「帰り花」というと桜のこと。
ツツジや山吹などが季節はずれに咲くと、「○○の帰り花」
と詠むのが慣わしになっていますから要注意です。
また、桜でも「十月桜」という春とこの時期に、年2回咲く
種類もあります。
気象異変のせいなのでしょうか、タンポポなどは決して珍し
くなくなっているようです。
<傍題>=忘れ咲、忘れ花、狂い咲、狂い花、帰り咲 など
自転車に息切らし来る十夜婆 谷口佳津
膝掛の準備をさをさ十夜寺 鎌田真弘
高僧と膝を並べて十夜粥 藤本安子
<十夜>=11月29日 山茶花例会兼題
最近では11月5日から15日の間に行われるようになって
きた浄土宗の法要で、京都の真如堂が有名ですが、各地でも
執り行われます。
「この世で十日十夜善いことをしたら仏国土で千日善いこと
をするのにも優る」という教え(無量寿経)が根拠に、極楽
往生を願います。
正しくは「十日十夜別時念仏会」といい、続けて参籠する人
も多いことから夜半には粥がふるまわれます。
真如堂のお粥(有料です!)には小豆が入っていました。
<傍題>=十夜粥
音もなく窓辺の枯葉散り急ぐ 織田道子
わが杖の前をからから枯葉舞ふ 湯川みつ子
次の風待ちゐるやうな枯葉かな 土井淳子
<枯葉>=11月29日 山茶花例会兼題
ここでクイズです。
枯葉、木の葉、落葉など「葉」の字のつく季題が色々ありま
すが、さて、この三つはどう違うのでしょうか。
正解は、枯葉は散り残って枝先で枯れている葉、木の葉は散
り残っている葉、つまり、まだ枯れていない状態。
落葉はいうまでもなく落ちてしまった葉。
これを詠みわけるのですから微妙ですね。
枯葉は舞い落ちることもありますが、木の葉が舞うときには
風に吹かれて舞い上がるというのが良いのかも・・・・
挑戦したくなる季題です。
ただはしやぎ走り回る子七五三 松室美千代
愛想よき神主の撮る七五三 末永あつし
兄は兄らしく振るまひ七五三 佐藤扶紀子
<七五三>=11月14日 堺句会兼題
実は産経新聞さんのホームページから無断で借用しているこ
の写真、情に溺れていないのが素晴らしいと感じました。
写真も、撮る方の気持ちに振り回されると見苦しくなると言
いますが、これは俳句もまったく同じ。
冷静に見つめ、瞬間を切り取りましょう!
とは言え、これが難題なのですよね。
氏神さまへ、一宮へ、親の思いは色々ですが、記念写真は出
来るだけアップで撮るのがオススメです。
<傍題>=髪置、袴着、帯解、紐解、千歳飴 など
北窓を塞ぎ籠るとにはあらず 辻 順子
北窓を塞ぎしばらく無用の間 田辺睦子
北窓を塞ぎ噂に遠くゐる 境 雅秋
<北窓塞ぐ>=11月11日 みをつくし句会兼題
ひょっとすると雨戸を開けたこともない北の窓。
昔の住まいには、そんな部屋もありました。
戸袋に雀が棲みついていたりした「北窓」も、最近のマンシ
ョンでは廊下に面していることが多く、塞ぐほどではなくな
ってきています。
南面にくらべて半分もないかも知れない「北窓」、それをさ
らに塞ぐ。
光を取り入れるより、なんとしても冬の風を遮りたい、そん
な思いがこめられているのでしょう。
そういえば長野県小諸の虚子庵の北には、浅間が聳えていま
した。くだりくる冷気、さぞや寒かったことでしょう。
綿虫の何処ともなく湧きて去る 北尾久子
日に透きて大綿うすき翅使ふ 林 光江
手術せし目に綿虫の白さかな 高森育子
<大綿>=11月5日 神戸句会兼題
一名「綿虫」、地域によっては「雪虫」と呼ぶところもあり
ますが、俳句のうえでは「大綿」。
小さな虫なのに何故「大綿」なのか、初めに広辞苑で「大綿」
を引いたところ、項目すらありません。
「綿虫」のところでは「雪虫」を引けと・・・・
少々首をひねる季題ですが、この時期、フワフワと飛び交っ
ているのは事実。でも、害虫とされているらしいですよ。
手のひらではたき落としてみましたが、判らぬまま。
あまり追及しないで、見たままを詠む、それが俳句なのかも
知れませんね。
<傍題>=綿虫
大根の大地脱ぎ出る力かな 上田美代子
大根汁朝は和食と決めてゐて 西山洋美
小流れの洗ひ場ごとに大根積む 南部耐子
<大根>=11月1日 吹田句会兼題
同15日 草笛句会兼題
蕪みたい丸いのが聖護院大根。
江戸時代、聖護院の近く、黒谷・金戒光明寺に尾張から大根
が奉納され、その大根を貰い受けた聖護院地区の農家が育て
ているあいだに、なぜか丸くなってしまったと伝えられてい
ます。
名古屋の大根といえば長細い守口大根をイメージするのです
が、もし奉納された大根がそれなら完全に突然変異かも。
いまでは伝統の京野菜として蕪や水菜、葱、筍とならぶ人気
ものです。でも、始まりがオワリとは・・・・
丸いもの、細いものと色々種類がありますが、大根自体には
特に傍題はないというのもちょっと不思議ですね。
毎月の代表的な季語をビジュアルと、山茶花誌上に
掲載された同人・誌友の例句でご紹介します