
上の写真の標本の銀色の部分がテルル鉛鉱です。金色の部分は黄鉄鉱、黄銅鉱の類、ピンク色っぽい乳白色の部分は、確証はありませんが、産地からすると菱マンガン鉱と思われます。
テルル鉛鉱は、名前のとおり鉛のテルル化物で、ちょうど方鉛鉱の硫黄をテルルで置き換えたものに相当します。正確な呼び名はどちらなのかは知りませんが、英名からアルタイ鉱という呼び名があります。このアルタイというのは、モンゴル、ロシア国境のアルタイ山脈にちなみます。名前のわかりやすさからテルル鉛鉱の方が好きですが。。。区別のポイントとしては、方鉛鉱が新鮮な面でも黒味がかった銀色であるのに対し、テルル鉛鉱は明るい銀色で、錆びると緑がかった黄色になることと、方鉛鉱によりも、劈開が明確でないことです。
産地のナギャグは、最初にテルルを含む鉱物が見つかった産地で、オッフェンバーニャやボーテスなどの周辺の産地も含め、非常に質の高いテルル鉱物の産地として知られています。ただ、テルル鉱物の発見は18世紀に遡り、古い産地であるため、現役の産地というよりは、市ノ川鉱山のように、昔の有名産地という雰囲気で、標本も戦前や19世紀のものがほとんどではないでしょうか。また、産地も現在の名前はルーマニア語のSacarîmbであり、ナギャグというのは産地発見当時のハンガリー語の呼び名です。ナギャグのテルル鉱物では、ナギャグ鉱が圧倒的に有名で、シルバニア鉱の標本がちらほらというところです。この産地のテルル鉛鉱の標本は、写真を入れてもここで紹介している標本しか見た事がありません。
ナギャグの鉱脈は、菱マンガン鉱を脈石とする熱水脈で、標本から産地を調べる上で、周辺の他の産地よりもわからやすくなっています。そのため、この標本も、ピンク色がかった白色の鉱物が菱マンガン鉱ではないかと思われるため、産地は信頼性の高いことが推察できました。ただ、これまで見たことのあるテルル鉛鉱は、アメリカのヒルトップ鉱山で産出する、細かい結晶粒が薄い脈状になったもので、この標本のように大きい結晶粒を持つ標本を見た事がなかったため、本当にテルル鉛鉱であるかは、自信がありませんでした。ヒルトップ鉱山の標本と比較した上、このような感じの標本も存在するという情報を得て、アップすることにした次第です。