産地:
ルーマニア、トランシルバニア、オッフェンバーニャ
Offenbanya(Baia-de-Aries), Transylvania, Romania
黒い線の長さ1cm
石英の上にある金属光沢のある結晶。真中の結晶の右上に見えるは方解石の結晶です。母岩はほぼ全体が石英です。
シルバニア鉱はテルル金銀鉱物の代表的な鉱物で、トランシルバニアの他にもアメリカコロラド州クリプルクリーク周辺、アリゾナ州ベシーG鉱山、フィジーエンペラー鉱山などテルル鉱物の有名な産地ではたいてい産出します。少し金色がかった光輝のある長柱状の結晶をして、見栄えのするため人気がありますが、普通に手に入る標本はたいてい石英に埋もれたミリサイズの劈開片のようなもので、ここで紹介しているような結晶のしっかりした標本は入手困難で高価です。
古くから多くの金山が知られていたトランシルバニア地方にはテルルの産地が多くあり、テルルの発見にも深く関わっていました。初めて発見されたテルルの鉱物はこの地方にあるナギャグ鉱山のナギャグ鉱で、後に発見されたこの地方のシルバニア鉱からテルルが抽出されました。
オッフェンバーニャはシルバニア鉱の原産地です。シルバニア鉱の名はトランシルバニアからつけられました。現在はBaia-de-Aries(読み方わかりません。)という名で、恐らくはオッフェンバーニャはハンガリー語だと思います。20世紀初頭までトランシルバニア地方はオーストリアハンガリー帝国の統治下にあり、帝国の東側(ハンガリー、ポーランド南部、ルーマニア北部など)ではハンガリーの勢力が強力でした。
この標本は石英の母岩の上に方解石の結晶と共存しています。この地方からのシルバニア鉱は岩石中に薄く走る石英脈の中に平面的に結晶しているものが多いため(それが文字のように見えるため文字金鉱と呼ばれています)、この標本が本当にオッフェンバーニャ産かどうか疑う意見もあります。ある人はフィジー、エンペラー鉱山産と言っていますが、最近出回ったエンペラー鉱山のシルバニア鉱は確かにこの標本のように方解石と共存しているのですが、石英がまったく見当たらず、方解石はルーマニア産と同じく母岩中の薄脈で、この標本が算出したであろう厚い熱水脈の存在を感じさせるものではありませんでした。シルバニア鉱の標本は出回っている量も少ないので、十分な比較ができず結論を出すには至っていません。とりあえずはオッフェンバーニャ産としておきます。
産地に疑問があるからかどうか知りませんが、この標本の入手価格はシルバニア鉱としては破格でした。まともに値段がついていれば、間違いなく手が届かなかったことが予想されます。
下の標本は産地に疑問のないオッフェンバーニャ産ものです。下の写真を見るとわかるのですが、母岩が上の標本とは異なります。典型的な産状では、シルバニア鉱は粗面岩のような岩石に走る薄い石英脈の中に結晶します。



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元素発見の歴史1 トランシルバニア産のシルバニア鉱から単離されたテルルの発見の経緯について知る事ができます(第7章)。
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