エルツ山脈とボヘミア ドイツ、ザクセン州及びチェコ、ボヘミア地方
※資料不足のため詳しい説明は後回しにしますが、とりあえず標本だけ紹介します。 ここに紹介する標本は「鉱物図鑑」の方で扱ったもの以外はたいしたものでないのもありますが、古い産地のものとしての価値を考慮していただければ幸いです。実は、ハルテンシュタイン、シュレマ、シュネーベルク またプシブラム、オベツニツェの位置関係を混同していたことがわかりまして、それが解けるまで詳しい説明は不可能です。ドイツ側に関しては、手元にドイツ語のあまり厚くない資料があるのですが、それを読むのはエニグマ暗号解読のような大プロジェクトになります。。。 (読んでみると、”どこそこでは紫色の立方体の蛍石が出ます。”なんて程度の文章しかありませんでした。それほど参考になりません。。。)
日本ではそれほど有名ではないかもしれませんが、アグリコラが冶金学者として活動した地域であり、近代にいたっても鉱物学上、化学上の有名な発見があった地域です。 ということで是非紹介したいのですが、上記問題があるために難航しております。
エルツ山脈の鉱物
西部エルツ山脈
シュネーベルク
ビスマス、ニッケル、コバルト、銀などの産地でした。
自然蒼鉛とニッケルスクテルド鉱の塊。表面に部分的にコバルトを含み赤みのあるニッケル華を生じています。
黒い線の長さが1cm
自然蒼鉛の結晶
自然蒼鉛は六方晶系なので、六角板状に結晶することがあります。エルツ山脈近辺では比較的よく見ますが、世界の他の地域ではめったにありません。(というか今まで聞いたことがないので、ご存知の方は教えてください。)
6mmほど
プッチャ-石
茶色い結晶がプッチャー石。組成はBiVO4で斜蒼バナジン石、ドレイヤー石と同質異像です。日本では石川で産出しました。シュネーベルク地域内のヴォルフガング鉱山のプッハーシャハトで発見されました。それが、名前の由来です。ヴォルフガング鉱山はコバルトの鉱山でした。写真にはありませんが、裏側にアスボランが着いています。

個々の結晶は1mm以下
コバルト華
コバルト華の原産地はシュネーベルクです。この標本はたいしたことがないのですが、3cmを超える結晶も産出しました。
コバルト華の最大長5mm
シュレマ
淡紅銀鉱の結晶 7mmほど
ハルテンシュタイン
↑クリックすると解説
ペーラ
自然砒の中に枝状に成長する自然銀の結晶で有名な産地です。エルツ山脈の名産品はほとんどが戦前のものであるのに対し、この自然銀は1991年に大量に産出したものです。
中部エルツ山脈
フライベルク
中世以来銀山として有名でした。高名な鉱山学校があり、ゲルマニウム、インジウムの発見など、化学史上に残る業績を残しました。付属博物館のコレクションは圧巻です。 フライベルクは一つの鉱山ではなく、ヒンメルスフュルスト、ベシェルト・グリュック、ハルスブリュッケ、ヒンメルスファールトなどの鉱山が集まっています。
↑上の二つの標本の詳しい説明はクリックすると見れます。
淡紅銀鉱↓ フライベルクのどこの産出かはわかりません。
左右4cmほど。
↓脆銀鉱 フライベルク産(どこかは不明)
左右2cmほど。
↓針銀鉱の結晶 フライベルク産(鉱山名は不明)

東部エルツ山脈
ツィンヴァルト・シノベッツ
ツィンヴァルト・シノベッツはドイツ、チェコ国境をまたぐように発達した鉱山町で、ドイツ側をツィンヴァルト、チェコ側をシノベッツといいます。高取鉱山、恵比寿鉱山等を思わせる、気成鉱床の鉱山で錫、タングステンを採掘していました。ツィンとはドイツ語で錫、ヴァルトは森の意味です。
錫石 シノベッツ産(と思われる。。。)
この産地でもっとも困ったことは、ラベルの産地が、Zinnwald, Bohemia, CzechとかZinnwald, Erzgebirge, Czechとかかかれているものが多く、チェコ側から産出したのか、ドイツ側から産出したのか判断しかねるものが多いことで す。上の標本はマダガスカル産鉱物の研究で有名なBehier氏のコレクションであったものですが、例外ではありません。
Behier氏のラベル
産地名として、ツィンヴァルトはシノベッツよりもはるかに有名であり、ドイツ側で産出したものであれ、チェコ側で産出したものであれ、ツィンヴァルトと書かれてしまうのではないかと推察できます。そこで、国名がチェコとなっていたり、ボヘミアと書かれているものはチェコ産とみなしています。もっとも個人的な推測に過ぎません。
チンワルド雲母 シノベッツ産(と思われる。。。)
ツィンヴァルト・シノベッツは日本のぺグマタイトでおなじみのチンワルド雲母の原産地です。
ザディスドルフ
恐らく日本での知名度はゼロでしょう。。。特に歴史的に有名なわけではなく、エルツ山脈にあまたある気成鉱床の産地です。 この産地をあえて紹介するのは、コルベック石(メタバリシア石のアルミをスカンジウムで置き換えた鉱物)の原産地だからです。コルベック石はオーストリアの淡緑色の球状のものが有名であり、他の産地のコルベック石も淡緑色であるので、淡緑色の鉱物というイメージが強いのですが、ザディスドルフのコルベック石は濃青色です。また、他の産地では球状か束状の集合体が多いのですが、最近採集されたものは、立方体の単結晶でした。
アルテンベルク
気成鉱床の産地です。アルテンベルガーピュクニット(Altenberger Pyknit)と呼ばれる脈成トパズが有名です。
ボヘミアの産地
ヤヒモフ
ヤヒモフ(ドイツ名 ヨハヒムシュタール)は中世以来の銀山でした。マリアテレジアの時代以降に、主にヤヒモフ産出の銀から作られたテレジアターラー銀貨は未開の奥地では今でも流通しています。近代になってからは、ウランの鉱山として有名になり、19世紀末、ヤヒモフの瀝青ウラン鉱の精錬カスからラジウムが発見されました。また、最近まで東側諸国のウランの供給源として重要でした。
針銀鉱
銀色に輝いている部分が針銀鉱です。テレジアターラーの素でした。
母岩の大きさ4cmほど
プシブラム
プシブラムといえば安銀鉱の結晶が有名です。下の写真は安銀鉱亡き後の自然銀の仮晶です。銀色の美しい結晶からどうしてここまで醜いぼろぼろの仮晶になってしまったのでしょうか。。。悲しい限りです。
↑クリックすると解説
オベツニツェ