カルコメン石

英名:CHALCOMENITE    化学式:CuSeO3/2H2O

産地:
イタリア、サルディニア島、カグィアリ県、ヴァック ロッチ鉱山
Vaccu Locci mine, Cagliari province, Sardinia, Italy

写真の幅2cm

上の写真の青い部分がカルコメン石です。カルコメン石は手稲石のテルルをセレンに置換えたものに相当します。 結晶の形、色ともに手稲石そっくりです。カルコメンはセレンの2次鉱物としては、最も一般的なもので、手稲石よりはずっと普通に産出します。なので、手稲石をコレクションに加えた気分になりたい人にはとてもお勧めできる鉱物です。

産地のバック・ロッチ鉱山は、世界最良のカルコメン石の産地です。カルコメン石はセレンの鉱物の中では一般的とはいえ、しょせんセレンの鉱物なので、1〜2ミリの結晶が普通です。しかし、バック・ロッチ鉱山では、なんと2cmもの長さに達するカルコメン石を産出します。

バック・ロッチ鉱山は、イタリア本土ではなく、サルジニア島というでかいながら辺鄙な島にあります。マフィアで有名なシチリアと違い、イタリアの近代史を勉強した人以外には聞いたことがない島と思われます。こんなに立派なカルコメン石を産出するのだから、さぞメジャーなセレン鉱物の産地と思いきや、セレンの一次鉱物はクラウスタール鉱だけで、あとのセレン鉱物はみみっちー、いかにもセレンの二次鉱物というものばかりです。鉱山そのものは、鉛、亜鉛、砒素を掘っていたとのことで、1978年に閉山しました。

普通、カルコメン石は、まとまった量のセレンの一次鉱物が産出する鉱山で、銅のセレン化物などから生じます。クルタ鉱から生じているエル・ドラゴン鉱山のカルコメン石などはその典型です。ところが、ヴァック・ロッチ鉱山では銅を含むセレンの一次鉱物は存在せず、セレンを含む一次鉱物は方鉛鉱の硫黄をセレンに置き換えたクラウスタール鉱だけなのです。 鉛イオンと硫酸イオンは仲がよく、また、硫酸鉛は水に溶けないので、鉛の溶けた水溶液に硫酸イオンを含むものを入れると、白い硫酸鉛が沈殿します。なので、一回硫酸鉛鉱ができてしまったら最後、鉛はめったなことでは溶け出さなくなります。一方で、亜セレン酸鉛やセレン酸鉛はそれほど簡単に生成しないようです。

そのため、クラウスタール鉱が風化した場合、クラウスタール鉱から溶け出した鉛は、一緒に風化した硫化鉱物から出てきた硫酸イオンとくっついて硫酸鉛鉱になってしまいます。そして、仲間はずれ状態になったセレンが風化した黄銅鉱なんかから出てきた銅イオンと結びついてカルコメン石になるそうです(なお、カスのようなサイズと量ですが、シュミーダー石やOlsacheriteというセレン酸を含む鉛の鉱物も産出します。)。


ボリビア、エル・ドラゴン鉱山産カルコメン石(参考)

本文章は、"Die Baccu Locci Mine auf Sardinien (Lapis Jg.22 Nr.9 September, 1997)"を参考にしています。なぜ、セレンと銅を含む一次鉱物がないのにカルコメン石が存在するかについて詳しく解説しています。一方で、他の産地のカルコメン石の産状との比較やなぜこんなに大きいカルコメン石が産出するかは書いていなかったりします。説明よりもカルコメン石の写真が充実していて、上の写真のカルコメン石がしょぼく見えるほどの立派なカルコメン石が載っています。


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